横浜市で13、14日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が採択する首脳宣言の原案が10日、明らかになった。APECが目指す地域経済統合構想「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」の土台として、米国など9カ国が参加する「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」などを明記。地域経済統合の達成時期も「2020年までに推進」と盛り込んだ。日本政府は9日、TPP関係国との協議開始を閣議決定したが、APEC議長国として、成果を実現するために参加への早急な判断を迫られそうだ。
日米中など21カ国・地域で構成する首脳会議が原案を議論し、14日に宣言を採択する。
原案は、FTAAPの土台として、TPPのほか、「ASEAN+3」(東南アジア諸国連合、日本、中国、韓国)や「ASEAN+6」(ASEAN+3とオーストラリア、ニュージーランド、インド)の枠組みも盛り込んだ。FTAAPは、関税引き下げだけでなく、人の移動やサービス分野などを含めて高い自由化度を求めるため、発展状況の異なる国への支援が必要とも指摘している。
経済統合の時期は、以前から20年が検討され、前倒しを主張する米国などと先送りを求める新興国の間で温度差があったが、各国が主張する期限の間を取る形で落ち着いた。
また、原案は、94年のAPECで採択した貿易・投資の自由化目標「ボゴール目標」の達成度も評価。今年の対象国である日米中など13カ国・地域について、域内の平均関税率が96年の10・8%から08年には6・6%に低下したなどとするデータが示され、自由化が進んだと評価した。
地域経済統合と並ぶテーマの域内の成長戦略について、原案は、女性の起業や中小企業支援など5分野での行動計画を打ち出した。各国に計画の実行と、15年に状況を報告するよう求めている。
一方、停滞する世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の11年中の妥結に向けた域内各国の協力の必要性を訴えるとともに、保護主義に強く反対することも表明している。【立山清也】
・「ボゴール目標」の報告書を承認。評価対象13カ国・地域の貿易・投資の自由化は重要な進歩を達成
・TPPなどの枠組みを土台に20年までに地域経済統合
・15年までに国際物流のコストを10%改善する行動計画を策定
・15年までに成長戦略を履行し、進ちょく状況を評価
・ドーハ・ラウンドの成功に向け協力
・保護主義措置を取らないとする取り決めを13年まで3年間延長
毎日新聞 2010年11月10日 東京夕刊