【コラム】日本がトヨタを放棄する日(下)

 こうした悪循環を解決する方法は誰もが分かっている。国内需要を上回る過剰な設備を海外に移転させることだ。損失の原因となる輸出を中断することが、国と会社の双方にとって利益となり、新興国の支援にもつながる。それにもかかわらず、トヨタは「国内生産を死守する」と公言している。その上、「為替水準が早く是正されることを期待したい」とも述べている。事実上、日本政府に為替介入を促した格好だ。

 100万台規模の生産ラインが海外に移転されれば、日本では15万人の従業員が職を失う。日本政府が税金や円を大量に投入して対策を講じているのもこのためだ。もちろん、これが正しいやり方とは言えない。海外への投資によって稼ぎ出した金で高付加価値産業を育成し、新たに15万人分の雇用を創出するのが、先進国として本来あるべき姿だろう。

 トヨタは日本経済の縮図だ。海外投資による利益が莫大(ばくだい)な貿易黒字を生み出すようになってから、日本はすでに5年になる。そしてトヨタと同様に、その利益で黒字を生んだ国民を養うことなく、赤字を出した国民ばかりを養っているのだ。腐敗したメーカーを救うために、日本国内では金融や流通サービスを犠牲にし、海外では為替市場の流れを変え、新興国を地獄に突き落とした。それゆえに日本は再起できず、尊敬を受けることもできないのだ。

 日本経済が再び浮上する瞬間があるとすれば、それは日本がトヨタを放棄する瞬間といえる。もちろん、韓国にも同じ状況で決断を下す日が訪れるだろう。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)東京特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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