たんぽぽ舎
パンフレット
54 イラク反戦と劣化ウラン
第一刷 2003年6月発行
 山崎 久隆(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会)
伊藤 政子(アラブの子どもとなかよくする会)

 32ページ 400円

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目次
イラク反戦と劣化ウラン 山崎久隆
3月14日の劣化ウランブリーフィング
米国情報戦のターゲットは米国市民
劣化ウランの銃弾と爆弾
「ピンポイント爆撃」
戦争の現実
劣化ウランはどこから出てくるか
「イラクの大量破壊兵器」は口実にすぎない

劣化ウラン汚染が顕在化
徐々に明らかになる戦争犯罪
  クリスチャン・サイエンスモニター紙より抄訳 山崎久隆
21
市場のそばに汚染地帯
たった一箇所の警告板
いたるところ劣化ウラン弾

この、非道なアメリカのイラク攻撃に思う
映像の外の現実 伊藤政子
23
破壊力の大きな近代兵器
戦死者数に入らない戦争の犠牲者たち
イラクにも沢山いるリベラルな人たち 暫定政権って何だ
米軍が解放するという人々を米軍が虐殺する
南部の劣化ウラン弾の犠牲者はシーア派の人たち
白血病はクルドの子どもたちにも
白血病の子どもたちを抹殺させないで
「戦後復興」などと言わせるな

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(本文1〜2ページより)
イラク反戦と劣化ウラン
劣化ウラン研究会 山崎久隆
 米軍が今回のイラク戦争で「劣化ウランを使った」と発表をしたのは3月25日です。私たちは戦争が始まる前から劣化ウランを使わないわけがないということは残念ながら確信をしていました。なぜかというと、米軍の兵器体系はもはや劣化ウランを抜いてしまうと戦争ができないような、そういう状況になってしまってるんです。
 図の中のシルエットで表しているものが誘導爆弾です。一番上にある大きなものがバンカーバスターです。2トンあります。真ん中ぐらいに横向きになっているシルエットがトマホーク巡航ミサイルです。このトマホークで重量大体1トン弱です。このほかに下の方にありますのがA10サンダーボルトという攻撃機が使う30ミリ劣化ウラン弾、200発分で50kgになります。1発約300グラム。
 トマホークと機関砲弾を除き、これらすべてに劣化ウランが使用されているとは証明されていませんが、劣化ウランが使われていると推定される武器です。もちろんこのほかに91年湾岸戦争にも使われた120ミリ砲弾があります。戦車砲弾は1発で約5kgの劣化ウランを使っていますから、10発で50kgです。ですから誘導爆弾が使っていると推定される劣化ウランの量はケタが全然違うわけです。バンカーバスターの使用量が1トンと仮定すれば戦車砲弾200発分ということになってしまいます。
 現在ではケタ違いに劣化ウランを使う兵器が爆発的に増えていると考えております。

 なぜそんなことになるのかと言えば、91年の湾岸戦争が一番大きな影響を与えています。例えば、このA10という攻撃機は湾岸戦争中に約100万発の劣化ウラン弾を使い戦車を攻撃しました。戦車と言えば、いくら上部構造が弱いといっても機関銃の弾で穴があくなど普通はないわけです。跳ね返しますよね。ところが劣化ウラン弾を使うと、分厚い戦車装甲を簡単に撃ち抜いてしまうのです。しかもただ穴をあけるだけではありません。劣化ウランは融点が1133度と、比較的低い温度で溶けます。弾は装甲板を貫いている間の摩擦熱で溶けて一部は液体状になります。そして細かい粒子状となって飛び散ります。その瞬間、ウランが内部の酸素と急激に反応して爆発的に燃焼します。戦車の中は弾薬の山ですね。戦車砲弾は入ってるし、機関銃の弾は入ってる。燃料まで積んでいますから、3000度の高温になってしまえば、中の砲弾が誘爆を起こします。その結果、テレビでも写りましたが、イラクの戦車を米軍が撃つと突然爆発するわけです。あれはミサイルを撃ってるわけではない。ただ機関銃弾を撃ってるだけです。それでも中の戦車砲弾は誘爆を起こして吹き飛んでしまう。それが、このA10が使った機関銃弾の特徴です。


(続く)

(本文23〜24ページより)
この、非道なアメリカのイラク攻撃に思う
映像の外の現実
伊藤政子
 私は米軍のイラク攻撃がはじまってから、バグダッドの友人たちにひたすら電話をかけ続けていた。三月二十日からの徹底的な攻撃でバグダッド内のすべての電話局が壊滅状態になったと知るまでの毎晩、夜十一時から朝の五時頃までダイヤルし続けて、話ができたのはたった三人だった。バグダッド以外の都市へは、ハナから諦めていた。そして、やっとつながった電話の向こうからは、日本で目にする映像とは大きく異なった悲痛な声が伝わってくる。バグダッドから送られてくる空襲の映像は、米軍提供でなければ報道陣が滞在しているホテルの窓から撮っている一方向(大統領宮殿側)から見えるものにすぎないのだから。

破壊力の大きな近代兵器

 バグダッド中心部から車で三十分の大きな町にあるワリードの家は、すでに初日t三月二十日の空襲で家中のガラスが全部割れ、水も電気も止まっているという。連絡が着いたのは攻撃が始まって四日目で、日本では「バグダッドでは大統領宮殿などが攻撃されていて、まだ発電所も浄水場も攻撃を受けていない」と伝えられていた時のことだ。「毎晩繰り返される空襲の激しさに、六十才近い母親は夜通し泣き叫び、子どもたちはおびえて真っ暗な家の中を逃げまどうんだ。危ないのに。異臭のする粉のような白い粉も入ってくる」と熱に浮かされたように話す。電話口からはズーンと響く音や妹達の金切り声が聞こえる。
 山崎久隆さんによれば、MOAB(モーブ・デージーカッターの巨大な爆弾)が使われたのではないかと疑われる。「その煙を吸うな。避難しろ。水で洗い流せ」と言う山崎さんに私は思わず涙声で叫んでしまった。「どこに避難できるの!水なんかもう止まってるのよ」と。「せめて、濡れタオルで口を被え」とだけ伝えたかったのに、以後電話はつながらない。

 二トンもの爆弾が落ちたところでは、地下十三階にも達するそうだ。その真上は震度七の激震に襲われる。私は、初日に宮殿にバンカーバスターが四発も落とされたと聞いただけで何百人が亡くなったのだろうと思っている。「イラク側が発表しないから」「現場の取材ができないから」アメリカ発の報道に頼るというのは言い訳にもならない。常識的な想像力をマトモに働かせるだけで違う事実が浮き彫りになってくるのに。


(続く)


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