2008年09月17日(水) 23時43分37秒

AIU、アリコ売却危機…AIG事実上の国有化

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AIU、アリコ売却危機…AIG事実上の国有化


前代未聞、9兆円支援


 経営破綻の危機に直面していた米保険最大手、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に対し、米連邦準備制度理事会(FRB)は現地時間16日、最大850億ドル(約9兆円)を融資すると発表した。見返りに米政府は、AIG株79.9%の取得権を獲得し、AIGは実質、政府管理の下で再建を図る。主要国の中央銀行が保険会社の「最後の貸し手」になるのは前代未聞の事態。今後は、AIGスター生命やAIU保険、アリコジャパンなどが売却される可能性もある。

 FRBは16日、リリースを公表し、「AIGの無秩序な破綻は金融市場の不安定さを一段と増幅させる」と指摘。「AIGに対する融資は、経済の混乱を最小限に抑えながら、秩序ある方法で同社が特定の事業を売却するプロセスを容易にするものだ」と強調した。

 FRBのAIG向け融資の焦げ付きは国民負担につながるだけに、米政府は早期の融資返済を迫る方針。このため、買い手が付きやすいAIGの優良資産の売却は不可避で、保険子会社を手放す動きが世界規模で加速しそうだ。

 AIGは日本の保険市場で外資系最大規模のシェアを誇る。グループ会社のAIGスター生命、AIU保険、アリコジャパンなどが売りに出され、日本の保険業界再編を誘発する可能性もある。

 融資の期間は24カ月。一部子会社の株を含むAIGの資産を担保に取って実行される。返済資金は、資産売却で捻出する見込み。今回の救済に伴い、同社の経営陣は退任する。


 連邦準備法は、「緊急かつ急迫した環境」に限り、FRB傘下の連銀が銀行に限らず、個人や一般企業にも特別に融資できると定めている。だが、FRBと取引関係がある銀行や証券会社以外への融資は「まずあり得ない」(金融筋)とされてきた。

 前代未聞の措置に踏み切ったのは、公的支援を拒否して経営破綻したリーマン・ブラザーズと違い、AIGは大きすぎてつぶせないという論理が働いたためとみられる。

 海外の金融事情に詳しいクレディ・スイス証券チーフ・エコノミストの白川浩道氏はこう指摘する。

 「リーマンの経営問題は他の金融機関でもある程度準備されており、資産規模も世界経済全体に影響を及ぼすほどではなかった。一方、約1兆ドルの資産を持つAIGの場合、金融機関は社債や融資、市場型の金融商品などの形でAIG向け債権を持っており、AIGが倒れると、米国の大手銀行の連鎖破綻などの危機がドミノ的に広がるリスクがあった。また、世界的に個人向けビジネスを展開しているAIGがつぶれると、世界中の消費者にまで影響が及ぶことになる」

 AIGは、企業の破産や債務不履行などに備える保険契約の1つで、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)をここ数年、世界の有力金融機関や投資家に積極販売してきた。

 このため、CDS市場の中心的存在のAIGを破綻させれば、大量の取引が決済不能に陥り、世界の金融市場が大パニックになる恐れがあった。

 ただ、リーマンが公的支援を受けられずに破綻し、AIGは生き延びることに違和感を覚える金融関係者は多い。

 明治大政経学部の高木勝教授もその1人で、次のように語る。

 「米政府がAIGを救済したのは、生命保険などの個人向け商品を多く扱っているため、影響が国民生活全体に広がりかねない点も配慮したのだろう。ただ、AIGよりは規模が小さいとはいえ、投資銀行4位のリーマンを救済しなかったこととの政策の不一致は感じる。AIGを救済するのであれば、リーマンも救済しておくべきだった」

 破綻の一歩手前から生還したAIGだが、本当の試練はこれからやってくる。


 ■AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ) 世界最大級の保険グループで、130以上の国・地域で事業を展開。日本には1946年進出。経営が悪化した日本の生保も傘下に収めるなど積極的な企業の合併・買収(M&A)戦略で事業を拡大した。日本では損害保険のAIU保険、アメリカンホーム保険、生命保険のアリコジャパン、AIGスター生命などが活動している。住宅ローン債権に絡んだ金融商品のリスクを保証する取引などで、今年4―6月期決算ではサブプライム住宅ローン問題に関連した巨額の損失を計上した。(共同)

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