核兵器廃絶に向けた広島宣言
以下に署名を付すノーベル平和賞受賞者ならびにノーベル平和賞関連機関の代表者は、2010年11月12日から14日にかけて広島の地に集い、被爆者の証言に耳を傾けました。そして、人の暮らす地に核兵器を落とすことは人類に対する犯罪とみなされるべきであり、今後一切禁止しなくてはならないとの思いを強めました。
私たちは、1945年8月、広島と長崎の原爆投下を生き延びた被爆者の皆さんの苦しみと勇気に敬意を表し、世界にあまねく核戦争の恐ろしさを伝えるために自らの人生をささげてこられた方々をたたえます。私たちもまた彼らのように、平和と正義と安全が守られ、核兵器も戦争もない未来を実現するために努力することを誓います。
「甚大な破壊力を持ち、言語に絶する苦しみを人間に与え、時空間に制御できない影響を及ぼし、拡散のリスクをあおり、環境や未来の世代を脅威にさらし、ひいては人類の生存までも脅かすものは、核兵器だけである」。私たちは、その人道的取り組みにより、過去3回にわたりノーベル平和賞を受賞した赤十字国際委員会のこの見解に、心から賛同します。
25年前、ジュネーブで、2大核大国の首脳がこう宣言しました。「核戦争で勝利を収めることはできない。核戦争は決して起きてはならない」。あれから世界は確実に進歩しました。中距離核戦力(INF)全廃条約、戦略兵器削減条約(START)、戦術核兵器に関する一方的、および二国間イニシアチブにより、何万もの核兵器が破棄されました。また、アメリカ合衆国とロシアが、新STARTと、2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議で採択された核軍縮行動計画に調印したことを私たちは歓迎します。
それでもなお、地球を何度も破壊することができるだけの核兵器が今も残っています。核兵器が拡散していること、そしてテロのために使用される恐れがあることが、深刻な懸念となっています。冷戦は終結しましたが、核兵器の脅威がなくなったわけではないのです。
核兵器の存在をなくすことはできません。ですが、その存在を非合法化することは可能であり、またそうすることが必要です。ちょうど化学兵器や生物兵器、地雷、クラスター爆弾が非合法と宣言されたように。最も非人道的な脅威である核兵器もまた、「すべての国は、国際人道法も含め、適用される国際法を常に順守しなければならない」ことを改めて打ち出した2010年NPT再検討会議の見解に従い、非合法化するべきです。
世界から核兵器をなくすための取り組みと並行して、国際法を強化し、武装に頼らない国際関係と政治理念を確立し、人間と安全のニーズに応えるための対策を講じることが必要です。核抑止力、戦力投射、国家の威信を根拠に、核兵器の獲得と保有を正当化する議論は、今日では到底通用するものではなく、断固退けなくてはなりません。
私たちは、核軍縮に向けた国連事務総長の5項目提案を支持します。また、核兵器、核兵器技術、および核兵器部品の使用、開発、製造、貯蔵または移転を禁じる普遍的条約の策定に着手して、核兵器の完全かつ検証可能な形での撤廃に備えるべきだという提案にも賛同します。
・私たちは、政府や議会の長、市長、市民等に働きかけて、核兵器の使用は非道徳的かつ非合法であるという見解を広げてゆきます。
・私たちは、アメリカ合衆国とロシアに対し、速やかにSTART合意を批准することと、交渉を継続してすべてのタイプの核兵器をさらに削減してゆくことを要求します。
・私たちは、核保有国に対し、現在貯蔵している兵器を大幅に削減するよう働きかけてゆきます。
・私たちは、関連政府に対し、1995年の中東決議の目標達成に向けて、2010年5月の核不拡散再検討会議の最終文書で合意された提案を実行に移すため、直ちに行動を起こすよう働きかけてゆきます。
・私たちは、核実験全面禁止条約に完全な法的効力を持たせるために、中国、アメリカ合衆国、エジプト、イラン、イスラエル、インドネシアに対し、すでに153カ国が批准している同条約への批准を求め、またインド、パキスタン、北朝鮮に対しては、同条約への調印との批准を求めてゆきます。
・私たちは、世界各国に対し、市民社会と協力して、核兵器廃絶に向けた普遍的条約の策定に着手するよう求めてゆきます。
広島と長崎の恐怖を決して繰り返さないために、そして協調と平和に基づく世界を築くために、私たちはこの良心の叫びを届けます。私たちすべてが力を合わせて、実際的、道徳的、合法的かつ必然的な共通の利益、すなわち核兵器廃絶を実現しなければならないのです。