北朝鮮で軍需産業めぐる情報流出

核開発に関与した天才科学者父子などが収容所送りに

 北朝鮮の軍需産業に関する情報が海外へ流出し、国家安全保衛部が非常態勢に移行していることが分かった。冷戦が崩壊した直後、ロシア(旧ソ連)の核兵器に関する情報が外部へ流出したが、これと似た現象が北朝鮮で再現しているというわけだ。北朝鮮の核やミサイルの研究・開発で中心的な役割を果たしている、国家科学院数学研究所のキム・ソイン室長が、父親のソンイル博士(寧辺核施設研究員)と共に、スパイ容疑で保衛部に逮捕されたことが、9日までに分かった。

 北朝鮮内部の事情に詳しい消息筋によると、キム・ソイン博士は今年5月、家族と共に保衛部へ連行され、耀徳収容所へ送られたといううわさが流れている。キム博士は平安南道平城市にある理科大学(韓国のKAIST〈韓国科学技術院〉に相当)を首席で卒業し、20代で博士学位を取得した、数学の天才として知られている。北朝鮮メディアはキム博士を、北朝鮮初の人工衛星「光明星1号」の打ち上げ(1998年の弾道ミサイル「テポドン1号」の発射実験)に大きく貢献した、と紹介したこともある。そんなキム博士がスパイ容疑で逮捕されたのは、父親のソンイル博士が、核開発に関する極秘の資料を外国の機関に渡したという証拠が見つかり、これにキム博士も関与していたためだという。

 このほか、祖国平和統一委員会(祖平統)のパク・キョンチョル副局長もスパイ容疑で収容所へ送られ、また江原道元山市で軍部による外貨稼ぎの責任者を務めていたキム・ウォンボム氏は、自宅から150万ドル(約1億2300万円)が見つかったとして、スパイ容疑で保衛部に連行された。また、マジョン鉱山の指導局の責任者も、軍隊と共謀して情報を売り、10万ドル(約818万円)の裏金をプールしたとして逮捕されたとのことだ。

 北朝鮮では、昨年の貨幣改革以降続いている経済難に加え、中国当局が最近、麻薬や偽造通貨に対する取り締まりを強化し、外貨稼ぎが難しくなったため、幹部らが情報の売買に関与するケースが増えているという。こうした中、国家安全保衛部は後継者の金正恩(キム・ジョンウン)氏の指示を受け、出どころが分からない多額の金を持っている幹部らに対し、大々的な監視に乗り出したとされる。

姜哲煥(カン・チョルファン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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