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ゼロから分かる東京青少年健全育成条例改正問題 ― 第4回

社団法人東京小学校PTA協議会会長インタビュー<前編>

都小P 新谷珠恵会長に聞く都条例改正を推進する理由

2010年11月12日 09時00分更新

文● 高橋暁子

ネットで叩かれていることについて

都小P 新谷会長「ネットは見ているので、反対意見があることも、叩かれていることも知っています。『ネットの世界は怖いね』と言い合っています。『ネットで叩かれちゃって』とお茶の水女子大の坂元章教授に言ったら、『ネットで叩かれるということは表の世界ではヒーローだよ、表の議論が自分たちを潰しそうで怖いから叩くんだよ』と。

 私たちを叩いている人たちはネットの中だけで暮らしており、発言の場がネットにしかない人と捉えています。表の世界とネットは乖離しているのを感じますね。

 『自分もPTA』という人からの反論もありますが、ある程度の年齢の大人はみんな保護者なので、色々な人がいるなと思うだけです。私たちが言うPTAは、子どもの健全な成長を考えている親であり、それが私たちなのです」

「お茶の水女子大の坂元章教授からは『ネットで叩かれるということは表の世界ではヒーローだ』と言われました」(都小P 新谷会長)

守るものを守った上での自由

都小P 新谷会長「ネットの意見に対して反論もありますよ。

 『規制は憲法違反』と言う人には、なぜ憲法で規制できないのかと言いたいです。社会を良くする責任や義務を果たした上での自由だと思うのです。そうでなくて、大人たちの自由だけを大切にしていたら、社会を担保できないでしょう。他人の権利や尊厳を傷つけないことが基本であり、自由は守るべきものを守った上で謳歌すべきです。

 『表現の自由が侵される』という人もいますが、憲法は表現の自由だけでなく人権も尊重しています。自由がすべてなのはおかしいし、欧米でも自由が絶対ではなく、自由の裏には責任と義務があります。

 私は米国に住んでいたし子どもも留学させていますが、ただ自由なのではなくきっちりルールを守った上での自由であり、ルールを守らないと権利を剥奪されてしまいます。大人の勝手を通すと、子どもの人権や尊厳を損なう危険性があります。リスクがある以上、子どもにマイナスなものは規制すべきだと思うのです」

『データはあるのか』と言われること自体ありえない

都小P 新谷会長「幼い頃から二次元児童ポルノ漫画に触れることで、子どもの発達は歪んでしまいます。

 こういうことを言うと、『エロ漫画が子どもに悪影響を与えるというデータはあるのか』と言う人もいるでしょう。ですが、『エロ漫画を見たら健全な発達に(良い)影響が出た』というデータがこれまであったでしょうか。

 子どもは日々色々学んで生きていくので、数式的な答えはありません。心理学者の先生に聞いたのですが、『学術的なデータは無理』と言われてしまいました。逆に、『影響しない』という論もあるくらいです。

 でも、私たち親の感覚では、『データはあるのか』と言われること自体がありえないですね。素直な親の感覚として、こういうものが規制なしで存在すること自体が問題なのであり、例えデータがなくても子どもを守るために読ませたくないという気持ちです。

 子どものことを考えてないから二次元児童ポルノを喜べるのだし、そういうことを言う人は子どもを守ろうという感覚がないのかなと思ってしまいます。こういうことを言うと、また大騒ぎになって炎上してしまうかなと思いますが(笑)」

児童ポルノ漫画は喜ばしくないという感覚こそが社会の代表意見になるべき

「(二次元児童ポルノ漫画を)作らない売らない社会のシステムや、法律での規制が必要」と語る、都小Pの新谷会長

都小P 新谷会長「実際、『漫画を見たら面白そうだったからやってみた』『彼が、愛があったらこうするものだと、エッチな漫画を見せてきた』などという事例が耳に入っています。

 警察の方が研修で話していたことですが、子どもに性的いたずらをする人を捕まえたら、高校生だったという例もあります。

 『ただの事例だろう』と言われてしまいそうですが、1つでも2つでも事例があるならリスクマネジメントすべきではないでしょうか。

 影響を受ける子が何百万人になったら規制するのでは、手遅れになってしまいます。日本全体でリスクマネジメントしませんかと提案しているのです。

 私たちのように二次元児童ポルノ漫画はおかしいという感覚、子どもは守られるべきものという感覚と、そういうものがあってもいいという感覚の、どちらが社会全体の感覚なのでしょうか。

 これをいいと思う大人ばかりなら仕方がないですが、一部の強い声が全体を支配し、守られるべきものが守られないなら、社会は歪んでいるとしか言えません。これは喜ばしくないという感覚こそが社会の代表意見になるべきであり、民意が生かされるべきではないでしょうか。

 『親が買うなと言えばいい』『隠すような教育をすることがいけない』という意見もあります。ですが、子どもは本当にバカで未熟なのです。

 特に東京では、家庭の教育だけでは無理です。家庭だけでなく学校でも教育してもらいたいし、地域の目や企業も大切です。そういうものは作らない売らない社会のシステムや、法律での規制が必要です。他の国のように、子どもは日本の将来の人材と思ってもらいたいし、本気で子どもへの影響を考えてほしいのです」

                         ◆

 後編では、第28期東京青少年問題協議会のこと、非実在青少年が規制対象となった訳、廃案になった理由、再提出で成立させるために行なっていることまでを語っていただきます。

著者紹介:高橋暁子

ITジャーナリスト。情報モラルアドバイザー。SNSやウェブサービス、子どもの携帯電話利用・情報リテラシー教育などに詳しい。元小学校教員。著書に、『電子書籍の可能性と課題がよーくわかる本―出版ビジネスは電子化でどう変わるか』『子どもにケータイもたせていいですか?』など。高橋暁子公式サイト

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