昨日、菅直人首相は中国の胡錦濤国家主席と22分間の会談(中国側は懇談と言っているようですね)を行いましたが、いったい何の意味があったのでしょうね。菅内閣は、予想通りといいうか、予定調和的にドツボにはまっていきます。とてつもなく愚かであるか、常軌を逸した勘違いをしているとしか思えません。
この会談(懇談)の中身は、「具体的詳細(の公表)は控えたい」(福山哲郎官房副長官)としてきちんと明らかにされませんでした。おそらく、国民に胸を張るほどの内容は何もなかったのでしょう。それでも、菅首相や仙谷由人官房長官らは会談(懇談)開催自体を大きな成果であるかのように吹聴するとみられますが、果たしてそうでしょうか。
中国の元首と会うだけのために、菅内閣が払った犠牲はいかほどだったか。菅内閣がこれほど国民の信を失い、国民に法とその執行への疑念を植え付け、国際社会に軽んじられ、領土・領海も国内の政治的基盤も危うくして、何を手にしたというのでしょうか。
自民党の丸山和也参院議員の国会質問によると、仙谷氏は中国漁船衝突事件を起こした中国人船長を釈放しないと「APEC(アジア太平洋経済協力会議)が吹っ飛ぶ」と言っていたそうですね。「APEC至上主義」(国会での野党議員のヤジ)に陥ってあれこれ策動し、法解釈をこねくりかえして歪め、詭弁と虚言を弄してクロをシロといいくるめて自身と菅内閣の権威を失墜させた愚かな三百代言の姿がそこにあります。
これは、気付いている人は当初からそう見ていたことでしょうが、今回の漁船衝突事件への対応をめぐり、国民は菅内閣は「うそつき」であると直感、確信しただろうと思います。もう何を訴えても、どんなえさをぶらさげても国民は信用しない。国民を味方につけない政治はもう機能しませんし、危機にあっては拠り所がないのでとてももろいものとなります。
その結果、内閣支持率は2割台に下落し、ただでさえ難しい「ねじれ国会」の運営も野党側に足下をみられてしまいました。さらに、仙谷氏の不誠実で恫喝的な答弁の数々は、野党各党にも、一人ひとりの議員にも拭いがたい不信感と反感を与えたので、あるいは菅政権に協力する可能性があったかもしれない議員たちも敵に回しました。
仙谷氏に「いいかげんな人」呼ばわりされた丸山氏は告訴を検討しているようですね。仙谷氏は週刊新潮を名誉毀損で訴えたわけですが、今度は自分が「暴言」によって訴訟の対象になっている。内閣のスポークスマンとしても、政権のナンバー2(1?)としても、不注意で不適格としか評価できません。私は仙谷氏を知ってから、もともとあまりよくなかった弁護士という職業のイメージ(依頼者の要請=カネや個人的政治信条でクロをシロといいくるめるが仕事)がさらに悪化しました。
例の奇妙な「柳腰外交」発言にしても、「ちょっと口がすべりました」と言って訂正しておけばいつまでも言われ続けることはないのに、「撤回しない」と胸を張って失笑を買っていますね。そこには、独りよがりで自己主張ばかり強い、親がしつけそこなった子供の姿があります。日本の「空虚な中心」、空き菅首相はその言葉の言いなりなのですから話になりません。
ある首相経験者はこう語りました。
「国会では、上の傍聴席から写真を撮られることを常に意識するのは当然だ。時間が空いたときには資料を読みたくなるものだが、自分の内閣のときも、秘、極秘以上の資料は持ち込まないようにしていた。一度、ある閣僚(後の首相)が外務省の資料を読んでいたので注意したことがある」
そして、ひたすらすり寄った相手である中国は、自国に媚びてくる政治家たちを利用はするものの、信用はしません。自民党政権時代には、河野洋平元衆院議長と加藤紘一元幹事長という親中派のライバル同士が、競うように訪中して日本と日本政府の悪口をいい、さまざまな情報をご注進していましたが、「こういう政治家を中国は持ち上げつつ、軽蔑している。本心では相手にしていない」(外務省中国課長経験者)といいます。
当然ですね。そして、河野氏や加藤氏らが跋扈していた時代には、それにブレーキをかける反対勢力もありましたが、民主党にはそれもない。菅政権には、中国にものを言えるパイプはない一方で、ただただ土下座しなければという強迫観念だけが強く、歯止めも何もない。
また、中国の覇権主義を苦々しく思いつつ、自国は対抗する力がないので日本に「何とか立ち向かって対峙してくれ」と期待を持っていた東南アジア諸国も、「だめだこりゃ」と失望したことでしょう。結果的に、民主党政権が掲げる東アジア共同体構想にもマイナスの影響を及ぼしたはずです。日本がこれでは、結局、共同体ってさらに中国圏に組み込まれるだけだなと。同盟国である米国が、表面はどう取り繕おうと、菅政権に軽蔑の視線を向けていることは言うまでもありません。
自国民をたばかり、誇りも戦略も何もなく、ただ強国に叩頭して慈悲を請うような国と政府を、誰が信頼したり、好意を抱いたりするでしょうか。過度に卑屈に振る舞う者はむしろ相手の軽蔑心を強め、その報いとしてさらに過酷な運命を味わうこととなるでしょう。そんな当たり前のことがどうしても分からない菅首相や仙谷氏は、やはりルーピー氏の同類です。
そもそも、相手国がずっと一貫して「会う、会わない」をカードとして利用しているときに、「なんとか会ってください」と頭を下げれば、最初から弱い立場になるのは当然です。このこと、私も産経紙面で何度か指摘してきましたし、それ以前に、人間社会の常識でしょう。そんな頭もない。
…書けばきりがありませんが、もうこれ以上、言葉を費やすのもイヤになったので一言だけ。
バカにつける薬はない
この人たちは、政府だとか政治家だとか言う前に、ふつうの社会人としてダメです。失格です。仙谷氏は弊紙の村上知博記者に対し、「あなたは存在自体が罪悪だ」とささやきましたが、それはご自分のことでしょう。…しっかし、こんな程度の低い人間が「法廷技術はある程度のところに到達した」と自任し、辣腕弁護士として大金を稼いでいた法曹界ってどんなレベルだと、疑問に感じざるをえません。まあ、こんな程度の人間が現在の地位までのし上がってきた政界も同じか。
きっと彼らは、きょうの日韓首脳会談でもバカをさらすのだろうなあ。ああ、日本人として恥ずかしい。私も、筆に遠慮会釈を加えるのが困難になってきました…。
by fa-eng
畏友・柳腰さんが説く「国民の…