菅直人首相は13日午前、アジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）首脳会議の開幕に先立ち、オバマ米大統領と横浜市内で会談した。両首脳は海洋進出を強める中国をにらみ、同盟深化のための協議加速を確認。共同声明を来年春に目指す方向で一致した。大統領は会談後、日本を防衛する決意は「揺るがない」と表明した。首相は米国主導で進む環太平洋経済連携協定（ＴＰＰ）交渉について「米国とも情報収集を含めて協議したい」と伝えた。大統領は歓迎し、支持する考えを表明した。

　会談は午前10時半すぎから１時間弱。終了後、両首脳はそろって会談の成果を記者団に説明した。

　沖縄県の米軍普天間基地の移設問題については、首相は同県名護市辺野古に代替施設を建設するとした日米合意を堅持する方針を表明した。

　大統領は日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りについて「日本は模範的な常任理事国になる資格を持つ国だ」と強く支持を表明。来春の首相訪米も招請した。今回は安全保障条約改定50周年に合わせて進めてきた同盟深化の成果文書発表を見送ったが、両首脳は来年の共同声明を目指す方針で一致した。

　大統領は記者団に「50年の同盟関係について日米共通の立場をとるときに両国は強くなる」と強調。「来春に首相が米国に来ることを大変うれしく思う。同盟の将来像、ビジョンを打ち出したい」と語った。

　中国に関し、大統領は「中国が経済大国として台頭していることは歓迎する。国際社会の一員として、国際的なルールの中で適切な役割と言動が重要である」とけん制。首相も「全くその通りだ」と応じた。

　首相は「中国、ロシアと色々問題があった中で米国がサポートしてくれた」と謝意を表明。「米国の存在、米軍のプレゼンスがより重要であると国民も思った」とも話した。2011年度以降の在日米軍駐留経費（思いやり予算）については基本方針で一致。首相は28日投開票の沖縄県知事選を待ち「最大限の努力をする」と約束した。

　首相は政府が閣議決定した経済連携の基本方針にも触れ「大きく開国の方向に進んだ」と説明。大統領は「日米両国間の協議は私も強く支持したい」と応じた。大統領は記者団に「ＴＰＰに日本が入ることがある可能性を歓迎する。緊密に協議すべきだ」と評価した。

　両首脳は中国がレアアース（希土類）の輸出を抑制していることに対応、安定確保に向けて実務者協議を始めることでも合意。核物質の安全な管理体制を協議する共同作業部会の設置でも一致した。首相は自衛隊の防衛医官らの派遣を念頭に新たなアフガニスタン支援策を検討していることも伝えた。大統領は日本の貢献を評価した。

　両首脳の会談は３回目。日米関係は鳩山前政権の普天間基地の県内移設を巡る混乱で一時ぎくしゃくした。首相は会談を機に大統領との信頼関係を深め、同盟関係の修復を進めたい考えだ。