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【滋賀】

被告が行動を詳述 米原殺人事件公判

2010年11月11日

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 10日開かれた米原女性殺人事件の裁判員裁判の第3回公判。被告人質問が初めて行われ、事件当日の被告の行動について、検察側・弁護側の双方が質問した。森田繁成被告(41)は、殺害された小川典子さん=当時(28)=を探していて帰りが遅くなったとする経緯を詳細に説明した。事件当夜に現場で被告の車に似た車を目撃したトラック運転手や被告が車の修理を依頼した自動車修理業者の証人尋問もあった。

 森田被告の主張を裏付ける質問を繰り返す弁護士。その主張の矛盾を問いただす検察官。森田被告は、次々と出される質問に丁寧な言葉で答え続けた。

 「お前が大事にしているものに一生償ってもらう」。昨年6月10日午前中、小川さんから被告に送信された携帯電話のメール。検察側は、被告が小川さんに殺意を抱く動機となったと主張した。

 検察側から「どういう意味だと思ったか」と問われると、被告は「特別に意識しなかった。けんかした時に、常に出てきた言葉なので」と説明。弁護側から「大事なものとは家族のことと思ったか」と問われても、「それはない。典子さんは私の子どもが熱を出したときも心配してくれた」とメールに腹を立てたことはないことをアピールした。

 被告は、森田被告が小川さんを殺害したと検察側が主張する時間に小川さんを探し回っていたと主張する。

 「会社近くで2人組の男に襲われたとのことですが」。弁護側が問うと、それまでメモを取るため手元を見つめていた女性裁判員が被告を見つめた。

 「小川さんの派遣会社勤務の社員に襲われたと思う。職場のクリーンルームではずきん、ゴーグル、二重のマスクをするので顔はわからない」。森田被告が身ぶり手ぶりを交えて熱心に説明した。

 検察側の質問では、被告の行動の不可解さを追及する検察官に、被告が言葉を選びながら慎重に答えるやりとりが続く。

 「顔が分からないのに、なぜ派遣社員に襲われたと分かるのか」「断定はできないが、派遣社員だと思う」

 「小川さんを探すとき、すぐに電話すれば見つかるのではないか」「私の車に乗って走り去った典子さんに腹が立ったので」「なら何で探しのか」「心配はしていた」

 男性裁判員は身を乗り出して検察官の質問に聞き入る。別の女性裁判員は時折、みけんにしわを寄せていた。

◆法廷でも慎重さ変わらず

 慌てずに言葉を選んで、意図を確かめるように質問内容を確認する慎重さは法廷でも同じだった。

 記者は昨年6月、逮捕直前の被告を取材した。その時を振り返りながら、被告人質問で答える被告に見入った。

 逮捕5日前、同僚記者と2人で被告の自宅を訪ねた。長めの髪を時折かき上げながら、落ち着いた様子で応対していたが、「小川さんと男女関係にあったと聞いたが」と聞くと、「あんたらには関係ないやろ」と声を荒らげた。長身の迫力にたじろいだ。

 ぶしつけな質問をぶつけられた取材と、法廷での様子が違うのは当然だが、慎重さは変わらなかった。

 被告の殺意を立証したい検察側が、被告をののしる小川さんのメールを挙げ「腹が立たなかったのか」と追及したが、「普段から言われていた」。

 法廷を出入りする度、傍聴席の妻とうなずき合う被告は、すがるような表情も見せた。裁判員はそんな被告の言葉や表情をどう受け止めたのか。裁判の行方をかたずをのんで注視したい。

 (伊藤弘喜)

 

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