当研究部では大きく分けて
ミトコンドリア病と脳発達障害の2つの研究をしています。
ミトコンドリア病について、一般の方にもわかりやすく 説明してあります。
大きな図を見たいときは、 図をクリックしてください。
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(3) 核 DNAは1つの細胞に1対(2つ)しかないのにミトコンドリアDNA (mtDNA)は数千個が存在しています。なぜならミトコンドリアは1つの細胞に数百個存在し、そのひとつひとつのミトコンドリアの中に5〜10個のmtDNAが存在しているからです。mtDNAのはたらきは電子伝達系酵素の蛋白をつくることです。電子伝達系はそれぞれいくつもの蛋白があわさってできた5つの複合体(I〜V)でできています。 それぞれの複合体の構成蛋白(サブユニット)の数は複合体ごとに違いますが、複合体II以外は全て 核DNAで設計されたサブユニットとmtDNAで設計されたサブユニットでできています。ですから、たとえば複合体IV(別名シトクローム酸化酵素)に機能低下がある時に、その原因は核DNAの場合もmtDNAの場合もありえます。 |
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(5) ミトコンドリア病の診断をするには、いろいろな検査手段を用います。 その目的は2つあります。1つはどの臓器が障害されているかを調べるもの(検査1)。 もう1つはミトコンドリア異常が存在しているかどうかを調べるもの (検査2)です。検査1では心臓の機能が落ちていないかを 心電図や心エコーなどで調べたりして、主に臓器レベルの異常を調べるものであり、個々のミトコンドリアや細胞がどうなっているかを見るものではありません。一方、検査2は病気の本態がミトコンドリア機能異常かどうかを確かめるもので、主に個々のミトコンドリアや細胞レベ の異常を確認するものです。 ミトコンドリア異常のとらえ方は大きく「かたちを見る」「はたらきを見る」「DNAを見る」の3つに分けられます。 |
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(6) 「かたちを見る」は骨格筋をごく薄い切片にしていろいろな染色を行い、光学顕微鏡で観察します。 ゴモリトリクローム変法という染色法が一般的ですが、これはミトコンドリアと小胞体(細胞の中で蛋白の輸送を担当している小器官)が赤く染まり、それ以外は青く染まります。正常の筋では、ミトコンドリアの赤みがはっきりしませんが、ミトコンドリア脳筋症の患者さんの筋では筋細胞の内部に赤い斑点が見えたり筋細胞の周辺部に特に赤く染まる部分が見られます。 これを電子顕微鏡で観察すると巨大化して数を増した ミトコンドリアを見ることができます。 このような異常な筋細胞(筋線維)を赤色ぼろ線維 (ragged-red-fiber:RRF)といいます |
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(7) 「はたらきを見る」というのはミトコンドリアのエネルギー産生能を見るということです。 方法としては、新鮮なミトコンドリアで酸素消費量や 二酸化炭素産生量をみる方法、酵素活性をはかる方法があります。 電子伝達系酵素のうち、複合体IVは別名シトクロームc酸化酵素(COX )ともいいますが、この酵素に関しては組織化学的に活性を調べることができます。凍結切片の筋組織にCOX染色を行います。活性があると茶色に染まり、活性がないと染まりません。 ミトコンドリア脳筋症の患者の筋では活性のない筋細胞が散在することがあります。これはCOX部分欠損とよばれ、ミトコンドリア異常を示す大事な所見です。 |
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(9) 治療法は2つに分けられます。1つはミトコンドリア機能異常ばかりでなく、いろいろな原因でおこる症状(たとえば糖尿病とかてんかん)に対して、有効な治療法がある場合に行われる対症療法です。これはとても大事な治療法です。 もう1つは、病気の本態であるミトコンドリア機能低下を改善させる原因療法です。今のところこの治療法で確実なものはありません。さまざまなエネルギー代謝活性化を目的とする薬物が試みられています。 また、ミトコンドリア異常をもつ細胞を、異常をもたない細胞に変える治療や、変異ミトコンドリアDNAを増加させず病気を発症させない治療法などが研究されています。 |
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研究テーマ*ヒト発達期脳形成障害の成因と病態、予防法の解明
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周産期および小児期の神経疾患の原因究明と病態解明、予防法の開発に取り組んでいます。 1.周産期脳障害の成因 2.乳幼児突然死症候群(SIDS)の解明と予防 3.小児期におこる神経変性疾患の病態解明 4.神経病理学的診断と脳組織利用 ヒト脳の発達とその障害に関することであれば、ご質問とご相談にお答えしておりますので、お気軽にご連絡ください。 |