米原市の雑排水槽で交際相手を窒息死させたとして、殺人罪に問われた森田繁成被告(41)の裁判員裁判は10日、大津地裁(坪井祐子裁判長)で初の被告人質問があった。「裁判員に直接語りかけたい」として供述調書作成に応じてこなかった森田被告は、「姿を消した小川さんを捜したが会えなかった」と主張。検察側と真っ向から対立した。被告人質問は17日まで計4回予定されている。【加藤明子】
被告と検察側の主張が食い違ったのは、被告がJR高月駅前で被害者の小川典子さん(当時28歳)を車に乗せた09年6月10日午後8時45分から、就寝中の姿を妻が確認した翌日午前3時までの足取り。被告は「会った直後に小川さんが被告を降ろして車で走り去った」と説明。「約1時間後に近くで車を見つけたが、小川さんの姿はなかった」と述べた。
■メールの真意
被告は車を発見後の11日午前1時14分と53分、「車かえして」などと小川さんの携帯電話にメールを送っていた。理由について、被告は「長時間心配して捜していることを示したかった」と述べ、「殺害のカムフラージュ」との検察側主張を否定。このメールまで小川さんに一切連絡しなかったのは「腹が立っていたため」と説明した。
■左手の傷
被告は10日夜、左手の甲に傷を負っていた。この傷について、被告は「小川さんを待つ間に見知らぬ2人組に暴行されて転んだ」「小川さんを職場のいじめからかばったことへの逆恨み。小川さんの勤務先の従業員だと思う」と主張。警察に届けなかったのは「小川さんとの関係を話したくなかった」と述べた。
■車の血痕
被告の車の助手席からは広範囲に血液反応があり、車のマットから検出された血液も小川さんのDNA型と一致した。弁護側はこれまで「小川さんの鼻血」と説明している。
■衣服を屋外の洗濯機に
被告宅の捜索などで返り血を浴びた衣服や靴は見つかっていない。被告は「小川さんと別れた後、午後11時前に帰宅し、着替えて再び小川さんを捜しに出た」と説明。着ていた服を普段ペットの毛布などを洗っている屋外の洗濯機に入れた点を弁護側に指摘されると、「職場で不良品を割る作業に従事し、ガラス片が付いたかもしれないと思ったため」とした。洗濯機から血液反応は出ていない。
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11日は自動車修理業者の証人調べと被告人質問がある。
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◆主張
被告 アピール
検察側 カムフラージュ
被告 見知らぬ2人組に暴行された
検察側 事件に関係
被告 小川さんの鼻血
検察側 事件に関係
被告 ガラス片が付着したため
検察側 血を洗い落とすため
毎日新聞 2010年11月11日 地方版