2009年1月3日土曜日

モンブラン デュマ 1

~デュマを擁護する~
 アレクサンドル・デュマ(1802.7.24~1870.12.5)。
 稀代のエンタメ小説化、劇作家、女好き、グルメ、浪費、革命への参加、亡命、大借金…豪快にフランス革命の残り香のただようフランスでたくましく生き抜いた男。



 モンブラン万年筆 アレクサンドル・デュマ(BB)を所有している。


 少年時代、アレクサンドル・デュマの岩波文庫の「三銃士」の分厚い3巻本だっただろうか、その面白さとテンポのよさであっという間に読破した記憶がある。また、チャーリー・シーン主演の映画版三銃士も大変面白かった。
 作品の面白さと、ペンの格好よさとが合致した、唯一の作家シリーズの万年筆である。

 流氷模様のボディはくすんだブルーグレーかと思いきや、光をあてると深く水色にきらめく。また、こげ茶色の茶色味はヘミングウェイより強いので、黒色と見間違えることはないだろう。胴軸を走る3本の金バーは三銃士の3人を表しているのだろうか。


 全体的に金メッキは黄色みが強い。なんとなく、金箔をあしらった高級デコレーション・チョコレートのようないろどりを持つ異色のペン。金メッキが小さく禿げてきている。
装飾が華美、言葉を変えると「ケバい」ということになる。また、万年筆マニアの評価・人気もいまひとつのようである。

 曰く
・ペン芯に不必要なボトルネックがある。インク供給上、不都合である。
・ペン先とペン芯に位置決めのV字の切れ込みがある。ペン先とペン芯の相互の位置を任意に調整できない。
・ペン先には、コストカットの穴がある。
・ヘミングウェイと同型であるが、バランスがヘミングウェイのほうが優れる。
等など


 だが、僕にとっては10年近く前、ある資格試験の勉強に1年間使い込み、無事合格した思い入れがあるペンである。また、モンブランジャパンの心ある技術者との思い出の詰まった大事なペンである。

 デュマのペン先は、モンブラン限定シリーズ中で最も大きく美しい。
その理由として、公式なモンブラン社発行の小冊子「CREATIONS OF PASSION」の表紙を飾っている、ということを挙げたい。
 139、ヘミングウェイ、現行の定番149(75周年モデルを含め)以降、この9号の大きさペン先を持つ新作モデルは1996年のデュマが最後となっている。すなわち、限定品を含め、146サイズのペンが主流となって、10年以上たつ。
 多くのモンブランファンが149サイズの新作、あるいは139の復刻を待っているのではないだろうか。
 僕は、149においてO3Bのペン先が廃盤となったことと考え合わせると、9号ペンを持つ個体はもう作られないのではないか、149すら受注生産になってしまうのではないか、と危惧している。

 意外に愛用者は多いようだ。
 過日亡くなられた、作家・脚本家、野沢尚氏の葬儀を伝えるTVに「愛用の万年筆」とコメントがあり、モンブランのデュマが一瞬映っていた。
 また、自動車評論家の徳大寺有恒氏がかつて開設されていたサイト「ザ・倶楽部徳大寺」には、愛用の万年筆としてやはりデュマが掲載されていた。

 インク窓はない。ここは好みが分かれるだろう。たまに振ってみて残量を確認する。チャプチャプと音がする。インク窓の着色を気にしなくても良いので色々なインクを試すことができるのはメリットとなる。

 文字通りの栄枯盛衰を味わい、大借金を背負いつつも、豪快に楽天的に快楽を追及して大革命後の1800年代を68歳まで生き抜いたデュマ。
 一方、躁うつ病によって61歳で自殺せざるをえなかったヘミングウェイ。
 両者の人生を踏まえて見ると、万年筆のヘミングウェイも繊細・神経質で、デュマがおおらかに見えてくるから不思議である。双方のインプレ比較は稿を改めて…。