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きょうのコラム「時鐘」 2010年11月14日
あす15日は坂本龍馬の命日である。暗殺者は誰か。幕末以来の謎だが磯田道史さんが「龍馬史」(文藝春秋)で答えを出している
結論は読んでほしいが、この幕末の一大事件が日本史に及ぼした影響はよく語り継がれる。明治中期になると、北陸にも余波が及んだ。1883(明治16)年、元土佐藩士の岩村高俊が、富山と分県後の「石川県知事」として赴任してきたのである 龍馬暗殺直後、土佐藩士は事件の黒幕とみた紀州藩士グループを襲った。その中に岩村がいた。新政府で北越戦争の指揮官になったが、横柄で無能な若者だった。応援に来た山県有朋が、負けているのにのうのうと飯を食っている岩村の膳をけっ飛ばしたという 司馬遼太郎氏の小説「峠」と「歳月」にも登場し、傲慢、狭量さを描かれ、自伝でも若き日の傍若無人(ぼうじゃくぶじん)を反省している。幕末期は、坂本龍馬に連なるという経歴だけで、そんな若造が指揮官になれたのである。混乱期は偽物と本物を見分けにくい 時の勢いに頼る人物評価は危ないことを、岩村の経歴は物語っている。程度の差はあろうが、平成の政界も無縁ではなかろう。 |