前回に引き続き、2001年に英国防省が作成したとされる「防諜マニュアル」の内容をご紹介したい。同文書は中国とロシアの諜報活動の実態をリアルに描写するだけでなく、両国の諜報に対する考え方、さらには両国の国民性の違いまでも浮き彫りにしている。
短期的成果より長期的利益を重視する中国
中露スパイ活動に対する注意事項からの引用を続ける。まずは、両国諜報機関が篭絡(ろうらく)を試みる「ターゲット」に対するアプローチの違いから見てみよう。
(ロシア用注意事項から引用)
入国直後から、訪問者は政府職員、取引先、観光ガイド、ホテル従業員など多くの人々によりモニターされている。訪問者自身の意思で訪れた場所で、偶然英語を喋るロシアの一般人に運良く出会えたと思っても、それは決して偶然ではないかもしれない。
ロシア公安当局(FSB)は高性能の監視機器を駆使する。主要ホテルの一部の部屋では電話盗聴や赤外線カメラを含む写真撮影が可能だが、FSBは訪問者をその部屋に宿泊させることができる。また、必要に応じレストラン内や自動車内で盗聴を行うこともある。
(中国用注意事項から引用)
「中国の友人」というエージェントを獲得する手法は実に巧妙かつ長期的である。中国人は訪問者の中国の歴史と文化に対する興味と理解を利用することに熟達したお世辞のエキスパートであり、食事と酒の有効性を知り尽くしている。
訪問者には、会議や講演の名目で、経済的に有利な条件やビジネス機会などの便宜が与えられる。その見返りとして、訪問者は情報の提供やアクセスの便宜、それが無理でも少なくとも中国を擁護する発言を行うことなどが期待される。
中国の諜報機関によるホテルの電話やレストランでの会話の盗聴はよく知られている。また、特定の訪問者に対してはホテルの部屋の捜索などを行うこともある。
- コメントはまだありません。
» コメントを書く
- 中国が自問する「我々は孤独なのか」 さすがに無視できなくなった国際世論 (2010.11.16)
- 日中関係は日本の若い政治家がぶち壊した! (2010.11.12)
- 「世界の火薬庫」になった日本列島 激突する米、中、露、日の軍事、外交力 (2010.11.10)
- 「KY」な外交で日本はアジアのリーダーから陥落? (2010.11.09)
- 中国の公害を米紙が大々的に報道する理由 (2010.11.05)
- ■The Economist人権問題と中国との付き合い方 (11月17日)
- ■Financial Times高まるインフレ、新興国に通貨切り上げ圧力 (11月17日)
- ■日本経済の幻想と真実900兆円を超えた国の借金、
「それでも日本は大丈夫」という話は本当か (11月17日) - ■ロシア米国、ロシア、NATOが手を組んだ史上初の作戦 (11月17日)
- ■ロシアロシアは日本が大好き、でも中国は警戒 (11月17日)