こんにゃくゼリーで窒息死した兵庫県内の男児(事故当時1歳9カ月)の両親が製造元のマンナンライフ(本社・群馬県)に対し、「商品に欠陥がある」などとして製造物責任法(PL法)などに基づき約6240万円の損害賠償と製造差し止めを求めた訴訟の判決が17日、神戸地裁姫路支部で言い渡される。こんにゃくゼリーは、寒天などの代わりにこんにゃく粉末を用いた食品で、崩れにくく口の中でも溶けない。乳幼児や高齢者の窒息事故が相次ぎ、過去にも企業責任を問う訴訟があったが、いずれも和解し、判決は初めて。
訴状によると、男児は08年7月、凍らせたミニカップ入りゼリー「蒟蒻畑(こんにゃくばたけ)マンゴー味」をのどに詰まらせて脳死状態となり、約2カ月後に多臓器不全で死亡した。両親は(1)寒天やゼラチンのゼリーよりも硬く、弾力性が強い(2)のどをふさぎやすい大きさ(3)吸い出すと、のどに詰まりやすい(4)いったん気道にはまると、除去が困難--と指摘する。
マ社は「餅よりも危険性が低く、食品として通常の安全性を備えている」と反論。凍らせて食べたことや、大人が見ていなかったことを指摘し、過失相殺も主張している。
消費者庁把握のこんにゃくゼリーによる窒息事故は94年以降54件(うち死亡22件)。最新の死亡がこの事故で、発生の2カ月後に国民生活センターの公表で発覚した。マ社は翌月、製造を休止し、包装袋の警告表示を大きくするなどして2カ月後に再開した。
一方、EU(欧州連合)や豪州、カナダなどでは、内外の事故を受けてゼリーへのこんにゃく使用を禁じ、米国は製品の大きさなどを規制した。日本では、管轄官庁がないことが09年の消費者庁発足の一因となった。消費者庁は今年9月、安全指標づくりを始めたが、危険性が「餅やアメよりも高い」とする同庁と、「アメと同程度で餅に次ぐ」とする国の食品安全委員会の見解が対立し、足踏みしている。判決は指標の行方にも影響しそうだ。【山川淳平】
毎日新聞 2010年11月14日 9時33分(最終更新 11月14日 10時15分)