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「日本の暗号解読の手がかりに」 しかし、現在の「日本の暗号システム」は「唐」らが考えるほど単純な構造にはなっていないかつて実際に暗号電文の送受信に従事していた元電信官が匿名を条件に解説してくれた。 「暗号電文の組立て、及び解除の『システム』については、電信官しか知り得ず、詳しくは国家機密に関わる事なので申し上げられません。ただ、簡単に言えば、電文に『ソース』(暗号コード)をかけ、それをさらに機械で変換、圧縮して電信室から衛星に飛ばす仕組みになっているのです。 例えば、中国情報機関は、北京大使館や上海総領事館の最上階にある電信室から一日何本の電信が衛星に送られているか全て傍受し、正確に把握している。しかし重要な電文には全て暗号がかけられているから解読はできないんです。 だからこそ中国情報機関は、A領事に暗号の組立て、及び解除の際に必要な『ソース』を持ち出せ、または『システム』を教えろと迫ったのでしょう。ただし戦争中にアメリカなどに次々と暗号を解読され大敗した苦い教訓から、外務省はかなり複雑な暗号システムを構築している。一在外公館と本省間で送受信される暗号電文を全て解読することは限りなく不可能に近い」 しかしその一方で、この元電信官は「この世の中に絶対に解けない暗号など存在しない」というのだ。 「暗号は送り手と受け手の間で必ず解けるように作られている。電文が読めなければ意味がありませんから。 だからA領事から『ソース』の一つ、または『システム』の一部を聞くだけでも、彼らには日本の暗号電文解読の大きな手がかりになるはずです。もちろん、私はかつてA領事と同じ仕事に従事していたものとして、彼が何一つ漏らしていないと信じていますが……」 つまり「電信官であるA領事が、中国情報機関の工作に嵌められたという事実自体が、国家機密漏洩の危機を意味する」(元電信官)というのだ。 元内閣情報調査室長で、外務省の「対外情報機能強化に関する懇談会」の座長を務める大森義夫氏はこう指摘する。 「1974年の在クウェート日本大使館占拠事件を機に、在外公館のセキュリティはかなり進んだ。しかしそれはファシリティ(施設環境)というあくまでハード面のことで、今回のようなソフト面、人的なセキュリティは全くと言っていいほどできていません。 中国や旧ソ連など共産圏の情報機関は、赴任してきた他国の外交官を尾行・行確(行動確認)するなどして『弱点』を掴み、日常的に工作を仕掛けてくる。それを踏まえ、外務省が外交官に徹底した『カウンターインテリジェンス』(情報防衛)の教育をしなければ、第二、第三の『犠牲者』が出ない保証はありません」 だが、一方で、他国の外交官に工作を仕掛けた挙げ句、脅迫によって死に追い込むという中国情報機関の行為は、国際法上、果たして許されるものなのか。 外務省事務次官、駐米大使を歴任、国際法の専門家である柳井俊二・中央大学法学部教授はこう解説する。 「国際法上の一般論として、今回の事案は、ウィーン条約の定める『通信の自由』と『外交官の身体の不可侵』の2点からみて問題です。 接受国は『外交官』である電信官を侵してはならないのは当然で、保護する義務まで負っているのです。 今回の事案では、不可侵権を接受国が侵していることが立証され、違法行為が国の命令など、国家に帰属するものであった場合に、接受国の責任が生じます。 事実の詳細は分かりませんが、日本の外交官が亡くなったのであれば、政府は調査し、立証し、確認することが重要。そして違法行為が国の行為として立証されたならば、何らかの対応をとるべきでしょう」 では、日本政府はA領事が自殺に至るまでの「事実関係を調査し、立証し、確認」したのか。そしてその結果、中国政府に対し「何らかの対応」をとったのだろうか。 A領事の死亡を確認した杉本総領事は外務省本省、北京大使館に連絡するとともに、館員をすぐさま前述の「かぐや姫」に向かわせた。だが、A領事自殺発覚から数時間後には「唐」と「陸」はもちろんのこと、「劉」も、上海市内から忽然と姿を消していたという。 杉本総領事から一報を受けた本省では、A領事自殺の報告は、北島信一・官房長(当時、現OECD大使)から竹内行夫事務次官(当時、既に勇退)、そして当時の外務省の最高責任者である川口順子外務大臣(現参議院議員)へと、その日のうちに上がったという。 「竹内事務次官は、北島官房長に徹底した調査を指示。北島官房長は、A領事が自殺した数日後に伊原純一・観察査察担当参事官(当時、現駐米公使)を長とした『調査チーム』を派遣したのです」(外務省幹部) 中国政府はまともに回答せず 伊原参事官の調査チームは約1週間にわたって館員全員から聴取。同時に情報通信課員らが暗号電文の内容が漏れていないかチェックし、電信システムの“クリーニング”を実施した。 さらに並行して、A領事と最も親しかった館員を本省に呼び戻し、連日の事情聴取を行ったという。 「調査の結果、電信システムに異常はみられないことが分かりました。ただし、万が一のことを考え、暗号電文を送受信するあらゆるシステムを変えました。 さらに上海総領事館以外の中国国内の6在外公館で、館員に対する中国情報当局の“働きかけ”の有無について入念に調査した結果、A領事のケースまではいかないものの、類似のケースが2,3件発覚したのです。 そして伊原参事官の調査チームは最終的に、A領事の自殺の原因が、中国の情報当局の脅迫によることは、揺るがしがたい事実であると結論付けました」(同前) この調査報告は発生時と同様、北島官房長から竹内事務次官、そして川口外務大臣へと上げられたという。では、外務省は中国政府に対し、何らかの「報復措置」に出たのだろうか。 「実は上海市政府の上層部ともパイプを持つ杉本総領事は密かに、この件に関係したとみられる政府機関のトップとNo.2を飛ばすという報復に出たらしいのです。 ただしそれはあくまで非公式なもので、本省では竹内事務次官が『北京の(中国)外交部に公式な抗議をすべきだ』として5月中旬、北京大使館の阿南惟茂大使から当時、外交部のアジア担当副部長だった王毅氏(現駐日大使)に抗議することが決まりました。 ところが王毅氏が突如、病気を理由に入院。このため、北京大使館の堀之内秀久・政務担当公使がカウンターパートである孔鉉佑・アジア副司長に川口外相の名前で、『本国訓令に基づき厳重に抗議する』と申し入れたのです」(同前) ただし、外務省が行った「報復措置」はそれだけだった。自国の外交官が脅迫された末、自殺に追い込まれたにもかかわらず、相手政府幹部への抗議のみで済ませてしまったのだ。 しかもその抗議がいかに形式的なものだったかは、中国側の対応を見れば歴然としている。孔副司長は、堀之内公使に対し、このように応じたという。 「孔副司長は『真相を明らかにせよ』との申し入れに『北京(中央政府)では知りませんでした。しかし調査はします』と答えました。ただ、正直言って、いまだに、まともな答えは返ってきていません」(同前) だが外務省の犯した「罪」はそれだけではない。驚くべきことに、小泉首相を初め、当時の首相官邸は、A領事自殺の事実を全く知らされていなかったというのだ。 小誌が事件発生当時に官房長官を務めていた福田康夫氏並びに福田氏の後任で、外務省が川口外相名で中国政府に対し「厳重抗議」を行った当時の官房長官、細田博之氏に確認したところ、2人はそれぞれ、「本件については一切の連絡・報告を受けたことはありません」(福田氏)、「全然報告を受けておりません」(細田氏)と回答した。 04年5月といえば、翌月に第3回6カ国協議が開かれたものの、小泉首相の靖国参拝を巡って中国政府が日本批判を繰り返し、日中関係は緊張の度合いを増していた時期である。 官邸に報告しなかったことについて、前出の外務省幹部はこう釈明した。 「当時の外務省の最高責任者である川口外相名で、中国政府に対し、公式『厳重抗議』を行ったのだから、それで充分で、何でも首相官邸に報告するのが適切とは考えていません。 また正式に抗議することと、公表することは別の次元の問題ですし、こういうケースの場合、もし我々が『報復措置』を取ったとしても、それを明らかにしないのが、外交上の暗黙のルールなんです」 さらに信じ難いことには、中国政府から「いまだにまともな答えは返ってきていない」(外務省幹部)にもかかわらず、川口元外相は後任の町村信孝・前外相、そして麻生太郎・現外相に、この事件の引継ぎすら行っていなかったというのだ。 小誌が町村前外相、麻生現外相に確認したところ、2人とも驚いた様子で「全く知りません」(町村外相)、「知らない」(麻生現外相)と答えた。 取材から逃げ回る川口元外相 自国の外交官が他国の情報機関に“殺された”のに、然るべき報復措置も取らず、さらには首相官邸に報告もしないで、この事件を国民から隠す。川口元外相をはじめとする外務省首脳部が犯した「罪」は万死に値する。 A領事自殺事件の隠蔽に関わったとされる当時の外務省首脳部に見解を質した。 監察査察担当参事官として現地調査を行ったとされる伊原純一・現駐米公使は小誌の電話取材に対し、 「確かに上海に出張し、1週間程度の調査を行いましたが、調査の内容、結果については監察査察室に聞いてください」と事実関係を認めた。だが、その伊原氏に現地調査を指示したとされる北島信一・現OECD大使は小誌の取材に対し、このように答えたのだ。 「え~と? 自殺とおっしゃいました? ちょっと記憶にありませんけど……。上海総領事館の方ですが? ちょっと覚えてませんねぇ……。本当に記憶にないんで、東京(外務省本省)に聞いてくださいよ」 非業の死を遂げたA領事のことを思うと、許し難い対応と言わざるを得ない。 当時の上海総領事で、最も事情をよく知っている杉本信行氏も「病気入院中のため、取材をお受けできません」とのことだった。 では、外務省トップとNo.2は何と答えるのか。 「確かに上海総領事館の職員が亡くなられたことは事実です。しかし、それ以上のことについては個人情報で、ご家族のこともありますので、お答えを差し控えさせていただきます」(竹内行夫・前事務次官) 「ご遺族のご意向があるので、コメントするのを差し控えさせていただきたい」(川口順子・元外相) 確かに、遺族の悲痛な心情は察するに余りある。しかしA領事は、遺族にとって大切な家族であったと同時に、日本国民がその血税で、代表として他国に遣わしている「外交官」でもあるのだ。「遺族感情」や「個人情報」を盾に、事実を隠蔽し、国益を大きく損なう危機を招いた「罪」を正当化することは許されない。 しかも川口元外相に至っては、小誌が事務所、自宅に書面や電話、さらには直接訪問するなど、再三再四にわたって取材を申し込んだにもかかわらず、5日間にわたって逃げ回り、挙げ句の果てに締め切り直前に寄せてきたのが、前述のコメントだったのだ。 小誌の取材にさえ逃げ回るような元外相名の「厳重抗議」に、彼の国が一体、どんな痛痒を感じるというのか。その証拠に、小誌が駐日中国大使館を通じて、中国政府に取材を申し込み、「A領事が貴国情報機関による脅迫によって自殺に追い込まれたという事実」について質したところ、以下のような回答が返ってきた。 「ご質問の件ですが、所謂『A領事に対する中国情報当局者の工作』は全く存在しておりません」 外務省首脳部、そして川口元外相よ。この中国側の回答をよく見るがいい。 相手国が情報機関を使って工作を仕掛けている以上、外務省だけでは到底対抗できないのは明白である。麻生外相、そして小泉首相が今後、断固とした措置を取ることを期待したい。(引用終わり) │<< 前へ │次へ >> │一覧 │ 一番上に戻る │ |