2010年9月16日 13時1分 更新:9月16日 13時20分
国土交通省と警察庁は16日、車や歩行者と分離して自転車のための通行空間を作るとした全国98カ所の「自転車通行環境整備モデル地区」の整備状況を公表した。整備完了のめどとされた今年3月までの整備率は全体で68%、このうち柵などで明確に車道や歩道と分ける自転車専用の「自転車道」の整備率は50%にとどまった。自転車を巡っては歩行者との事故が10年間で3.7倍に増加するなど問題が深刻化する一方、安全走行のための自転車用通路の整備が滞っている実態が浮かんだ。
モデル地区は自転車と歩行者の事故急増を受け、国が初めて本格的に自転車用通路の整備に取り組んだ施策。両省庁は08年1月、全都道府県の87市区町の駅や学校の近く、繁華街など98地区を指定した。整備するのは(1)自転車道48.3キロ(当初の73.7キロから縮小)(2)車道の左側に通行区分を表示する自転車レーン39.1キロ(3)歩道上の通行を認める自転車歩行者道251.6キロ--の計339.0キロ。事業主体は国や自治体、警察で、地方道での整備には補助金を活用できる。
両省庁の公表によると、09年度末(今年3月末)までに整備を完了したのは全体で230.9キロ(68%)。横浜市など33地区が計画通り整備を終えた一方、京都市や北九州市など14地区では整備済みはゼロだった。自転車道の整備は24.0キロ(50%)、自転車レーンは28.2キロ(72%)、自転車歩行者道は178.7キロ(71%)だった。
国交省は整備が進まない理由として(1)限られた道路幅など道路構造上の制約(2)沿道住民や道路利用者との調整の難しさ(3)自治体の予算配分の優先度--を挙げた。整備済みの個所でも、歩行者の立ち入りや違法駐車、危険走行などで、利用に支障が出るケースがあるという。
両省庁はモデル地区での早期の整備完了を図るとともに、事故件数や交通量の推移を調べて整備効果の分析を進め、モデル地区外にも整備を広げる方針。事業実施前の07年時の全国の自転車用通路は約2660キロで、道路全体の0.2%だった。【馬場直子、北村和巳】
【ことば】自転車の通行空間
道路の設計基準を示した道路構造令や道路交通法で、以下の三つが定められている。(1)自転車道=縁石や柵などで車道や歩道と区画する(2)自転車レーン=車道の一部を白線やカラー舗装で区切って自転車の専用通行帯に指定する(3)自転車歩行者道=自転車が通行可能な歩道のことで、幅が広ければ歩行者と自転車の通行位置を線などで分ける。これらがなければ、自転車は車道の左端か路側帯、道交法で一部容認されている歩道を走ることになる。