世界の貿易秩序の形成に日本が大きな影響力と責任を持つ事実に、菅直人首相は気づいているだろうか。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が、13日から横浜で開かれる。21カ国・地域の首脳が集まる外交の大舞台である。菅直人首相は、議長国として日本が率先して国を開き、地域の経済統合を推し進める姿勢を打ち出すべきだ。
APECは域内の貿易・投資の自由化を目指す「ボゴール目標」を1994年に採択した。今年は先進国グループの自由化の期限に当たる。
残念ながら目標は達成されたとはいえない。日米中など域内の主要国の歴代政権は、数多くの市場統合の構想を提唱する一方で、保護を求める国内の声に負け、自由化を力強く推し進める指導者は現れなかった。
2008年の金融危機で先進国の需要が冷え込み、東アジアは世界経済の成長を支える役割を担った。地域が持続的に成長するためには、域内の国々が互いに市場を開放し、貿易を拡大しなければならない。
地域の市場統合が遅れた責任は、日本にもある。域内貿易の中核にあり、自由貿易の恩恵が大きいのに、農業改革や規制緩和などを先送りし、開かれた経済を築けなかった。
日本がもたつく間に、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済協力を深め、域内での影響力を着実に強めている。米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)の求心力の高まりは、自由化を先導できない日本への域内各国の失望と表裏一体の関係にある。
菅首相は「平成の開国」を掲げ、TPP交渉への参加意欲を示した。日本との経済連携協定(EPA)交渉に消極的だった欧州連合(EU)が、前向き姿勢に転じたのは、日本がTPPに入ることで東アジアと米国の経済が一体化し、巨大な経済圏が生まれる可能性を感じたからだ。
東アジアと米国が市場統合に向けて動けば、EUも必ず動く。世界に貿易自由化のうねりを生み出す力がAPEC域内にあり、日本はその震源地とも呼ぶべき立場にいる。
首脳会議ではボゴール目標の達成を評価し経済統合の進め方を議論する。ASEANと日中韓、ASEANと日中韓豪印ニュージーランドなど複数の道筋があるが、現実に交渉が進んでいるのはTPPだけだ。
世界の貿易額の44%を占めるAPEC全体に自由貿易圏を広げるうえで、TPPが柱になると考えるのが現実的だ。菅首相は日本のTPP交渉への参加意思を明確にし、説得力ある首脳宣言をまとめてほしい。
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