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【社説】

日米首脳会談 同盟深化中身が肝心だ

2010年11月14日

 日米首脳会談で、同盟深化に関する協議の成果を盛り込んだ共同声明を来春までに取りまとめることで一致した。目標は菅直人首相の訪米時。両国の関係強化に異論はないが肝心なのはその中身だ。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の横浜開催を機に行われた菅首相とオバマ米大統領との会談。両首脳の顔合わせは三回目だが、今回は海洋権益拡大を図る中国を強く意識したものとなった。

 それは、大統領が日本を、国際的な規則を順守する「模範的な市民」とたたえる一方、「中国は国際社会の一員として適切な役割と言動を果たすことが重要だ」と指摘したことに、強く表れている。

 日米安全保障条約改定五十年を契機に始まった同盟「深化」の協議も当然、中国を念頭に置かざるを得ないだろう。共同声明が沖縄県の米軍普天間飛行場の返還問題をめぐる混乱の余波で来年に持ち越されたのは残念だが、中身を充実させる時間と考えたい。

 中国漁船衝突事件は、日米同盟関係の重要性をあらためて想起させたとはいえ、日米間で軍事的な関係だけを強めても、中国の軍事力強化を促す「安全保障のジレンマ」に陥り、逆に地域の不安定化をもたらすことになりかねない。

 むしろ、航行の自由、民主主義や人権尊重、市場経済など「共通の価値観」を持つ国が連帯し、中国にもこうした価値観を共有して国際社会の一員としての役割を果たすよう促すことが、地域の安定につながるのではないか。

 国際社会は核拡散やテロ、地球温暖化、食料・エネルギー不足、感染症、貧困など多様な脅威に直面している。日米が共同で解決に努め、中国からも協力を取り付けられれば、日米同盟の重要性は増し、両国関係は確実に前進する。

 同盟「深化」の協議が、協力分野を広げる「進化」の道を歩むことを、重ねて求めたい。

 普天間返還問題では、オバマ民主党が歴史的敗北を喫した中間選挙の影響を見極める必要がある。

 首相は「五月の(県内移設を明記した)日米合意をベースに(二十八日の)沖縄県知事選後に最大の努力をする」と伝えた。

 しかし、下院で多数を握った共和党は政府支出の削減を求めており、沖縄海兵隊の縮小が現実味を帯びるかもしれない。県内移設が困難視される中、そうした機会があるなら、見逃してはならない。

 したたかな外交が求められるのは対中国、ロシアだけではない。

 

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