滋賀県米原市で昨年6月、交際相手の女性(当時28歳)を雑排水槽に落とし窒息死させたとして殺人罪に問われた森田繁成被告(41)の裁判員裁判の第4回公判が11日、大津地裁であった。坪井祐子裁判長は12日の被告人質問を「内容が公序良俗に反する可能性がある」として非公開にした。地裁は詳しい理由を明らかにしていない。裁判員裁判で審理が非公開になるのは極めて珍しい。
森田被告は女性の頭を鈍器で多数回殴って重傷を負わせ、雑排水槽に落として汚泥吸引により窒息死させた、として起訴された。一貫して無罪を主張しており、4日の初公判から12月2日の判決まで異例の長期審理が続いている。
公判には、遺族2人が被害者参加制度を利用して参加。5日の第2回公判では、傍聴席から姿が見えないようついたてで仕切られた法廷内で証言した。11日の被告人質問では、被告の車の左後輪付近から検出された被害者のDNA型と一致する血痕を巡り、検察側が被告を追及する場面があった。
これまで他の裁判員裁判で、被害者や証人などのプライバシー保護のため、匿名にしたり、別室での証言を法廷に中継するなどの方法をとるケースはあったが、審理は公開されていた。
市民団体「裁判員ネット」(東京都)代表の大城聡弁護士は「一部とはいえ、裁判員裁判の審理が非公開になるのは初めてではないか。市民の司法参加という裁判員制度の趣旨に逆行し、裁判員に密室裁判を強いることになる。証人尋問とは異なり、無罪を主張している被告に対する質問を非公開にするのは特に慎重であるべきだ」と話している。【加藤明子】
毎日新聞 2010年11月12日 10時11分