2010年11月16日12時1分
宇宙航空研究開発機構は16日、探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセル内の微粒子が、小惑星「イトカワ」のものだったと発表した。すでに見つかっていた約1500個の微粒子ほぼすべてで、成分が地球のものと明らかに違い、イトカワを撮影して判明していた成分と一致したことがわかったという。はやぶさは、月以外の天体に着陸し、帰還しただけでなく、月と彗星(すいせい)以外の物質を世界で初めて持ち帰る快挙を成し遂げた。
宇宙機構によると、微粒子の大きさはいずれも0.01ミリ以下。想定よりもはるかに小さかったため、フッ素樹脂製のヘラを新たにつくり、内壁をなでるようにして取り出した。電子顕微鏡で一粒ずつ調べたところ、1500個の多くはかんらん石で、輝石や斜長石なども見つかった。
電子を当てると出てくるX線の波長から、鉄とマグネシウムの比率を調べ、1500個すべてで、地球にあるかんらん石などと比率が異なっていることを確認。イトカワと同じような小惑星だったと考えられる隕石(いんせき)の成分とも一致した。さらに、イトカワをはやぶさが撮影した赤外線写真や、地上の望遠鏡の観測で判明していたイトカワ表面の成分とも同じだった。
イトカワの微粒子は、兵庫県にある大型放射光施設「スプリング8」などでの分析を待たなければ確定できないとみられていた。しかし、見つかった1500個の微粒子すべてで同じ傾向が見られたことから、「もはや地球のものとは考えられない。イトカワのものと考えて間違いない」と判断したという。
イトカワの微粒子はスプリング8や米航空宇宙局(NASA)などに来年1月をめどに配られ、詳細な分析に入る。微粒子がどれだけの熱を受けたかがわかり、小惑星のでき方や、太陽系の成り立ちも解明できると期待される。
はやぶさは2005年にイトカワに着陸した際、岩石や砂を飛び散らせる弾丸が発射されなかったため、採取に成功したかどうかわかっていなかった。今回確認されたイトカワの微粒子は、はやぶさ本体が着陸した際の衝撃で巻き上げられたと考えられる。微粒子が入ったカプセルは、今年6月13日に豪南部の砂漠に帰還した。
はやぶさは燃料漏れなどの影響で通信が途絶し、一時行方不明になった。帰還が予定より3年遅れた。帰還の途中にエンジンも止まるなどのトラブルに見舞われたが、その都度、技術者らの機転で乗り越え、帰還にこぎ着けた。
宇宙機構はこの成果を、今後計画している後継機「はやぶさ2」の打ち上げに生かしたい考えだ。(東山正宜)