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【連載】

事例で学ぶiPhone/iPad活用術

2 新製品の紹介でiPadによるコミュニケーションを実現

2010/11/01

エースラッシュ

    週末、居酒屋にいると突然華やかな声が聞こえてくる。目を向けると、印象的な衣装に身を包んだ女性が笑顔で顧客に語りかけている。そんな光景に出くわしたことはないだろうか。成人喫煙者なら、直接彼女たちから新製品のタバコの紹介を受けたことがあるかもしれない。そうしたタバコの新製品紹介活動にiPadを活用しているのが、タバコのマーケティング・販売促進業務を行っているフィリップ・モリス・ジャパンだ。

    フィリップ・モリス・ジャパンのキャンペーンレディ

    タッチと大画面で生まれるコミュニケーション

    フィリップ・モリス・ジャパンマーケティング マネジャー・コンシューマー・エンゲージメント・ディベロップメント 高橋宏氏

    「成人喫煙者と有効なコミュニケーションのためのツールを探しているところに登場したのがiPadです。最新端末を使っているという話題性にも着目しました」と語るのは、マーケティング マネジャー・コンシューマー・エンゲージメント・ディベロップメントの高橋宏氏だ。

    居酒屋や高速道路のサービスエリアなど、成人喫煙者が多く集まる場所を訪ね、成人喫煙者に製品紹介を行うキャンペーンレディは、多くの荷物を持っている。告知したい新製品を入れたバッグとキャンペーンに必要な小道具などだ。iPad導入以前には、さまざまなコミュニケーションツールを持ち歩いたり、ツールを持ったまま手品を使ったコミュニケーション等もしていたという。

    居酒屋で客席をまわるキャンペーンレディ

    「成人喫煙者の興味を惹くアイテムとして、製品に合わせたツールやアプローチ方法を用意しています。試験的にiPhoneを使ったこともあるのですが、画面が小さく、一方的に動画を見せる程度の使い方になってしまうのが悩みでした」と高橋氏。

    iPadへの期待は、大画面の表現力とタッチによる成人喫煙者とのインタラクティブなコミュニケーションだ。実際に「マールボロ・アイス・ブラスト」の紹介活動では、単純に告知用動画をiPadで見せるだけでなく、「フィルター部分のカプセルを指でつぶすとメンソールが1.5倍に強くなる」という特徴をアピールするため、画面に表示されたタバコのフィルター部分の円をタッチすると、氷がはじけるような動画が再生されるという仕掛けが施されている。iPadのタッチ画面を活かし、ユーザーとのコミュニケーションを図るわけだ。

    アンケート調査の前には、画面で必ず喫煙に関する注意文言を見てもらう

    マールボロ・アイス・ブラスト用の動画

    動画は単に見せるだけでなく、ユーザーにタッチしてもらう動作を取り入れている

    画面にタッチすると氷がはじけるような動画が再生され、ユーザーは一瞬ドキッとする

    「『ここを触ってみてください』とやるわけです。お客さんに「おお!弾けた」と驚いて笑ってもらえればコミュニケーションのきっかけになりますし、印象にも残るでしょう。あくまでもコミュニケーションツールです」と、高橋氏はiPadの活用方法を説明する。

    「こういう使い方もあります」と、高橋氏が見せてくれたのは、iPadの裏側に隠し持ったタバコを、画面上でスライド表示されるタバコの画像に合わせて取り出すという簡単な手品。画面からタバコが飛び出したように見せる使い方だ。iPadを利用すると、iPhoneでは不可能だったタバコを実寸大で表示することもできる。うまく使うと、バーチャルとリアルを近づけることができるのだ。

    画面上でスライド表示されるタバコの画像に合わせて、iPadの裏に隠していた実物のタバコを取り出すという簡単な手品

    「iPadの登場後、すぐに導入を決め、必要なアプリケーションの開発に着手しました。キャンペーンスタッフは全国に約800人以上登録しているので、今回250台を一括導入することにしました」と高橋氏。iPhoneの部分的な導入経験があったことから、思い切った一括導入となった。

    新製品紹介活動時の情報収集もスムーズに実現

    キャンペーンごとにツールとしての動画やアプリケーションは用意されるが、更に開発されたのはアンケート回答者のプロフィールデータを入力・蓄積するアプリケーションだ。以前は現場で書き込まれた用紙を回収し、まとめてデータ化を行っていた。しかし、これだと横断的に情報を閲覧したり、成果を確認するまでに時間がかかるという問題があった。

    アンケートの結果はその場でiPadに入力していく

    「iPad上で情報を登録することでデータ化の手間がなくなり、情報も見やすくなりました。現場でも、以前は1テーブルに数人の成人喫煙者がいた場合は覚えきれず、その場でメモをとっていたのですが、iPadならばさりげない雰囲気で情報入力できると好評です」と高橋氏は語る。

    導入準備は今年の5月から始まり、開発会社に依頼してアプリの開発が進められた。iPadは全端末が3G対応のため、逐次送信も可能だが、実際には地下店舗での紹介活動など電波状況が悪い場合も多く、日次でまとめて送信するのが基本となっているようだ。

    iPadそのもののトレーニングは、キャンペーンごとに実施されるトレーニングの中で行われたという。「毎回、キャンペーンツールの使い方を含めたトレーニングを1日がかりで行います。ロールプレイングで年齢や喫煙者であることの確認方法を含む接客を学んだり、製品特性を学習するのと同時に、iPadの使い方も覚えてもらいました」と高橋氏。従来のツールに比べてかさばらない、扱いやすいと現場では好評だという。

    アナログとデジタルを組み合わせてコミュニケーションを加速

    今後の課題として高橋氏が挙げたのは、インタラクティブ性の向上だ。

    「我々が目指しているのは人と人とのコミュニケーションです。iPadを通じてのコミュニケーションですね」

    実際、新製品紹介活動の現場では、iPadで注意事項をはっきり見せたり、情報をスマートに伝えるためのツールとして使われており、ある意味iPadは「つかみ」の役割を果たす。一通り映像を見せた後は、キャンペーンレディのトークスキルが活きてくる。楽しく会話し、良い印象の中で新製品を手にする機会を持ってもらうのが目的で、iPadで映像を見せることは手段でしかない。同社にとってiPadという端末はあくまでも1つのツールなのだ。

    「毎回ツールを作るよりコストも抑えられますし、非常に良いツールではあります。しかし、目指しているのはテクノロジーと生身の組み合わせでのより良いコミュニケーションですから、将来的にiPadが当たり前になってしまった頃には、また手品をやるかもしれませんよ」と高橋氏は語った。


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