初めまして「アーセ」です。
ここの掲示板のSSを良く読んでいるのですが、自分でも作ってみたいと思い筆を手に取った次第です。
初投稿の為、誤字だの脱字だのが目立ってしまうかもしれませんが、
最後まで書けるように頑張ります。
【本作品の注意点】
1.本作品は、鋼殻のレギオスの世界をオリ主中心に進んでいきます。
最初は「レジェンド・オブ・レギオス」の世界も絡まってきます。
2.説明文などがやたらと長くなり、話のテンポが遅い事があります。
3.主人公はどんどん強くなっていきます。かなり自重しない強さになる予定です。
4.更新は不定期です。
(イメージしている流れを形にするのに時間がかかる為。)
5.文法の間違い等ありましたら、指摘して頂けると助かります。
6.私は一応「鋼殻のレギオス」と「レジェンド・オブ・レギオス」を読んではいますが、
「聖戦のレギオス」はまだ読んでいない為、解釈の間違いやご都合主義のような進み方に
なる場合がございます。
7.リリスの性格が原作と違います。(似ているところもあるとは思いますが。)
では『操演のレギオス -リリス洗礼-』を宜しくお願い致します。
第1話 願望
どうしてこうなったのだろう。
いつものように過ごすはずだった。学校へ行き、放課後には部活に精を出し、帰りに友人と寄り道をしてから家に帰る。
どうしてこうなったのだろう。
今、起こっている事に思考が付いていかない。気付いた時には、もう自分が自分であるという認識も薄れてきている。
どうしてこうなったのだろう。
どこが上でどこが下かわからない。もう手足の感覚がないというのでなく、体そのものが消失してしまっている。そして残っているのは、消えかけの意識だけ。
薄れていく意識の中で、今いるこの場所は『ゼロ領域』であることが何となくわかった。
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『ゼロ領域』に来る少し前、都市は異形の怪物に襲われた。地を這うもの、空を飛ぶもの様々だったが、共通点が1つだけあった。それは、どの怪物も形が一定ではないこと。
怪物は人間であろうと動物であろうと動いている生物を貪り続けた。喰らった物の特徴を取り込み、さらに変異する。そしてまた喰らう。この繰り返しだ。
俺は、俺たちは、怪物から逃げていた。部活帰りに何の前触れもなく襲われた。友人と離れないように手を握って逃げ続けていた。
ふと友人の手の力が引いたのを感じて、振り向いて手の先を見た。手は肘の辺りまでしか無く、その先にあるはずの体が無い。代わりにいるのは空より降り立った怪物。
その怪物が口を開け、喰われると思った瞬間、地面が爆ぜた。いや、地面だけではない。空間そのものが爆ぜた。
この瞬間、都市にいた人間は全て、ゼロ領域に叩き込まれた。
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ゼロ領域とは何か。それには『オーロラ粒子』が深く関わってくる。
オーロラ粒子とは『アルケミスト』と呼ばれる科学者チームが『永久に動くものを作りたい』と言って開発した機械から発生している粒子のことである。しかし、当初この機械は永久的に
オーロラ粒子を発生させるだけで、応用する方法など全くの皆無だった。未知の粒子であるが為に、車の動力や、電気等のエネルギーといった人の生活に欠かす事の出来ないものに
転用する事が出来なかったのである。
だが、ある一人の願望から全ては一変する。
アルケミストの一人であった彼は、永久機関の完成を祝い「ワインが飲みたい」と言った。当時、飢餓や貧困で配給される物資が限られている為、嗜好品の類は、
一部の特権階級にしか回らない。だから、一介の研究者でしかない彼には飲むことなど出来ない。彼はただのコップ1杯の「水」でその時の欲求を紛らわせるつもりだった。
だが、予想外のことが起こった。欲求が強すぎたのか脳に刺激を与え、ただの「水」を飲んでいるはずなのに、味や芳醇な香りはワインそのものであったのだ。
この日より、アルケミストは原因の究明を開始する。
調査の結果、開発した機械から発生しているオーロラ粒子が『人の思念に反応して世界を形成する』という特質を持っている事が判明した。この特質を利用し、
飢餓や貧困の原因である資源の枯渇の解決策を模索することとなる。
そして、人類の希望とも言える永久機関『亜空間増設機』が完成する。使用方法は、亜空間増設機に対して、人の思念波によってデータの入出力を行うことでオーロラ粒子が反応し、
新たな亜空間を形作る。この亜空間を『オーロラ・フィールド』と名付けた。たちまち亜空間増設機は量産され、物理的には何もない場所にオーロラ・フィールドを生成し、
人が望む大地を増やしていった。既にその規模は地球の表面積を大きく上回るくらいである。本来の地球の大地として残っているのは、中央政府が都市のみとなっている。
何にせよオーロラ・フィールドの空間内では物資も自由自在に作り出すことが出来たことにより、資源の奪い合いである『資源戦争』を終結させることとなった。
というのを最近やっていたドキュメンタリー番組で見た。本当に正しいのかは数百年前の出来事の為、確認する術は無いが。
冒頭に戻るが「ゼロ領域」とは、人の思念に反応して亜空間を形成する前のオーロラ粒子のみが充満している空間のことだ。
近年、亜空間増設機の故障によりオーロラ・フィールドが崩壊し、そのフィールドの空間内に住んでいる人間がすべてゼロ領域に取り込まれるという大事故が数件発生している。
普通の機械なら故障個所を修繕することで直すことが出来る。しかし、亜空間増設機を発明した初代アルケミストは既にいない。代替わりした今のアルケミストに出来るのは
新たに亜空間増設機を作成することだけ。部品の差し替えに、プログラムの書き換え等は全くできないのである。他にも問題があり、オーロラ・フィールドの崩壊までとは行かなくとも
オーロラ・フィールド内にオーロラ粒子が噴出するという現象が発生している。通常、人間はオーロラ・フィールドが形成される前のオーロラ粒子の影響を受けると、
オーロラ粒子がその人間の願望に反応し、その人間を願望に基づく『異世界法則』を宿した人間『異民』へと変貌させる。
そう、変貌させるのだ。
元の世界の法則ではありえない特殊能力を得るのと引き換えに『人間』としての形を留められない。これは『異民化問題』として、どの都市でも問題となっている。
オーロラ粒子を調査していた初代アルケミストは、調査の過程で多量のオーロラ粒子の影響を受け、世代交代する前に存命する者は誰もいなくなってしまった。
稀に特殊能力を得た上で人間としての形を保っている異民が存在するらしいが、とりあえず俺はそうではなかったようだ。
全く、本当にどうしてこうなったのだろう。
ゼロ領域を漂う中、ふと周りを見てみる。一緒にゼロ領域に叩き込まれた名前も知らない都市民は、黒い塊となって何かに集まっていくのが微かに見える。
あれは……集まる先にいるのは何だ?人か?
いや、もういいか。意識を繋ぎ止めておく事など出来そうにない。
ふと思う。
ここがゼロ領域なら俺の願いの一つでも聞いてくれてもいいじゃないだろうか。そうだな、一人っ子だったから兄弟が欲しいな。姉でも妹でもいい。
「もし叶えてくれるなら、俺は兄弟の為に生きよう。」
体の無い状態で呟けたのか判らないが、意識はここで途切れた。
2010/11/6
少しだけ改編しました。