事態急展開…流出保安官の実名が週刊誌に、家族に影響も

2010.11.15


海上保安官からマスコミに出された自筆のメッセージのコピー【拡大】

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突ビデオ映像流出事件で、流出を“自白”した神戸海上保安部勤務の海上保安官(43)の実名が一部週刊誌によって報じられた。保安官は連日、捜査当局の任意の事情聴取を受けているが、実名が表に出たことで事態が思わぬ方向に動く可能性も出てきた。

 保安官を実名報道したのは、15日発売の「週刊現代」11月27日号。14ページにわたる民主党批判特集の冒頭に流出事件を取り上げ、保安官の実名も掲載した。

 記事自体は保安官に直接取材したものではなく、周辺取材を集めて構成されたもの。ただ、保安官と近い海保職員の証言として、「ビデオ流出の直接のきっかけは、民主党を中心とした議員たちのとぼけた反応」など保安官の動機にまで言及している。さらに、保安官の出身地や父親の職業、きょうだいの有無や経歴などにも踏み込んでいる。

 流出事件は国民的関心が非常に高い事件であることから、各報道機関は保安官の行動や素顔について、さまざまな報道を行っている。本紙も、かつて上司だった元海上保安庁特殊警備隊長の坂本新一さん(46)による「非常に優秀な部下だった。自分の任務に誇りを持ち、どんな状況でも決して弱音を吐かなかった」との人物評を紹介した。

 しかし、あくまで逮捕前であることから、どの報道機関も実名報道は控えている。過熱報道に保安官が自ら牽制(けんせい)する動きもあった。保安官は13日未明、報道機関あてに手書きのコメントを公開。「本日私がここに宿泊しますのは、貴方たちマスコミのおかげです。私がこの建物を出たならばさらに多大なる迷惑をかけてしまうからです」「過熱した報道を少しはひかえて下さい」とする要望を出した。

 保安官は、神戸市内の自宅に残した妻と幼い2人の子供たちのことをしきりに気にかけているが、ついに実名が出たことで家族の生活にも影響が出ることは必至だ。

 保安官の周辺が騒がしくなる一方で、捜査は異例の長期に及んでいる。

 保安官を庁舎内で軟禁状態にして行われている任意の事情聴取はすでに6日目に入った。捜査当局は15日中にも立件の可否を検討するが、「国家公務員法(守秘義務)違反で立件しても公判維持ができるかは五分五分の情勢」(司法関係者)と言われている。

 

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