社説

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説:米中露首脳会談 首相は総合戦略構築を

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれている横浜市で菅直人首相はオバマ米大統領、中国の胡錦濤国家主席、ロシアのメドベージェフ大統領と相次いで会談した。

 ぎりぎりまで調整が続けられようやく実現した日中首脳会談では戦略的互恵関係を発展させることを確認、日露首脳会談では北方領土問題に対する主張が対立した。日米首脳会談では来春の首相訪米時に日米同盟深化へ向けた共同声明を目指すことを申し合わせた。

 米国との間に普天間問題を抱え、尖閣諸島と北方領土の問題をめぐっては中露の外交攻勢にあい八方ふさがり状態だった菅首相は中露首脳との会談にこぎつけたことで、かろうじて面目を保つ格好となった。

 だが、漁船衝突事件で互いの国民感情が悪化している日中の関係を本格的な修復軌道に乗せる道筋は見えない。双方の主張が真っ向から対立する北方領土交渉や普天間問題を引きずりながらの日米同盟深化といった難題に対処するには強い指導力が不可欠だ。首相は総合的な外交戦略にじっくり取り組む必要がある。

 日中首脳会談はわずか22分間だったが、正式会談は漁船衝突事件後は初めてだ。関係改善への中国側の意思表示と受け止めることができるだろう。尖閣諸島問題については双方が互いの立場を主張し合ったが、政府・民間レベルの交流促進や経済分野を含む地球規模の課題で協力を強化していくことでは一致した。

 日露首脳会談で首相が大統領の国後島訪問について「日本の立場、国民感情からも受け入れられない」と抗議したのに対し、大統領は「われわれの領土であり将来もそうあり続ける」と反論。さらに、平和条約交渉へのアプローチを変え経済を前面に出すよう提案したという。

 しかし、首相が「今後も議論し協力関係を発展させたい」と述べたのに対し、大統領は来年の首相訪露を招請した。領土交渉継続の意思を示したものとも受け取れる。

 ロシア側の強い姿勢の背景には、一時期の経済不振を脱したことで日本の経済協力への依存度がかつてより低下してきたという事情もあるようだ。日本は新たな交渉法を検討することも必要だろう。

 日米首脳会談で首相は普天間問題について、飛行場を名護市辺野古に移設するとした日米合意をベースに、沖縄県知事選後に努力すると伝えた。軍事、経済両面で影響力を拡大している中国をにらみ、両首脳が日米同盟の価値を再確認したことは意味がある。だが、日米合意に対する地元の反発が強まる中、首相には合意履行の算段があるのだろうか。決意が試される局面は近く訪れる。

毎日新聞 2010年11月14日 2時31分

 

PR情報

社説 アーカイブ一覧

 
共同購入型クーポンサイト「毎ポン」

おすすめ情報

注目ブランド