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【コラム 私は見た!】

初日の漠然たる不安感

2010年11月15日

 時の過ぎ行く早さには驚くばかりである。信じ難いスピードで、双葉山の六十九連勝に対して、指呼の間に迫った対抗する記録が現実のものになってきた。

 正直のところ、こんなことが現実として自分の目の前に現れようなどとは、考えもしなかった。色々な表現の仕方で、私の書いているようなことを口にされ、筆にされる方は多い。しかし、百人なら百人に共通しているといえることがひとつある。それは、双葉山の六十九連勝には、誰にも近づくことが出来ない、ということか。いや、そんなことを考えてみる人さえいないにきまっている。いわば、神のなしとげた“わざ”にも比すべきものであって、人間の為し得ることからは遠く離れている。

 その証拠に、なん十年もの間、挑戦しようとする者さえ、一人として現れなかったではないか。記録に挑む気配を示す人さえいなかったのだから、その先は考えてみるまでもない。

 それが、神の“わざ”と多くの人々が考えて来た双葉山の無敗の連続記録だったのだ。だが、私が書いた通り、信じ難い大きな変化が、この一週間ほどの間に、揺らぎなき現実として、われわれがこの目で見ることになるかもしれない。

 少年時代から、熱烈な相撲ファンとして成長してきた私などは、モンゴルからこの国に夢を託した青年が、この偉業への挑戦を成し遂げかねないことに、喜んで良いのか。その喜びの底に、哀感というべき“哀”の感情があることを認めざるを得ないのか。複雑な感情を持て余してしまっている。

 初日が終わって、この先の十四日間に、どんな劇的な展開があるか、まだ先を読むことなどできないが、漠然たる一種の不安感として、どうもただごとではない九州場所になりそうだと、なんの根拠もなしに、私の胸の中にいいようのない不安があることを書いておこう。 (作家)

 

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