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【群馬】

少女の死が問うもの 桐生小6自殺<中> 『学級崩壊』で深めた孤立

2010年11月16日

自殺の数日前に明子さんがノートに描いたマンガ。主人公の女児が転入のあいさつをする場面で途切れている

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 亡くなった上村明子さん(12)は自殺する二日前の先月二十一日に校外学習に参加した際、泣きながら「私は給食を一人で食べているんだよ」と学校側に訴えていた。八日の桐生市教育委員会臨時会で学校の調査結果を受けた教育委員は「どんなに悲しかったかという気持ちを十分に想像できる」と述べた。

 学校や市教委によると、明子さんの学級では一学期後半から児童に落ち着きがなくなった。乱暴な言葉を日常的に使ったり、担任の指示を聞かなかったりする状態があった。

 九月末には給食の班組みが乱れ、好きな子同士で座るようになり、明子さん一人で食べることが目立つようになった。

 別の教育委員は臨時会で「学級崩壊といういじめの温床のようななかで、明子さんへのいじめが出てきたのではないか」と指摘している。

 父親の竜二さん(51)によると、明子さんは担任が注意をしても言い返す児童もいると話し「先生はなめられている」と感じていた。明子さんは給食の件を担任に相談したが、自分から同級生を誘うように指導されたという。十月は同級生と一緒に食べる日もあったが、誘っても「また今度ね」と断られる日もあり、孤立する状況はあまり変わらなかった。

 このころから欠席も増えて両親に「転校したい」と繰り返し訴えるようになり、竜二さんは「一人の給食が一番こたえていたようだ」と話す。

 岸洋一校長は八日の会見で、学級崩壊状態は周りの教師が気にかけており、教科によっては担任と他の教師が一緒に指導するなど、改善に努めていたと説明。給食の件も校外学習の翌日、児童全員が前を向いて食べるように変更したとし「多くの教員が学級にかかわりをもっていたが(指導が)十分に行き届かなかった」と振り返った。

 県教委によると、県内で学級崩壊の実態を把握する調査は行われていない。新里東小は学級のまとまりを取り戻そうと努力する一方、明子さんが給食で孤立感を深めていることを感じ取れなかったのか。

 いじめの研究をしている群馬医療福祉大(前橋市)の大野俊和准教授(社会心理学)は、学級崩壊が起きた場合、学校側に対策のノウハウがないと、教室内で静かにしている子や欠席している子まではなかなか目が行き届かなくなると指摘。新里東小の対応を「学級全体を何とかしようとするなかで、明子さんのケアが後手に回った可能性がある」と話した。

 

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