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きょうの社説 2010年11月14日
◎能登丼組合が発足 「食の宝庫」をてんこ盛りに
「能登丼」を手がける奥能登の飲食店が協同組合を発足させ、能登丼の地域団体商標(
地域ブランド)登録をめざすことになった。多種多様な食の宝庫としての能登の魅力を、丼という庶民的なコンセプトで発信する手法は観光客に好評だが、全国各地でB級メニューを推進力に地域振興を図る動きが高まってきた中で、他との「違い」をいかに際立たせるかが、今後の課題となる。各地のB級メニューが、どちらかと言えば目玉商品を重視する中で、能登丼は季節ごと に素材も変わり、ことしは「海女採りあわび」が乗った豪華版や、イチゴを使った初のスイーツも登場した。食材の豊富さを強みに、次々と「新顔」が増え、進化していくのが特徴と言えるだろう。そんな四季の新鮮な味をてんこ盛りにして、能登空港とともに、北陸新幹線の金沢開業でより一層近くなる首都圏を中心に情報発信していきたい。 2007年にスタートした能登丼は、神奈川県小田原市で先月開かれた全国丼サミット で、用意した5千食が完売したのをはじめ、インターネットの情報をもとに、能登丼だけを目当てに県外からマイカーで訪れる人もいるように、能登の食の代名詞に成長した。 これまで県と珠洲、輪島、能登、穴水の2市2町などの推進協議会が事業主体だったが 、発足する能登丼事業協同組合には、全63店舗が加わり、地元企業などから賛助会員を募る。能登丼発信の舵取りが、奥能登の最前線で取り組む業者にゆだねられ、これまで以上に組合側と、食材を提供する地元の農林漁業者との連携が求められる。 たとえば、魚介類に比べ、野の幸、山の幸は、やや控えめな印象もあるが、輪島市が山 菜ギボウシのブランド化に乗り出すなど、ここ数年、市場価値が高まった奥能登の山菜なども、生産者からアイデアを求め、能登丼の中でもっと光を当てる戦略があっていい。 県が「県民エコライフ大作戦」に組み込んで、能登丼の地産地消につなぐ企画を打ち出 したように引き続き行政の後押しが大切になる。関係市町も連携して全国レベルの食の祭典を誘致し、ブランド効果を高めることも考えたい。
◎日米首脳会談 同盟深化の具体策が肝要
菅直人首相とオバマ大統領の日米首脳会談は、対中国関係で日米両国が互いに日米同盟
の必要性をあらためて確認する場となった。海洋覇権の意志を隠さず、米欧にもレアアース輸出停止の外交カードを切る中国の動向は、米国に日本の存在の重要性を再認識させたと言える。それでも、菅民主党政権が頼れるパートナーとして、オバマ大統領の信頼を得ていると は言い切れない。米軍普天間飛行場移設問題は決着の見通しが立たず、日米安保条約改定50年の節目を飾る共同宣言は来年に先送りされた。 オバマ米政権は、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であることや、北方領土問題で日 本の立場を支持することを明言した。菅政権は、領土で日本を助ける米政権の言質に安心せず、日米同盟の深化を具体的に進める政策を実行することが最も肝要である。 当面の最大の課題である普天間飛行場の移設問題は、沖縄県知事選を争う現職と新人候 補が県外、国外移設を主張し、解決は一層困難になっている。県内移設の日米合意の実現をめざすという菅首相は、不退転の覚悟で沖縄県民を直接説得しなければなるまい。 日米安保関係では、来年度以降の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)についても政 治決断しなければならない。大幅な減額は避け、現行水準の維持を求める北沢俊美防衛相らの主張は現実的判断と言えるのではないか。 アフガニスタンでの対米支援では、自衛隊防衛医官を国際治安支援部隊(ISAF)の 活動に派遣するだけで事足りるのどうか検討する必要もあろう。自民党は対テロ給油活動を再開する特別措置法案を今国会に提出している。 通商分野では牛海綿状脳症(BSE)に伴う米国産牛肉の輸入制限問題がある。制限の 基準を生後20カ月以下から、国際指針の30カ月未満に緩和することについて、そろそろ決断を下す時にきているのではないか。対中、対ロ外交の立て直しには日米同盟の強化が重要であり、それは内政の課題克服にかかっていることを、あらためて銘記してほしい。
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