横浜市で13、14日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控え、会議場がある「みなとみらい地区」では最高レベルの警備が敷かれている。横浜港に臨み、ホテルや観光施設が建ち並ぶ華やかな街は一変し、目立つのは警察官ばかり。12日夕には各国のトップが相次いで来日し、緊張感はさらに高まる。
超高層ビル「横浜ランドマークタワー」の北側を東西に走る「けやき通り」。11日朝、閣僚会議に出席する要人を乗せた黒塗りの車がパトカーに先導され、次々と会議場の「パシフィコ横浜」に滑り込んだ。この通りだけで警察官は100人を超える。白バイや警察車両が行き交い、至る所で赤灯が光っている。
神奈川県警は全国からの応援1万4000人を含め、最大で2万1000人で警備にあたる。周辺20~30カ所に検問所を置き、車一台一台トランクを開けて確認する。周辺の住民からは「週末に暴走族が来なくなった」と歓迎の声も。
ただ、観光スポットのにぎわいは、今はない。10日以降、会議場に面した「国際大通り」が全面的に通行禁止に。沿道の遊園地「よこはまコスモワールド」は14日まで休業する。大観覧車は止まり、ジェットコースターから聞こえる歓声は消えた。旋回する警備ヘリや警察車両のエンジン音だけが響く。
商業施設「クイーンズスクエア横浜」も普段に比べ格段に人通りは少ない。テロを警戒しゴミ箱は取り除かれ、ロッカーは利用禁止に。化粧品店の女性従業員(33)は「こんなに客が来ないのは初めて」と苦笑いした。
周辺には10棟の高層マンションが建ち、約7300人が暮らす。検問で足止めされぬよう市は住民向けにIDカードを配るが、会議場前のマンションに住む女性会社員(50)は「結局、(IDだけでなく)免許証の提示も求められる。マンションの駐車場は通行禁止地区にあるから、入庫も大変」とこぼす。
首脳会議に合わせ「反中国」などを掲げる10以上の団体がデモを予定し、警察当局も警戒感を強める。「何かあったら何人の首が飛ぶか分からない。警察の威信にかけて無事に成功させる」。県警幹部は緊張感を漂わせた。【吉住遊】
毎日新聞 2010年11月12日 東京夕刊