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<下>安全・安心 自らの手で県立大1年生だった平岡都さん(当時19歳)が遺体で見つかった事件は、地元の浜田市民たちにも暗い影を落としている。その中から、市民の手で安全で安心なまちづくりに取り組んでいこう、という動きも出ている。 同市田町にある龍泉寺の本堂。月に1回、15〜20人のグループが会合を開いている。模造紙を広げ、にぎやかに意見を出し合いながら書き込んでいく。グループの名前は「浜田を明るく照らし隊」。隊長の同市嘱託職員、村武まゆみさん(49)をはじめ、メンバーには一般市民や県立大生たちもいる。 同隊は三つの班をつくり班ごとに重点テーマに取り組んでいる。▽夜間の門灯点灯運動▽あいさつの励行▽学生のサークルが発行している情報誌「ハマディアン」の活用、だ。 門灯点灯運動は、犯罪の温床になる暗い夜道をなくそうと、各住宅に門灯を点灯してもらい、夜の街を明るくする試み。9月に電球をデザインしたシールを作成。市内の各家庭の門灯スイッチ近くに張ってもらおうと、10月から配布を始めた。年度内には市内全戸に配り終える予定だ。 あいさつの励行は、市民みんなが声を掛け合って、不審者が街に入り込むのを防ごうとする取り組みで、市内の小学生を対象に「あいさつ川柳」を募集。約260点の応募を集め、大賞を選んだ。「ハマディアン」の活用では、内容に関する市民アンケートを実施、誌上に同隊のページを作って活動のPRに努めるなどしている。 ◆ きっかけは事件発生後の昨年12月、県立大の卒業生で関西学院大大学院2年、榊原昌彦さん(24)(兵庫県三田市)が「事件に沈む町を明るくするため、市民の手でできることはないか」と、後輩や村武さんらに働きかけて始まったワークショップだ。同寺で出し合ったアイデアを実行に移そうと、学生と市民が3月にグループを結成した。 村武さんは「市民にとって衝撃的な事件だった。自分にも娘がいる。不安を抱いている学生がいるなら力になりたいと思った」と振り返る。 こうした動きに、行政も素早く反応した。市は門灯点灯を呼びかけるチラシの印刷を引き受け、市の広報誌に折り込んで配布することにした。市防犯協会は、シールの作成費用の一部を助成した。 同市の前木俊昭・安全安心推進課長は「安全、安心のまちづくりは行政だけでは限界がある。隊の活動は本当にありがたい」と話す。 ◆ 今月22日に同寺で開いた会合には、兵庫県から榊原さんも駆けつけた。各班の中間報告のほか、改めて活動の意義づけをし、メンバーの意識統一をした。 「街で若い人を見ると、学生さんかな、と意識するようになった」と村武さん。「私たちが刺激になり、市内の様々な団体が、安全なまちづくりへの取り組みを活発化させてくれればうれしい」と期待する。 浜田市は今年9月、平岡さんが行方不明になった10月26日を「いのちと安全安心の日」と制定した。制定理由には「(事件の)記憶を風化させることなく、命を尊び、だれもが安全で安心して、幸せに暮らすことのできるまちづくりを推進する」との決意が示されている。 (この連載は、早川達也、南暁子、大橋裕和、岸下紅子が担当しました) 島根、広島両県警の合同捜査本部はフリーダイヤル(0120・385・301)で、情報提供を呼びかけている。 (2010年10月26日 読売新聞)
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