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[22765] 【習作】異世界って何?おいしいの!?【トリップファンタジー&最強物】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/10 14:03
はじめまして、『らむねこ』ともうします。

 もっぱら読み手専門だったのですが、ほかの作家様方の作品に影響され
 投稿しようと思いました^-^;
 初投稿ですのでぜんぜん自信なんてものは持ち合わせてはおりません。
 ですので練習を兼ねてこの場で投稿させていただきます。
どうぞ、よろしくおねがいします。

 追記、テスト板で投稿していたのですが。
     友達にチラシの裏でもいいのでいいじゃないか!がんばれ!
     と励まされたのでこちらに移ってきました。
     ドキドキです。


【※この駄文の注意点です】
用法用量を守って正しくお読みください。
 
   1.異世界トリップです。              (浪漫ですよね!)
   
   2.最強物に設定しています。          (最強物大好物です!)

   3.更新速度は遅めです。             (申し訳ないです。)
   
   4.もう文法とかは色々絶望物です。        ( ノД`。)・゚。
   
   5.ぶっちゃけ、らむねこの自己満足です。    ( ^ - ^ ;)
   
   6.誰得かと聞かれたのなら自得と答えます。   (`・ω・´)キリッ!
                                 _,._
   7. サブタイトルに意味はほとんどありません。  (・ω・ )
  
   8.大作の更新の合間、気晴らしにでも読んでやってください。



[22765] 01.異世界って何?おいしいの!?【それが、私の日常。】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/03 23:30
━━━━━ 異世界って何?おいしいの!?第1和 prologue ━━━━━


ーーーーーーピピピピピピピッ!
       ーーーーーーピピピピピピピッ!
              ーーーーーーピピピピピpッ! バシッ!!


「はいぃ・・・はいはいッ、今起きますよ~・・。」

20xx年 7月26日 5時30分

こう書くと世紀末な感じだが、そんな事を言ってる場合じゃない。
目覚まし時計のスイッチを探し黙れッ!と言わんばかりにはたく。
これで起きないと乙女の部屋に兄の襲来を許してしまうのだから。

私の名前は 有馬さつき 15歳 星見ノ丘高校1年
父譲りのストレートヘアーに母譲りの容姿、自分で言うのも何だけどルックスは良いと思う。

家族構成は、新婚か!ってほど仲の良い両親・たのもしい兄達・やさしいじいちゃん。
普通の一般家庭だと言いたい所だが、ちょっと他所のご家庭と違う所がある。
馬鹿でかい道場と『 無間派有眞流 』なんて書かれた馬鹿でかい看板に
離れを改築した門弟の方々の寮。
まぁ、それ以外はごく普通の一般家庭です。

私は、昨晩洗濯しておいた胴着をハンガーから下ろすとそれに着替え始めた。


――コンコンッ!

「おい、さつき起きてるか!」

「ぁ、おはよう。
 後、今開けたら殺すから!」

「ん、おはよーさん。
 お前の貧弱ぼでぃなんか興味ねぇよ、下で待ってるから早く来いよ。」

「ちょ!待てぇ、開けんでもやっぱ殺すぅ!」

「ははははッ!早く来いよ!」

今のは私の次兄で 有馬雅利 (まさとし)18歳 同じ高校に通う3年。
なんだかこの辺りの族をまとめているらしい。
粗暴だが・・・、まぁ、やさしい兄だ。なんだ・・・まぁ少しは認めてやらんでもない。

「でも、やっぱり許せん・・・。」

「ん、おはようさつき。」

「あ、おはよう継兄ちゃん。」

着替えを終え部屋を出ると、2階から長兄の 有馬継臣 (つぐおみ)21歳
私では入れなさそうな大学に通っている。
何時もアルカイックスマイルをたたえているやさしい継兄ちゃんだが、キレると羅刹となるのを私と雅にぃは知っている。

継兄ちゃんと雅にぃに対する報復手段を論じながら道場前へ向かった。
道場前で何食わぬ顔で現れた雅にぃへ継兄ちゃんとツープラトンを決めた後、清々しい気分でストレッチを終了。

今日も暑くなりそうだと、兄や門弟の方々と恒例のランニング。
その後、じいちゃんを交えての朝稽古。

じいちゃんの名前は 有馬平八 。
何か2~3回、回転した後ジャンピングアッパーしそうな名前。
私と母には胴着を着ているときは厳しく、それ以外では甘々なじいちゃんで
まぁ例外は、じいちゃん曰く母を誑かした父と我が兄達。
父さんとじいちゃんの乱闘は近所では有名だし、兄達はいつもしごかれている。
実力は本気の兄達がタッグを組んでしても道場外に吹っ飛ばされたのは記憶に新しい、正直私もじいちゃんが地に膝着く姿が想像できない。
継兄ちゃん曰く「核でも撃ち込めば何とかなるかも知れんな・・・・。」そうこぼしたのを聞いたことがある。

「ようし、いい時間やな~。最後は継臣とさっちゃんの組み手でおわろか。」

じいちゃんの指名で私と継兄ちゃんが道場の真ん中で構える、雅にぃと門弟の方々は正座で周りを固めた。

「おねがいします。」

「おねがいしますッ!」

継兄ちゃんは師範代、雅にぃは皆伝の実力で、私も今年になって皆伝を取得した。
だので、継兄ちゃんには勝てないけれど、雅にぃにはそこそこの勝負まで持っていくことが出来るようになった。
私の実力をじいちゃんは、身長に恵まれていたらと嘆いていた。
そう、私の身長は155cm・・・・。私は力より速さを重点とした技、そして威力とリーチの為蹴り技が主体なのです。
目下のところ身長を160代には持っていきたいのだ!
その為、朝・昼・夜と牛乳を飲み続けているのだが、一向に伸びない・・・。

(と、ヤバッ・・・持ちこたえてるけどそろそろ キツィ・・・・仕方がない。)

「オラッ!!」

裂帛の気合で左足の下段蹴りを継兄ちゃん軸足に放つ、私の本気の蹴りはじいちゃんも目を見張るものがあるといっていた。
継兄ちゃんは寸で軸足を回避、
でもこの私の蹴りは布石、起死回生の蹴りといえど単発ではまず継兄ちゃんには効果が無い!
ッ今!蹴りを途中で地面に当ててそれを一歩として全体重の掌底で継兄ちゃんの体を死に体にする。
継兄ちゃんがたたらを踏んだ! もらった!

「ハッ!」

私の本命右後ろ回し蹴りが!

「ッ!」

!!―――――――――




            フワッ・・・・ありゃ!?



                        ――――――――――――――――――――ヅダンッ!!!!!



 炸裂しませんでした~~~・・・・。



「ほっほっほっ、勝負アリやな。」

「ッ大丈夫か!?さつき!」

「・・・・・・・・げふッ・・・ぅ・・・ぃたい・・!」


うぷッ、モドセソウ。
ぎりぎり受身をとれたのが僥倖だった。投げの入りすらわからなかったから。

「拙いながらも受身をとれてたから大丈夫だろ。
 それより兄貴、最後さつきの蹴りギリだったんじゃね?
      まぁ、あれに反応する兄貴もたいがいだと思うけどよ。」

「そうだね、ぎりぎりだったよ。おかげで返した時は手加減なんて出来なかったし。」

感心したような雅にぃに何時もの微笑みをたたえた継兄ちゃんが答える。

「さっちゃんは、やっぱり持久力がまだまだ足らへんね、
   最後はちょっと勝負に焦り過ぎたところがあるから。
     攻めの幅はいい感じで増えとるみたいやね、そっちはその調子でええよ。
           これからの課題はスタミナやね、スタミナが増えると手数の方も増えるやろうし。」

「・・・げほッ・・は~い。」

やっぱり持久力か~・・というか継兄ちゃんあの構えにもならない状態から投げとか
何処の2回行動だ、天○魔闘の構えか!



―ガラッ・・・。

「みんな、ご飯ができましたよ!」

道場の扉を開けて私達を呼びに来たのは、有馬さおり
私達兄妹の母でじいちゃんの娘。
 私達を生んだとは思えない若さで身長は149cm、
そんな母の身長を眺めては自分の身長に対する焦燥感がつのる毎日。
私と並ぶと姉妹にしか見えない。
 どちらが妹とかはいわずもがな。

 お父さんと夫婦で並ぶともう、もう犯罪です。

「お父さん達も、ご飯が冷めちゃうので早く来てくださいね。
          さつき、先にお風呂入っちゃいなさい~。」

「おう、さっちゃんはもう終わってええよ。
    継臣と雅利とわしらは最後にちょっと仕事があるから。」

「おい、ジジィ!
  最後って、さつきと兄貴の試合じゃなかったのかよ!」

「え・・・?    お前等、わしの可愛いさっちゃん
            を投げ飛ばしといて唯で終われるとおもっとんのか?」


「えぇ!!そんな理不尽なッ!」

「って!?投げたのは兄貴じゃ、って!兄貴ッ俺を盾にするんじゃねぇ!!」

「じ・・・じゃあ、お先に・・・、ご・・・ごゆっくり。」

「ちょ!さつき待ってッt!」「あッ!きたねぇぞ!さつき!!」

「ほぅれ、構えんかぃ・・・・滅殺ッ!!」

「「ヒィィ!!」」



いつもながらご愁傷様です・・・・。

道場から響く怒号と叫び声を聞きながら私は母と母屋に向かうのだった。



to be next time 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日常を後1話過ごしたのち異世界へすべり落ちる予定です。(`・ω・´)キリッ!

主人公設定(※ちょっとネタばれ注意)
    
  有馬さつき   
 
  身長155cm・体重は内緒らしい。
 髪はカラスの濡れ羽色の様な黒髪ロングヘアーで、サイドポニーにしています。
 サイドポニーと聞いて
な○はさんを思い浮かべたあなたは極太の砲撃でハートを射抜かれてしまいます。
刹○さんを思い浮かべたあなたは後ろからハートを真っ二つにされてしまいます。

 ※ネタでFate風に仕上げてみました()はトリップ時

     筋:C-(EX【数値化不可能】)
     魔:E-  
     耐:C+(EX【数値化不可能】)       
     幸:B-(E-)
     敏:B+(EX【数値化不可能】)

     保有スキル 
     
     ・心眼(真)  A
     ・勇猛     A+
     ・仕切り直し  C
     ・カリスマ   A+    

トリップ後チート少女の出来上がりですです、残念ながら魔砲も魔法
 も使うことは出来ません。
魔術や無○の剣製なんてのも使えません、でもこれは私が使いたいですね。
 個人的には○の財宝ですが・・・・。
さっちんには魔法適正はないのでEなのです。
後は、事故とトリップのせいで幸運値が下がってしまいました。
異世界トリップしてしまった浪漫を考えると幸運値は高くないといけないのかな?



[22765] 02.異世界って何?おいしいの!?【明日から夏休み・・・?】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/03 23:30
━━━━━ 異世界って何?おいしいの!? 第2和 prologue ━━━━━


そろそろ兄達も地獄から生還を果たすだろう、私もリビングへ向かう。

「さつき、おはよう。」

「父さん、おはよ~。」

有馬貴春(たかはる)
190近い身長に兄達にそっくりな、いや兄達がそっくりなのか。
まぁ、そっくりな顔に肩までかかるストレートヘアーどこぞのモデルかって容姿で
それで外科医だっていうんだからもてる筈だ。
そんな父は母にべた惚れで
もともと財閥の御曹司なのに、周囲の反対を押し切り、弟の夏彦さんに家督をゆずって
有馬の家の婿養子になってまで結婚したほどだ。

「いてぇ~・・・、しこたま殴りやがって。
                おい、大丈夫かよ兄貴・・・?」

「ぁ~・・・最初に肩をはずされたのが不味かったね。」

今日もみっちりしごかれたようで、
兄達も這う這うの体でリビングにやってきた。

「お前達もおはよう。」

「父さんおはようございます。」

「あぁ、おはよ。」

「継兄ちゃん、今日こそは一本とれた?」

「一回良い所までは持っていけたんだけどね、潰されたよ。」

「まったく、だらしがないな・・・。
    不意打ちで義父さんの腕の一本や二本捥ぐ気概ぐらい無いのか?」

「てめぇでやれよ!あのジジイ絶対人間じゃねぇ・・・。」

「当たり前や、生涯現役 これがワシの座右の目やしな。」

お茶を啜りながらドカッと椅子に腰掛けた。
じいちゃんも着替えた様で、胴着から作務衣に変わっていた。

「おはようございます、義父さん。」

「なんや、まだ家におったんか。
        早よ、さおりとさっちゃんの為に馬車馬の如く働いてこんかい。」

「やれやれ、これはとんだご挨拶ですね。
        残念ながら今日はお休みなのですよ。いや残念です、本当に。 」

「減らず口を、この前の肋骨9番10番だけじゃ足りんかったみたいやな・・・。」

「そろそろ、引退したらどうですか?・・・人生を。」

「なんゃt「はい!そこまで!母さんも帰ってきたし朝ごはんにしよう!」

「ッ・・・!」「ク!」

二人の喧嘩を止める、母さんに喧嘩が見つかると雷が落ちる。
母さんの雷は私達にも飛び火するので侮れない。
最強の戦闘能力を誇っているじいちゃんも溺愛する母さんには勝てない。
まだ悪態をついてるがこの場は収まったみたいで安心。
まったくこの二人は放っておくとすぐに喧嘩を始めるんだから。

「あら、みんな待っててくれたの? 食べていてくれても良かったのに。」

「う、うん、でもみんな今集まったところだから。」

丁度、母さんが門弟さん達のご飯を離れに運び終えたようで、リビングに帰ってきた。
喧嘩を止めるタイミングもギリギリだったようだ。
えぶないえぶない・・・。



そうしてさわがしい朝食をすまた後
私と雅にぃは、継兄ちゃんの車に乗せてもらい駅のロータリーで降ろしてもらった。

「じゃ、いってきます。」

「いってくる。」

「あぁ、いってらっしゃい。」

継兄ちゃんのいつもの微笑みに見送られ、私達は改札を抜けた。
電車を待っている時、雅にぃは売店で買ったゼリー飲料を銜えながら私に話しかけた。

「そういや、さつき。今日予定あるのか?」

「?」

「修理に出してたバイクが帰ってくるから。乗せて帰ってやろうか?」

「ぅ~ん、でも今日終業式でしょ?
      明日から夏休みだし。みんなと遊びに行くかも・・・・・。」
 
「あんま遅くなるなよ、心配した親父とジジィに付き合わされるのは御免だからな。」

「はいはい、わかってますよ~。ちゃんとメー・・・・・・ッ!!」

刹那、目の端で見えた光景に頭で理解するより早く体が先に動いた。

「さつきッ!!」

もう電車が来る・・・、間に合わないかもしれない!
 
        ッ駆ける!
 大丈夫!
      まだ、        間に合う!

ぁ、良かった手が届いた。子供をホームの方に思いっきり放り投げる!!

子供の体と私の体の位置が入れ替わり、子供は追いかけてきた雅にぃが受け止めた。

安心して見届けた私を悲壮な表情の雅にぃが・・・・。

あれ、この後どうなるんだっけ?あ・・・・電車だ、電車が来るんだった。

あ、そうか・・・・私、死ぬんだ。
     ごめん雅にぃ・・・。 みんな、。

 あ~ぁ、痛いのはいやだなぁ・・・ フワッとする浮遊感に身を委ねながらそんな事を考えた。







・ 

・・

・・・

・・・・

・・・・・


「・・・・・・・・・・」

あれ、?
痛くない?
え、なんで?
ありゃ?私、もう死んだ・・・?

何時までたっても覚悟した激痛が来ないので不思議に思い、
 おそるおそる目蓋を開けてみれば理解不能な状況下におかれていました。
右を向けば武器を構えた5人のファンタジックな格好のお兄さんお姉さん達、心なしかびっくりしてますね。
左を向けば・・・・なんというか、


              はい、ドラゴンです。


「え?あれ・・・どういう状況?どっきり?」



その日、私こと 有馬さつき は異世界の扉を我知らずたたいてしまったようです。


to be next time 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やっと、滑り落ちてくれました。(´・ω・`)=3
次々更新される作家さんは偉大ですね~。



[22765] 03.異世界って何?おいしいの!?【瞼を開けると異世界でした】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/03 23:29
『あ…ありのまま 今 起こった事を話すわ!
  私は電車の前にとびだして目をつぶって来るべき衝撃に備えていたと
              思ったらいつのまにか遺跡?みたいな所の真ん中にいた!
   
     催眠術だとか超スピードだとか
        そんなチャチなもんじゃあ 断じてない。
            もっと恐ろしいものの片鱗を味わった・・・・。』
 


・・・・・・・・落ち着け!自分ッ!
一瞬、雅にぃがリスペクトしている漫画の一文が頭をよぎった。
夢か?とも思ったのだけど、辺りの臭いや埃っぽさ、
   それに人とドラゴンの存在感は夢であるはずが無い。

大剣を構えた戦士風の男の人と魔術師風のお姉さんに杖を持った神官風の女の子
そして、弓構て矢を引いたまま止まっている男の人
後は、見間違えで無ければ、きぐるみ?デカイ斧を持った虎の顔をした人!?
みんな一様にびっくりして目を見開いている。
すごくファンタジーな世界で、別にこれが天国って状況でもなさそうだ。
最終的に行き着いたのが私のこの結論がこれだった。

「え?あれ・・・どういう状況?どっきり?」


━━━━━ 異世界って何?おいしいの!? 第3和 ━━━━━



『,onotime imakemakumakono!!』

うぁ。
私の一言を切欠に時間が止まったかの様名な間が動き出してしまった。

『ESUMETAFUTAYU、MA-KOSEYUEYUAMA!! shiokoma tema!!』

『tenoino,anoteno!!』

『,afu !!』『,INO sema・・・、kunokame,ame!!』

「え?なに?」

『,chi!!』『sunnnnnnnn!!』

神官風の女の子が何かを呟いた瞬間
広場の真ん中にいた私の周りを風が舞った。
戦士風の男の人と虎の獣人が咆哮と共にドラゴンへ踊りかかった。
ドラゴンの尻尾を避けた弓矢を構えた人がお返しとばかりに矢を放つ。
あっけにとられていたら。

『asema,ama! shimaeno,ama esufuameonofukeme!! 』

私は切羽詰った感じの魔術師風の女の人に腕を引っ張られた。

「あ、すみません!邪魔ですよね。」

『ima,afusema!!』

「ぇ、こっちですか?」

言葉が全然解らない。
今の言葉はニュアンス的に今のは『こっちだ!』って感じた。
全然、英語などとも違うみたいだ。
有馬家は、外国人の門弟さんや知り合いがいるので英語以外にも接する機会が多々あるのだけれど。
よく聞いてみてもまったくどれとも符合しない。

『,iyu、SHINOTAYUKEMA inotenoesufuame!! 』

「すごい・・・。」

それに今の、魔術師風の女の人がドラゴンの炎を氷で打ち消した。
いきなり、紙を破いたと思ったら中空に魔法陣が描かれ、そこから出たと思考は出来た。
でも、理解出来ない。もう完全に魔法としか思えない。
私自身こんな状況でもパニックにならないのを褒めてやりたい。
結構図太い神経をしているようだ。

なんて考えているうちに気持ちも落ち着いてきた。

暴れるドラゴンとそれと戦う5人組み
そして、この場の殺伐とした雰囲気。
間違いなくこれは現実で起こっていることなんだ・・・。
どっきりだとか夢だとか言ってる状況じゃ無いって事も肌で感じれた。

『・・・,ono~fu,!!』

尻尾の一撃で床が飛散!

それを防いだ戦士風の男の人は足が止まってしまいドラゴンの一撃を貰ってしまった!
大きめのツーハンドソードでカバーしたとしても威力と体重差はカバー出来ない。

吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられて崩れ落ちてしまった。

『IYUTANOYUEYU!!』

拙い!神官風の女の子が気をとられてしまった、
弓矢の男の人が矢、お姉さんが魔法で注意を引こうとするが間に合わない!

「あぶない!」

『!!』

ドラゴンの爪が女の子を襲った。

 ―――ズシャ!

刹那、飛び出した虎の獣人が女の子を庇って地面に転がったり
魔法と矢の援護を受けて安全圏まで無事退避した。
      
女の子の無事を確認した後、武器を構えるのだけど
 無事ではすまなかったようで鎧が裂けて左わき腹から血を流していた。

とりあえず、この状況は歯がゆい。
何とかしないと、何か、私に出来ることは何か!





side Wizard



アグニ砂漠のはずれで発見された古代文明の遺跡調査とその学者先生の護衛。

それが私達に課せられたクエストだ。
まず王都で宮廷学者という荷物を受け取る。
そして、アグニ砂漠入り口にある商業都市カイエンに向かう。

大陸イザヴェルにおいて貿易の中心地点であるカイエンでなら
揃わないアイテムも無い、準備も楽に整えることができる。

パーティーの面子も最高の状態で、

幼馴染の獣人 バルド、

バルドの同僚で友達の傭兵の クラウス、

クラウスの相方で神官の シェリル、

バルドとクラウスの同僚でレンジャーの オーギュスト、

そして、魔術師の 私 。

全員がBクラス以上の熟練者だし、何度も組んだことがあるので実力も把握している。
アグニ砂漠踏破も楽にこなせるし、出てくる魔物も相手にならないだろう。

 最近アグニ砂漠を行き来する商隊を騒がせている 巨大砂蟲 でも出たなら割に合わないだろうが。
今回のクエストは遺跡調査だ、相手にする必要はない。

遺跡に着いたからも遺跡自体は発見された時に
ギルドがあらかた調べられているので罠や魔物も少ないだろう、
A級レンジャーのオーギュストがいる事だし十二分に用心は出来ている。

後は、私自身がこのクエストを受けた本当の理由。
 私の研究の為の遺跡調査だ。

およそ8000年前に滅びた王国 『 エリュシオン 』、
 
天帝ゼピュロスが支配した黄金の国。
魔法とは別の力を使っていたとか、星すらも支配したという説もある。

私の手に入れた碑文に今回の遺跡を当てはめてみると、
発見されたのはエリュシオンの『道』を祭った神殿ということだし。
なんにせよ、私にとっては渡りに船だったわけ。


予想したとおり、遺跡の中心部まではさしたる出来事も無く到着できた。

商業都市カイエンまでの移動途中に盗賊とエンカウントだとか、
アグニ砂漠では砂鮫に襲われたくらいで、
まあ、そのときの学者のニコルさんの錯乱状態が一番骨が折れたかしら、
実際は、バルドに殴ってもらって静かにしてもらったんだけど・・・。
遺跡内部でも罠なんて無かったし、住み着いていた魔物も
死霊やガーゴイルなどはおらず、
 ヒューマンキャッチャーの亜種(馬鹿みたいに大きい蜘蛛ね)や 鎧蠍程度だった。

「・・・ん? 行き止まりみたいだな。」

バルドが立ち止まり辺りを見渡し呟いた。

「ここが中心部か・・・、すばらしい。」

ニコルさんが部屋の中心部の床鏡を調べ始めた。

「おい、爺さんあんまりいじるよ。」

「すごい広いですねぇ~。」

「気をつけろ、まだ全部調べたわけじゃない。」

オーギュスト、シェリルに続きクラウスも続く。
私は部屋を注意深く観察し始めた。

「で、お目当ての物だったのか?」

「ぇぇ、多分神殿で間違いないわ。
          ついてきてくれて、バルドありがとう。」

「お前のわがままは今に始まったことではないからな。」

広大なドーム状の大広間、その中心部の床鏡から部屋中に描かれた紋様。
儀式的な何かが行われていたのは確かだ。
ただ、魔法とは違うようだが。

「で、あのじいさん調べているのが祭壇か?」

「いいえ、この部屋が自身が祭壇なんじゃないかしら。 
           多分、ニコルさんが調べているのが・・・」



―――グラッ・・・・・。


揺れた?

「起動したじゃと!」

耳を疑った。

『 ホールの起動を確認・・接@エラー・・・接続を続行、エラー
     
  別シークエンス移行・・・ホール内の○△Σ・・ガガッ・・
                    
  違法□続を発○・・・ガードを起Θ確・・引き続Ωホ・ルのψ索を・・・・。』


「起動したですって!?」

ノイズまみれの声が途切れた瞬間。
すさまじい魔力の渦が部屋の中心部、
ニコルさんの頭上に現れ、それが姿を現した。


   ドラゴン !!


悪魔、不死者に比べれば総魔力は劣るものの
単純な力、耐久力、特異製なでは他の追随を許さない。
世界の頂点に立つ超越種。


「こ・・こんなっ!ぎゃぁッ!!」

現れたドラゴンに私の投げナイフとオーギュストの矢で対応するも
むなしくニコルさんは潰されてしまった。
依頼料金がパァーじゃないの!
ってそんな場合じゃない! 

30mとか50mクラスの神代の龍族でなくてよかった、とはいえ大きさは14m位で。
ドラゴンからしたら小ぶりな方だといっても、この面子で勝つのはしんどいだろう。
それに、逃げるにしても遺跡周辺は砂しかない。
こんなことなら楽なクエストだからってスクロールや魔薬ををケチるんじゃなかったわ!
生きて帰れたらこれを教訓としよう・・・。

ドラゴンが低く体を構えた。

「くるぞッ!!」

クラウスが合図する。
ッ決心するしかないみたいね。

シェリルが加護を詩い始め、
私は詠唱と同時に保険の為、スクロールにも魔法を組み込んでおく。
後は破るだけで発動するんだけど、持っている数も少ないし値段が高いのよ・・・・。

やっぱり、ドラゴンの名前は伊達じゃないわね。
それとも魔法に耐性があるのか中級魔法じゃ傷一つつかない。
詠唱に時間をかければ何とかなるかだけど、
さっきからブレスを封じるための氷精の魔法で手一杯だ。
クラウスとオーギュストも頑張っているけど鱗に阻まれている。
バルドは流石獣人、重たい戦斧の一撃はドラゴンにダメージを与えている。

バルドの攻撃をいやがり、ドラゴンが口に炎をためて吐かんとした瞬間、

『・・・・10340  △□Σルの接続を確認、起動します・・。』

「!」

部屋の紋様が眩い光を発し、


――――――――――――ガシャッァァン!!

          
               世界が割れた様な音が響いた。

side end


to be next time 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

しばらく時間を置いて読み直し
     再度修正する予定です( ノД`。)・゚。

次回、さつき無双!!予定ですw

途中の異世界言葉の翻訳ですが。

『ッなぜ子供が!!』

『シェリル、オーギュスト!!援護を!!』

『わかったわ!』

『っち!!』『 風よ・・。守って!!』

『ちょっと、ボサッとしてないで!』

『こっちよ!』

『く、バルドかわして!』 

『なに!』

『クラウス!』   って感じです(´・ω・`)



[22765] 04.異世界って何?おいしいの!?【獣人ってイイですよね♪】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/07 00:06
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

side バルド


やれやれ、間一髪だったな。

しかし、腹を裂かれたか・・・。
やれやれ長期戦は無理か・・・。

クラウスの大剣、ルビアの魔法とオーギュストの矢。
これだけの攻撃を喰らって平然とは・・・。

『さすがは、ドラゴンといった所か。』

『バ、バルドさん!すみません、私のせいで・・・・。』

『気にするな・・・。』

シェリルの方は、大事無いようだ。

『バルド、まだいける・・・?』

『しばらくは・・・、な。』

『わかったわ。皆、少し時間をかせいでくれないかしら。』

禁呪にも精通し、アカデミー時代から【暴雷】なんて二つ名を貰っているくらいだ、
威力の程は、折り紙つき。
ここは、ルビアにかけるか。

『長くは、もたんぞ・・・。オーギュスト援護は任せたぞ。』

『ったく!帰ったら奢れよ、ダンナ!
           聞いたな!クラウス行けるかぁ!』

『あぁ・・・、まかせろッ。』

目に付き刺さった矢をへし折り、ドラゴンがこちらに目を向ける。
矢傷はすでに塞がりかけている。
まったく、規格外だな。

『みなさん、来ます!!』

『行くぞッ!ぅうおおおおおぉぉぉッ!!』

クラウスが大剣で踊りかかり、シェリルが大地の守護を詩い始めた。

『ちっくしょ~、完全に赤字だぜ!とほほ・・・。』

オーギュストは火薬矢を弓につがえ覚悟を決めたようだ。

我は、自分の野生を少し開放する。

『ここが正念場か、我モ行クトシヨウ・・・。』

『それじゃ、皆、死ぬんじゃないわよ!!』


ルビア ガ詠唱ヲ 開始シタ。


side バルド end.~




━━━━━ 異世界って何?おいしいの!? 第4和 ━━━━━





魔術師の女の人の周りに魔法陣が浮かび上がり、何か呪文を唱え始め。
全員が魔術師の女の人を守るように闘っている。

矢が刺さった瞬間爆発してよろけるドラゴン、大剣の乱撃!
中でも獣人の男の鬼気迫る狂撃乱舞!
神官の女の子の唄でダンスを踊っているみたいだ、


でも、だんだん押し返されている・・・。


弓矢の男の人が声を上げる。

『no~~~、afuiyuesemasyu!!
TAMUsuno kumayu、esufuonokofutamekenotime,!!』


ドガッ―――ズガガガッ!!


『『MA-KOSEYUEYUAMA!! 』』

戦士の男の人と神官の女の子が叫ぶ!

『iyuemakono,!!』

「ぁ!」

ドラゴンのシッポの一撃が天井と柱を突き崩し、弓矢の男の人が倒壊にまきこまれた!


ドラゴンは炎を吐き、腕や尻尾を鞭の様に振り回し続ける!

『kosenono~~~~~!!!』

戦士の男の人と獣人の男が猛攻を凌いでいる、が。

その時、わき腹の傷が効いてきたのか、獣人の男の速度が落ちてしまう!

刹那!


ドカッ!『,!』――――ズシャーーーーッ!

獣人の男は尻尾を直撃!

『iyu,! esufukuno,ano,! TAYUSHIFUNO~~~,!!』

フォーメーションが解けてしまい、ドラゴンの進行を許してしまう!
狙いは、魔法使いの女の人!!
ドラゴンは、理解しているんだ!!     
戦士の男の人の猛攻空しく体を弾き飛ばし、
  
『!』
 
ドラゴンが尻尾を振り下ろした!!

状況に、魔法使いの女の人が顔を歪ませる!



「うあああああああああぁああぁあぁぁあっぁ!!!」




あれ!?何で私飛び出しちゃってるの?


―――ずどンッ!!!「ぐッ!!」

うわ、鈍い音・・・・。

げげ、立っている地面陥没しちゃってるんですけど・・・!?  
グゥ・・・??、あれれ、確かにちょっと重いけどそんなでも無い?


ありゃりゃ?覚悟したのだけど、如何して無傷・・・。
         
????????????????で、でもドラゴンの一撃ですよ??

『no、no~no・・・!』

「!」

意識が覚醒する、考えるのは後だ!

ドラゴンさん、攻撃を受け止められたのが応えたのか絶賛フリーズ中。

これは、

チャ~ンス!!

「隙ありィィィ!!! もらったぁあぁっぁ!!」

喰らえ、私の十八番!!

   飛び後ろ廻し蹴り!!!


――――――――どッコンッ!!!!!


思いっきり振りぬいた!!
今まで出した技の中でもずば抜けてキレがいい!!
もう、これはRPGでいうところのクリティカル!そう会心の一撃だ!!!

って、ちょ!デカドラゴンがキリモミ状態で壁に突き刺さった!?
え?どして!?やっぱり、おかしいでしょ!!

『ma、maka、makunoanoeme,!!』

魔法陣がエメラルドに輝き、

『INO-SPIZ !!
     eyushimeabmetema
        emaesufuame、onokofusunotanome!!!』

目の前の空間が歪み帯電、

「え?」

何も無いはずの空間に稲妻がとぐろ巻き始める!!

『 no~maseyokemesno~emefuesufuonoenofu、
  amainokomesenotamayu!!! 』
            
         
         「!」


         瞬間、
        
          ・  
           
          ・  
           
          ・ 
     
       世界が白に染まる。
        
           
           
          

 
           
           
           
            
    
       そして、、、轟音!

      
   

  ドドッズシャァァァァァッァァァン!!!!!!



「きゃぁぁ!!」

耳がつぶれるかと思いました・・・。

しかし、魔法使いのお姉さん・・・・、

   これは、オーバーキルだったのでわ・・・(汗)


to be next time            
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

難産でした・・・・。( ノД`。)・゚。

次回、さっちん世界を食べる(嘘w


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


みんなのエキサイティンぐ異世界語翻訳機能。

『ああぁぁ、ちくしょう!!
        火薬筒はもう、品切れだぜッ!!』

『『オーギュスト!!』』

『クソがッ!!』

『ガルルルァッ!!』

『ッ!』

『くッ!しまったッ!ルビアァァァッ!』

『!』

『あ、あなた・・・!』

『お、おま、おまたせッ!!』

『風の原精霊、吾が声に応じよ!!
             そして、すべてをなぎ払え!!!』

『あの世で反省しなさい、トカゲやろう!!! 』


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作者はミニピンとイタグレ、ミニチュアダックスと共に暮らしています。
犬耳猫耳たまりません♪



[22765] 05.異世界って何?おいしいの!?【異世界での日常!?】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/10 14:18
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大陸イザヴェル南東に位置する、
 
 傭兵国家 ヴィーグリーズ

国家が傭兵ギルドを立て、彼らを傭兵として雇い、
仕事を与えるという姿勢を取っており、
中立国家であるが報酬と引き換えに自国以外の国または、
組織から依頼があれば、ヴィーグリーズから雇い貸し出すという形をとっている。
力がすべて!という傭兵達による国。
治安がお世辞にも良いとはいえない、
そんな国の商業大通りにそれた小道にその宿【アリマ亭】はある。

時刻は夕食時、客のかき入れ時にしても、
客席はすでに満席で、客の笑い声や喧騒が響いており、
バタバタと忙しく走り回り接客している褐色の肌で長い耳を持った女性と、
キッチンでセカセカと料理を作っている学生服女の子がいた。

「サツキちゃん、肉じゃがとラブ酒くれや!」「マスターこっちも!ラブ酒!」

「了解~ちょっと待ってね。ユン、ラブ酒をよろしく!」

「ラブ酒おまたせしました。「ぉう!ありがとよ!」」

入り口のベルを鳴らして、魔法使いの女と獣人、軽装備な男が入店し、
カウンターに近づく。

「やっほ~、席あいてるかしら?」「・・・。」「ようッ、ガキんちょ!」

「いらっしゃい、ルビアさんにバルドさん!

           中2階席を使っちゃってください。」

「おいッ!俺は無視かよ!!」

「・・・・ん?あ、いたんですか?オーなんとかさん?」

「オーギュストだよ!!」

「あ、そうそう!それ!」

「それ呼ばわりかよ!!」
    



━━━━━ 異世界って何?おいしいの!? 第5和 ━━━━━




私がこの世界に零れ落ちて大体3年の時が流れました。
本当に色々なことがありました。
それはまた別の機会で話すことといたしましょう。

最初から苦労しっぱなしでした。

何よりもまず言葉が通じない!!
これが最悪だった。

私の頭はそんなに性能がよろしくないので、
本当に苦労し通しで・・・。

本当に幸運だったのは、ルビアやバルド達に会えたことだろう、
住まいの手配、言葉の勉強、この世界の事、常識etc、
本当に苦労をかけっぱなしだった。
ルビア達に言わせれば「命の恩人なんだから気にしないで♪」って事だけど、

剣や魔法、そして魔物が跋扈するこの世界。
彼女達と最初で会えなかった事を想像すると不安に潰され狂っていただろう。
最初のころは、よく夜中に突然目が覚めて不安で何も考えられずに涙した。

この店【アリマ亭】は、1年前に開店することができた。
どうせファンタジー世界にやってきたのだ。
帰る目処が立つまでは、この世界を堪能してやろうと
ファンタジー世界によくある宿屋兼バーをつくったのだ。
元いた日本で趣味だった料理を生かして
あっちの世界の料理を再現し、酒のアテとして出すようにしたら。
繁盛してしまってこの盛況ぶりである。
よろこんで食べてもらえるのはうれしいけれど、この忙しさは勘弁して欲しい。


ガシャ!

ん?またか、懲りないなぁ・・・・・。



――――ガシャン!「んだと!こらッ!!」「ぁ!死にてぇのか!」
      
    「ギャハハハハハァ!!」「やっちまえぇ!」「殺せっ!!」


まったく何度言ってきかせても。
学習しない・・・。
こいつらのオツムリは、いや、乙無理か・・・。

「ったく。こら!!うちの店では喧嘩はご法度よ、外でやんなさい!」

「あ?うるせぇ!ガキがすっこんでろ!!」

「ん?おい、良く見るとなかなか、イケテルジャねぇか。
         こいつらをぶっ殺した後でたっぷり可愛がってやるぜ!」

「そうだぜ、お嬢ちゃん!ぎゃはははッ!!」


―――――ざわッざわッ・・・・!!


 店内の空気が水をうったように静まり返る。


「私は、喧嘩をやめろって言ったのよ。」

喧嘩の片割れはクローディア傭兵団の奴らか、
何回か見かけたことがある顔なじみだ。
今も哀れむような顔をしてこいつらをみている。
こいつらに喧嘩を吹っかけられたってところかな?

「お嬢ちゃん、俺らの事しらねぇのか?
           血塗れの砂傭兵団」

「?」

最近、街で新しく団を作った新入りか・・・?
だとしたら、私の事を知らないのもうなずける。

「まあいい、強いものが支配するのがこの街のルールだ!
      本当ならバラしてる所だが、今日は気分がいい。
         安い授業料でよかったなとりあえず寝とけ!!」

ボキィ!!


―――――どよッ!!

   
 店内に動揺が走る!

「ぁ~あ、正当防衛成立ね・・・。」

「いてぇ!!手が、手がぁぁぁ!!手ぇがぁぁぁぁああ・・」

まず、一匹。
でこピンで沈める!

「あんたは、ム○カか!」

ずどんッ!!!

「いギィ!!」 

Oops、机を巻き込み壁際まで吹っ飛んだ。
お次は、剣を持ち出したか・・・。

「てめぇぇえぇ!!兄貴に何しやがった!!」

「でこぴん、子供のころやらなかった?」

「ふざけんなっ!ガキだと思って下手に出てりゃいい気になりやがって!」

袈裟懸けをなんなく指で挟み、使い捨てカッターの様に割ってやる。
 
「な、馬鹿にゃ!」

「いつ下手にでてたのよ、
     この・ば・か・ち・ん・がッ!!!」

「ギャニャァァッァァァァアアア・・・・・プルプルプルッ・・・」

「私に傷をつけたかったら神器クラスのスレイヤーでも持ってくることね!」

アイアンクローで万力の様にギリギリッと締め上げ、
気を失った辺りで床に転がしておく。
さて、後一匹・・・。

「燃え上がれ、纏い付け呪炎よ!!」

「ッ!!」

―――ッボボ!!

私の体が魔法の炎で燃え上がる!!
魔法の制御、魔法行使のスピード、なかなか腕の良い魔法使いみたいね。
普通の人間ならあっという間に焼け死んでしまうだろう。

「ぎゃはははっ!もえろ!もえろ!!
         逆らうからこうなるんだ!!ぎゃはぎゃはっ!」

そう普通の人間ならばね・・・。
私は手で炎を払う、唯それだけ。
炎は一瞬で掻き消えてしまう。

「もう、制服じゃなくって、
   普通の服装だったら服だけが燃えていたところじゃない!」

「ひぃ・・・!!」

魔法使いに向き直る。

「ひぃ・・ゆゆ、ゆるしてくれ!出来心だったんだ!!」

私は心からの笑みを浮かべてゆっくり歩み寄った。

「悪人は、みんなそう言う、修正だッ!!さつき、心の俳句♪」

その夜ヴィーグリーズから海の方角へ高速で
   (ブッ)飛んでいく怪しい人影を多数の人々がが目撃しそうだ。



さてさて何故、私の体が某戦闘種族の様に常軌を逸しているのか。

ルビアのお師匠さん曰く、詳しくはわからないが
世界自身の重さが関係しているらしい。
私達の世界はかなり容量が大きい世界で、私たち自身に
掛かる世界からの負荷もかなり大きかったのでは?とのことだ。
私自身も望外な気?的な物を有しており、
私があちらの世界の負荷から解放され、
負荷の少ないこちらの異世界に転移した為の無双状態らしい。
まぁ、憶測に過ぎないって事だが、あながち間違えていないと思う。
持ってきた私物にも適用されているみたいで。
クラウスの持っていた(過去形)ツーハンドソードを
カッターの刃で叩き割ったことは忘れようとしても忘れられない。
抜け殻になったクラウスが見るに耐えなくって、
カッターはクラウスに手渡した。
100~200円程度のカッターを持って嬉々としてお礼を言うクラウスが涙を誘った。


やれやれ、あらゆる方面で人間離れしてしまった。
この3年間生きてこれたのは、
この能力があってこそですし良しとしましょう・・・。

「ふぅ~、まぁこれで少しは懲りたでしょ。」

「しっかし、相変わらずの非常識さね。」

「手加減もちゃんと覚えたみたいだな、重畳重畳。」

バルドさん達も騒動を見学していたみたいだ。

「殴った対象がボンッ!と破裂とか、
 私達がであったの頃じゃないですか。流石に、大丈夫ですよ!
 それとも、フルパワーだ!120%中の120%!とか言っちゃうんですか!?わたし!?」

角刈りでグラサンの似合うウルトラマッチョなタフガイが、
雑魚妖怪を殴った光景を電波で受信してしまった。

「あなたの話は、時々理解できないわ・・・・。」  

あわてて雑念を取り払う!

「気にしないでください、こっちのはなしです。」

「そ、そう?」

「サツキ!!はやく手伝ってください!「ユンちゃん!エール3杯追加!」
    「こっちもくれや!」はい、ただいま!        
         あぁ!もう、サツキ。やはり人を雇いましょう・・・。」

「だ、だねぇ~・・・、確かに最近きついねぇ・・・。」

「ようサツキ!また来たぜッ!」「ヤキソバはまだか!!」
「がはははははッ!」「飲めッ!!」「おい!ガキんちょ!ラブ酒だ!」
「エールをくれ!」「タコヤキってのはまだ?」
「こっちにはラブ酒とクゥーエル酒を頼む!」「ユンさん付き合ってください!」

「さっき頼んだ肉じゃがry      
     「うがぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「うわ!サツキ落ち着いてください!!」「うわわあ!さつきが切れた!!」
「ゲッ!!」



―――ガラガラ!!ガシャン!!




人魚の月.7.火の日

業務日誌

今日も平和でしたマル!



to be next time 

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チート能力説明の回でした。
 



[22765] 06.異世界って何?おいしいの!?【和の心】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/10 07:46
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今日も無事、お昼時をやり過ごし、
人魚の月も中ごろでそろそろ暑くなり始めたな。と私は額の汗をぬぐった。
もうこの時間帯から夕方頃までは忙しくならないだろうと
コップの水を一気にあおり机に向かった。

ヴィーグリーズは、あちらの世界で言うところの地中海性気候に似ている。
気候が似れば生態系も似るのか、
オリーブに似たムギュやブドウに似たラブがヴィーグリーズの特産で、
この地域の一般的な料理にも使われて、もちろん私の料理にもよく使われている。
そんな訳で、

“気候がにれば特産物も似るのかもしれない、それなら!!”

という曖昧な夢を捨てきれずに世界を旅したのはつい此間のことだ。
その苦労あって、いろいろな食材と出会い、そして食した結果、
あちら味は再現可能である!!ということがわかった。

とくに念入りに探したのは醤油と味噌なのだけれど。
残念ながら醤油、味噌は無かったけのだけれど、それも作ってしまえばいいよね!
って事で、北大陸で発見した大豆に似た芋ハポンで作製。
これがまた思った以上に良く出来てしまい、私の料理の強い味方となってくれた。

知り合いの料理長に懇願され味噌と醤油おすそ分け
それと、レシピを数点伝授したのだけれど。
やはり和の心、味噌と醤油を使いこなすのは難しいようで、
この間街で顔をあわせたとき寝不足からかフラフラしていた。
確かに、こちらの料理も美味しい物は美味しいのだけれど
あちらの世界のように洗練はされていない。

だので、私が作った料理が美味かったみたいで、
最初は友達だけだったお客さんが、友達の知り合いと増え、そのまた知り合いと拡大。
すごくうまいらしい!
懐にやさしい値段らしい!
見たことも無い料理を作ってくれるらしい!、
なんて噂が広まったおかげからか、
片手間のつもりで始めた【アスマ亭】が予想以上の軌道に乗ってしまった。

暫くはユンと二人で頑張っていたのだけど。
やはり、二人では対応が出来なくなってしまうほど忙しい。
そう、‘片手間’であって本業ではないのだから!
これは、このままでは過労でどうにかなってしまう、なんとかしなければ!
その打開策として先日、従業員を増やすことを決めたのだ。

絵を描くのは嫌いでは無かったので、
私は従業員募集チラシを製作を始めたのだ。


ここまでの出来を確かめる為に、チラシを遠くから離れて眺める。

うん、何処もおかしい所は無いし結構可愛く出来ているなと
一人納得していると、店の呼び鈴が来客を知らせてくれた。




━━━━━ 世界って何?おいしいの!? 第6和 ━━━━━




「久々ですね、サツキ。」

「あ!シェリル、お久しぶり。
     あれれ?旦那は一緒じゃないの?」

「っちょ!だ・だ。旦那!?
   さ、サツキ!わわあ、わ、私はあいつの事なんてて!!」

「?あいつって誰のことかぁ~しら?」

ニヤニヤ・・・。

「○×*△□!、、、、/////ッ!!!」

シェリルは一瞬でゆでだこ状態になってしまった。
ちょっと融通の利かないところはあるけれど、
まっすぐで素直さは、シェリルのいいところだ。

もう少し楽しみたいけれど何か用があるようだし
ここいらでやめておきますか。

「それで、今日はどうしたの?
      昼はとっくに過ぎているし何か用があるんじゃない?」

「ぇ?えぇ、今日はサツキにお願いがあって来させて頂きました。」

「お願い?」

話しが長くなりそうなので、私は向かいの席をシェリルにすすめて、
二人分のコーヒーを入れた。

「はい、ク、クラウスにはそのための準備を任せてあるんです。」

まだ赤くなっているシェリルに苦笑してしまう。

「で、私にお願いなんてかなり危ないことに頭を突っ込んでるんじゃない?」

「い、いえ。 まだ確証は無いのですが・・・。」

シェリルの話しを簡単に説明すると。

ヴィーグリーズのお隣、アース神を祭る神聖国家 神都アースガルズ。
険しい山々を背にその城は聳え立っている。
そのまた東の辺境、霊峰スィメールの麓に件の古代大聖堂は存在する。
街道はいまだひかれておらず、
神都が出来上がった為、とっくにうち捨てられた聖堂なのだけれど、
とても建物内部が広大で建物自身がしっかりとしていて価値歴史もある大聖堂
道なき道、魔獣を退けて、
祈りを捧げに行く僧や信徒そして、聖堂見物目的で足を運ぶ人は結構多いらしい。
そして、その古代大聖堂に向かった信徒から

“東の古代大聖堂で魔の力が以上に高まっている!”

との報告が教会へ報告された。
古代大聖堂は、辺境にもかかわらず人が集まる、
街道や聖堂をちゃんと整備すれば国の資金源になるのでは?との話しもでており。

すわ何事かと教会は、古代大聖堂を封鎖し探索隊を組織した。
この異常な事態に探索隊は、大司教クラスの神官が指揮していたし、
神都アースガルズが誇る僧兵、そして今回はなんと魔法ギルドの協力を得ており。
万全を期して組織され、現地に向かわせたのだが、

まぁ、テンプレ通りと何というか・・・。
探索隊の行方がわからなくなってしまったというのだ。

行方のわからなくなった探索隊を指揮していた神官がシェリルの従兄弟で、
その従兄弟のバレットを救出する力を貸して欲しいというのが今回のお願いだ。



「ん~。心配なのはわかるんだけど、教会はその後の対策をとっていないの?」

「教会とギルドでいつも通り・・・。
       この間にも手遅れになるかもしれないのに!」

「ぁ~・・・、やっぱり揉めちゃいましたか。」

魔法ギルドと教会の組織としての相性は水と油そのもの。
今回、魔法ギルドとあっさり協力関係を結べたと聞いた時は驚いた。

「本当は、バルドさんとルビアさんにお願いしようと思ったのですが・・・。」

「あの二人は一週間前、討伐依頼で東方へ向かってしまった・・・。」

「はい、信頼出来る実力を持った人は他にいませんでしたし。
 そして今回は、私の独断です。教会からの支援もありません。
 あのレベルの探索隊が行方を絶ったのです、絶対に簡単にいくはずもありません。
 ・・・それで傭兵を引退したサツキにお願いするのは心苦しいのですが。
 お願いします!サツキ、バレット兄さんを助ける為に力を貸して下さい!」

シェリルは涙を浮かべながら頭を下げる。
まったくこの子は・・・。

「頭あげてよ、シェリル!
 私とアンタは友達じゃ無いの?友達だって思ってたのは私だけ?」

「そ、そんな!私だって!」

「そう、だったら頭あげて。友達が困ってたら力を貸すのは当たり前よ!」

「それじゃ・・・。」

「ビヒモスが来ようとドラゴンが来ようと任せておきなさい!」

「ぇぇ、頼りにしています。本当にありがとう・・・。」

「さて、今日はもう店じまいね・・・。
 
 シェリル、閉店作業手伝って。
 先に入り口の看板をしまって、ドアプレートを裏に返しておいてくれる?」

「はい!」

店内のお客さんの会計を先に済ませ、シェリルと閉店作業を進める。
その時、

「サツキ、ただいま帰りました。」

「おかえり~。
  それと、いらっしゃい、クラウスも一緒なのね。」

ユンがクラウスをつれて帰ってきた。

「あぁ、ふむ。その様子だと話しは終わったみたいだな。」

「ぇぇ、サツキは力を貸してくれるそうです!」

「【アールヴヘイムの救国の魔人】が一緒か、それは心強い。よろしく頼むよサツキ。」

「その名前はやめてぇー!!」

くぅ~ぁぁぁぁッ!この国では二つ名がつくのは実力の証なのだけれど。
現代っ子の私からすると痛た恥ずかしい!!
誰だ!そんな名前をつけた奴は!!
そんな私になれたもので、シェリルとクラウスは顔を見合わせて笑った。

「あの、全然話しがみえないのですが・・・。それに何故閉店作業を・・・?」

そんな中、事情を知らないユンだけがオロオロしていた。





to be next time 



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私は二つ名とか大好きです。
14歳病を患っていてすでに末期段階でもう手の施しようがありません。
最近何か邪気眼なんかも使えそうな気がします。(マテw


    



[22765] 07.異世界って何?おいしいの!?【ピクニックだッ!】
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/13 23:30
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北部大陸に向かう人々に立ちはだかる山の名前をギュルヴィ山という。
人々は皆、ギュルヴィの山道を使い山を越えようとはせず、
ギュルヴィ山を迂回する街道コースをとる。
その山は、【誑かしのギュルヴィ】とも言いわれており
古の神魔戦争の折には、北大陸へ行軍する勇猛な巨人族の王スルトですら入るのを躊躇ったといわれている。

北部の寒帯地方特有の背の高い針葉樹林を主にした深く暗い森、そこに生息している狡猾な魔獣。
そしてなにより誑かしたる所以。マナを含んだ恐ろしいほどの一面の濃霧である。
神魔戦争時、巨人族の行軍が作ったと言われる山道を一度はずれ迷い込んでしまえば、
すぐにでも狂わされる方向感覚。
迷い、霧で魔獣に何時襲われるか解らない恐怖、
純粋で指向性の無い濃厚な纏わり付く様なマナによって、焦れば焦るほど侵食される精神。
ギルドでC級以上の実力者複数人のパーティー以外は、入山は出来ないように管理すらされている。
そんなギュルヴィ山道、迂回路を行くよりかなりの日数を短縮できるのである。

そんな危険な山の道を一台の幌馬車が進んでいた。
馬車の御者には戦士風の男、その横で神官風の少女がマップを広げた。

「クラウス、そろそろ山頂付近ですのでクローソーの像が見えるはずです。」

「この霧の中だ、そういうわかり易い目印があると助かるな。」

「さっきの魔獣達の襲撃のせいで暗くなってしまいますね、どうします?」

「お前の従兄弟がどうなってるか分からん状況だ。
 サツキ達の意見を聞いてからだが、
 急ぐに越したことは無いだろう、そのまま休憩を挟んで進むことになるだろう。」

その時、霧の向こう側から巨大なシルエットがあらわれた。

「これは、すごいな・・・・。」

「うわぁ~・・・・♪」

クラウスとシェリルから感嘆の溜息がもれた。
クローソーの像、巨人族が開戦前に“良き運命への導き”を信じて立てたものだと言われている。
全長が30m近く、山の山頂から北大陸全体を眺める様に建てられていた。
そのクローソー像の遥か彼方、ユラユラと輝く太陽が地平線に沈んでいくのが見てとれた。

「・・・・・・そろそろ、サツキ達を起こしますね。」

シェリルは、御者台から荷台へ乗りうつった。





━━━━━ 世界って何?おいしいの!? 第7和 ━━━━━




まわりは墨をぶちまけた様な暗闇で覆われていて進むのは困難な状況なのだが。
幌馬車は3つの光を纏って、かわらず山道を下っていた。

「ユン、コーヒーが入ったよ。」

「ありがとうございます、サツキ。」

ユンは、コーヒーを一口喉に流し込みカップをサツキに手渡した。

「私はもう少しかかるかと思ったんだけど、予想以上にはやく到着できそうね。」

「ええ、山中で魔獣に襲われたのも予想の範囲内でしたし、
 迂回路を通らずギュルヴィを超えている事でかなりの時間短縮になりました。
 進み具合からしてそろそろ、霊峰スィメールが見える頃ですよ。」

「この暗闇じゃ見えそうも無いわね。月の光すら届いてないじゃない。それに、・・・・・。」

本来ならば、隣にいるユンですら視認できないほどに真っ黒。
高い木々の間を敷き詰めるように這っている霧の影響から、
一般で使用している様なランプの光では効果は無いとシェリルが話していた。
ユンの光の精霊魔法とエルフの感覚がなければ馬車を進ませる事は出来きなかっただろう。

「それに?・・・この声の事ですか?」

「うはぁ~、やっぱり空耳じゃなかったか・・・。これ、何?」

そう、闇の向こうから時々うめき声や咽び泣く声にしか聞えない様な物が聞こえるのだ。
私はこの手の話がどうも苦手なのに、こんな場所でこの状況とか・・・・。

「ギュルヴィに吹きつける風が樹木の間を通り抜けた時の音だと聞いたことがあります。
 
 ・・・・・・・実際、この辺りも神魔大戦時の合戦場所ですし、
 散った巨人族の慟哭だとも言われています。あながち間違っていないのかもしれませんね。」

「ちょ、や、やめてよ!」

「クスクス・・・、すみません。」

全然悪びれた様子も無く笑うユンを睨むが、効果は期待できそうにないわね・・・。

「まったく・・・・・・風の音か、幽霊の正体見たり枯れ尾花ってね。」

「なるほど、面白い表現ですね。」

「私の世界のことわざよ。」

「サツキの故郷の言葉はどれも面白いですね。」

瞬間、馬車前に人影が現れ、そのまま透けて消えてしまった。

「「 !!! 」」

手綱を引き急停車させるが止まることが出来ず、数メートル進んで停車した。

「・・・消えた!?」

「ええ、私も消えたのを見ました!」

「どうした、何かあったのか!?」

「イタタタ・・・。」

仮眠をとっていたクラウスと頭をさすったシェリルが荷台から顔を覗かせた。
ぶつかった感じはしなかった。辺りを見まわすけれど何も無い。
でも何かがおかしい・・・、私がそう感じた時。
突如、異常を察知したのかユンが声を上げて、それにシェリルが続いた!

「静か、静か過ぎる!?生き物達が逃げている!?」

「くッ、皆さん、気をつけてください邪な気配を感じます!!」

何時の間にか森の音と「生」の気配が消えて、禍々しい気配があたりに広がり、

「厄介だな・・・。この視界不良な闇で戦うのか?」

「別に戦う必要はないわ。注意を払って先に進みましょう。」

「でもユン。騎獣達怯えて立ち竦んじゃってない?・・・って、あれ??」

あれ何?布?

騎獣の横にいつの間にか襤褸を纏った人が立っていた。
襤褸が騎獣に触れようとゆっくり手を伸ばした、刹那!それが私の中の警鐘を激しく打ち鳴らした!

「ユン、騎獣を進ませて!!早く!!」

私の見ている物を目で追い、状況を察したユンが騎獣に鞭を放った!

「ッチ!怯えていないで、サッサと走りなさい!このッ駄馬が!!」

痛みで騎獣は走り出し、ぎりぎりのところで馬車も走り始め事なきを得た。

「あ、あれは、レイス!?」

「シェリル、奴が何かわかったのか?」

「えぇ、あれはレイス・・・。ファントムやスペクターより上位の存在で、生者に仇なす強力な死霊です!
 触れた者の生命力を吸い取る能力に魔法、そして、何より恐ろしいのが、
 レイスに殺されたものもまたレイスとして目覚めてしまうという事です。」

「っで、どうする?逃げ切れるならそれに越したことは無いが。
 レイスは不死者だろ?もし戦うとなれば今の俺の武器じゃ倒せないぞ。
 かといって、目的地に着く前に聖水は使いたくないんだがな。」

聖水は武器に纏わせて使う。
クラウスが持っているのは、光の神ルーフの加護を得た一級の聖水。
不死者への効果は絶大だ!
しかし、私達がこれから向かう大聖堂で何が起こるか解らない。
確かに、ここで聖水を使ってしまうのは得策ではないわね。
アンデッド系は単純に殴れば何か効果はのぞめるのだけれど、死霊の類は通常武器の効果が望めない。

「シェリルの光の加護があれば戦えるわね。」

「サツキ、この暗霧の中であれと戦うのはお勧め出来ません。
 わざわざ相手の有利な舞台で戦ってやる必要はありませんよ。」

「ええ、ユンさんの言う通りです。それにあのクラスのレイスは存在しているだけで周りの生を吸いとりますし、
 仲間を呼びます。ここは、逃げ切りましょう!」

私が荷台の後ろを振り返ると、やはりと言うか襤褸を靡かせてこちらを追いかけてきた。

「げッ早!、やっぱり追いかけてくるわね・・・!」

「マズイな・・・、追いつかれるぞ。」

「シェリル、お願いします!皆、しっかりつかまっていて下さい!こちらも速度を上げて引き離します!!」

ユンが騎獣に鞭を入れる、
馬車が蹄のリズムを辺りに刻みながら風を切って暗い山道を突き進む。
この霧と闇の中、このスピードで馬車を走らせるのはユンにしか出来ない。

シェリルは、胸の前で手を組んで祈り始めた。
すると、まわりの闇が後退をはじめたかの様にあたりを暖かい光が包み込んみ、。
組んでいた手を頭上に掲げたその時、手毬ほどの大きさのオーブが現れた。

「無事、光の精霊ウィル・オ・ウィプスを呼び寄せることが出来ました。
 この光の守護は、あのレイスにも効果はあるはずです。」

「効果はあったみたいね。」

「ああ、一定距離を保って近づいて来ないな。
 奴も近づいてこれないみたいだし、このまま引き離せるんじゃないか?」

「ええ、油断はできませんが、レイスはこれ以上はこちら側へは近づく事が出来ません。」

――― ッ!

「気をつけて、あいつ何かするつもりだわ!」

とっさに微量の魔力の行使を察知を出来たのは、運やたまたまでは無く私が異質だから。
あちらの世界では、魔力なんてものはまったく存在しなかった。
テレビやお話では霊能力者や超能力者の話をよくやっているけれど、私は1mmほども信じてはいなかった。
こちらの世界に来てからは、元いた世界には異能を許容する容量が無かっただけで、多少は力を持った人はいただろうと言う話も聞けた。
元いた世界は存在しない力を認めていないので、
力を持った人たちもテレビでやっているほどの力しか使う事が出来なかったのだろうと思う。

何が言いたかったのかというと、あちらの世界出身の私には、
あちらの世界では存在しなかった魔法行使に必要な魔力の流れが、いや魔力そのものが存在しなかったからこそ異質として感じ取れる。

「まずッ!」

空間が放電したと感じた瞬間、稲光が馬車に走った。

「雷系の魔法ッ!?私からはなれて!!」

私はとっさに皆を守るように前に出て、剣を鞘から抜き放ち構えた。
刹那、私向かって雷が落ちる。

ッズシャァァァン!!!

「ッきゃぁ!」

ドカンッ!!!

「「「サツキ!」」」

「わ、私は、大丈夫!そ、それより馬車の火を消さなくっちゃ!」

向こうで生まれた私の体は、魔法で行使された力は効きにくい。
私が避雷針の役割を果して皆は事なきを得たけれど、馬車の後部に火が移っている!
それに精霊の効果も薄れてしまったようだ。

「せいッ!ふッ、はぁぁぁ!」

クラウスが大剣で燃えた幌部分を叩き壊し、矢に何かを塗して弓につがえレイスに向け構えた。

「まったく、中級魔法をそのまま受け止めるなんて、本当にサツキは規格外すぎるな。  
 レイスの魔法は厄介だ、これも取っておきたかったが仕方がない!」

――――ッボォ!

放たれた矢がレイスに刺さり、瞬間燃え上がった!

「賭けをした時、オーギュストからまきあげたサラマンダーの燐粉だ、光の加護ほどじゃないがなかなかだろう?」

続けて矢を放つが警戒していたレイスは、悉く流れるような動作で避けてしまう。

「シェリル、私のスローダガーに光の加護を付けれない?」

「申し訳ありません、加護の類は命ある者にしか付与することは出来ません。
 加護を受けた人の手を離れてしまえばその武器は加護の効果も離れてしまうのです。
 バルドさんが持っている戦斧のような、武器自身が加護を得ている物は、
 力を認めたとか、何かしらの理由で力ある精霊や神の類が加護を与えたからです。」

「そっか残念・・・。」

「みんな、レイスの恐気に釣られて雑魚が集まってきたわよ!!」

ユンがいち早く気づき声を上げた。
闇の向こうから何かが近づいて来る。
それは頭蓋骨が青白い炎を纏った様な物体で、ついに馬車に併走する様に並んだ。
そして、ひとつふたつと数を増やし始めた。

「ファントム!彼らもまた生者に害をなす存在です。気をつけてください!」

「く、寄るな!」

一際馬車に近づいたファントムをクラウスが矢で応戦する。

「“風よ、我が眼前の敵をあまねく斬り払え!!”」

シェリルが手をかざすと風が渦巻いて風の刃を形成した。

『ギャァァァァッ!!』

風が切り裂き、矢は刺さると燃え上がった。
ファントムは次々と消え去っていく。
その時、私は辺りをみまわした。
え?レイスがいない!?

「レイスがいない!気をつけて!!」

暗霧で見えないけれど、風を切る音が聞こえる!
近い!来る!!

「!」

闇の中からレイスが飛び出して来た!!
シェリルを守るために前へでた私の首をレイスに?まれてしまった。
瞬間、焼けた様な痛みが走った!

「ぐッううう!!!」

「サツキ!あぐッ!」

シェリルが助けに入るが払れ御者台あたりまで吹っ飛ばされた。
クラウスの方は襲い来るファントムの抑えで手一杯だ。
体の力が抜けて行く様な感覚に囚われる。

「この!!」

―‐ぐしゃ!!

え!?

『ぎゃっがあがああああ!!』

レイスの両腕が拉げた?悪霊系不死者の体って掴む事って出来たの?
なんて戸惑っていると、レイスは拉げた腕をかかえ体を丸めて闇の中へ飛び出した。

「けほッ、コホッ!?」

シェリルが私のほうへ駆けつけた。

「無事ですか!サツキ!!」

「掴まれた首が痛かったけれど、もう平気よ。」

「奴らは退いたのか・・・。」

「みたいですね。ファントム達も同じく退いてくれたみたいです。
 サツキ・・・、本当に心配しましたよ。」

「心配かけてごめんね、ユン。」

「しかし、なんだってサツキは奴を掴むことができたんだ?」

「恐らくサツキが気を纏ったからでしょう、気とは魔力とは別のこの世に存在する純粋な無色の生命の力とでもいいましょうか。
 私達も気を内に秘めています。人一人が内包している気の量はごく微量なんです。
 『非常事態に直面したときに出る思いがけない力』位の認識ですね。
 外部から取り入れることはできるのですが、扱いが難しくそうとうな修練を積んだ一部の熟練者でもなければ
 戦闘で使うことなんてできませんよ、それを使おうとする者は数少ないです。
 私が知っている気を使って戦うなんて荒行をしているのは、【剣聖】位のものでしょうね。
 使いこなしていると言っても、ココぞという所でしか使えないようですが。
 サツキの場合は今は抑えていますが、世界に干渉するほど桁外れの気を内封していますし・・・。
 レイスに掴まれても無事だったのも、攻撃が通じたのもそのおかげですね。」

「・・・・・・。」

「ま、まぁ、サ、サツキさんのトンデモは今に始まったことじゃないですし・・・。無事でよかったです!」

「さぁ!みんな、そろそろギュルヴィを抜けますよ。」

ユンの説明を聞いてクラウスが呆れ顔で私を見ている。
ちょっと、何よそのありえないわ見たいな顔は!!
それにシェリル、まったくフォローになってない!!

この辺りまで山を下ると霧が薄れ始めて、
馬車が木々の間を抜けて崖の山道に差し掛かったときには消えてしまった。
そして、目の前に一際高い山が聳え立った。

「霊峰スィメール・・・。」

「やれやれ、何とか無事たどり着けたな。」

「ええ。・・・バレット従兄さん無事でいて。」

「・・・。」

その時、山の間から日の光が覗いた。
日が段々と上がっていきあたりがオレンジ色に染まりはじめる。
日の出に照らされた馬車は、無事にギュルヴィの関所を越えた。





to be next time 



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今回もまた難産でした。                      _,._ 
ぐはぁ、おもってた以上にながくなってしまいました。 Σ(lll □ )ノノ !!!!!
しかし、世界に干渉するほどの気・・・途中でDB思い出しました。
次は大聖堂に移りたいと思います。

読んでいただいた方おつかれさまです&ありがとうございました^-^ノ



[22765] 人物紹介です。
Name: らむねこ◆f673ad49 ID:0f3824dc
Date: 2010/11/11 21:29
※注意!!
 登場人物の紹介をしていこうと思います。
 いづれネタばれを含みだすやもしれません。
 

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異世界にお住まいのみなさん


・ 有馬さつき (15→18)
 
  星見ノ丘高校にかよう学生。
  なんの因果か異世界に滑り落ちてしまう。
  3年の月日がたち現【アリマ亭】店主。
  
  こちらの世界に来て身体能力が改造コードを使ったかの様にチート化
  二つ名【アールヴヘイムの救国の魔人】の名は有名
  この作品の主人公。

・ ルビア・G・エルダーキング (26)

  魔法の名門エルダーキング家の出。
  エルダーキング家は侯爵の位
  自由奔放な性格、何者にも囚われない。
  家の反対を押し切りフリーの傭兵として働いている。
  魔法の実力は言わずもがな【暴雷】の二つ名付。
  
・ バルド  (25)

  戦斧を武器として使うヴァナ出身の虎の獣人。
  落ち着いた性格で普段は優しい性格の男。
  獣人だけあって身体能力は人のそれを凌駕する。
  獣人としての衝動を開放することで能力のブーストが可能。
  ルビアとは幼馴染。

・ クラウス・フォン・ユーピター (25)

  ユーピター家の出で、実家は伯爵の位
  正義感の強い性格で親とそりがあわず、
  家を飛び出して傭兵家業で稼いでいる。
  武器はツーハンドソードで
  自国の騎士団で修練した剣で
  傭兵としての戦い方をするオールマイティタイプ。 

・ シェリル・クリストファーソン (22)

  アース神に仕える神官。
  神都アースガルズの教会に所属。
  どのアニメや漫画にも一人は登場する
  真面目子ちゃん、クラウスに片思いしている。
  風と光の精霊術と加護の詩が得意。
  クラウスとペアを組んでいる。

・ オーギュスト・ドレーク (29)

  ガラが悪く、
  態度や言葉は軽薄だけど実力はA級のレンジャー
  武器は弓矢、パーツ、トラップ、で戦うトリッキータイプ。
  面倒見が良く、なかなかのお人よし。
  ただ、キャラクターのせいで理解されない不憫な人。
  ある意味チームのムードメイカー?
 
 
・ ユン  (27)   

  クーデレ(笑
  ある事件からさつきと共に生活をするようになった
  ダークエルフのお嬢さん。
  武器はダガーのトゥーハンド。魔法も精霊魔術も両方使える万能タイプ
  サツキに心酔していて、時々言動が怪しくなるときがある。

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地球・日本にお住まいの方々


・ 有馬継臣  (つぐおみ)(21)

  有馬家長男。
  家を継ぐ事が決められており、平八に武を叩き込まれた。
  普段はアルカイックスマイルが絶えない優男。
  キレた時は表情が180度変わるらしい。

・ 有馬雅利  (まさとし)(18)

  有馬家次男。
  シバかれる毎日が嫌で家出したことがある。
  その時街でからまれ喧嘩になり、
  ずるずると族との抗争に発展して勝利。
  根性があるのかないのか解らない子

・ 有馬平八

  関西出身で関西弁を話す、
  さつきとさおりを溺愛するじいさま。
  多分、パンチで地震を鎮めることができる。
  このじいさまの暴走を止める事が出来るのはさおりとさつきのみ
   
・ 有馬貴春  (たかはる)

  外科医で有馬家の大黒柱。
  貴春も剣道を修めていて結構な実力者。
  妻さおりとはいまでも新婚カップル並にべったり。
  義父の平八とは犬猿の仲。

・ 有馬さおり   

  合法○リ(マテw
  有馬家と有馬道場のマスコットキャラ。
  
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