【横浜】菅直人首相は、最近の中国とロシアとの領土問題で在日米軍の重要性を再確認したとして、日米同盟を深化させる強い意向をオバマ大統領に示した。
首相は、6月の政権発足以来、日米関係に取り組む姿勢を最も明確に示した形で、力を増しつつある2つの隣国との対立で米政府が日本を支持したことについて、オバマ大統領に謝意を示した。両首脳は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開幕に先立ち、13日午前に1時間会談を行った。
菅首相は、この地域の平和、安全のためには米国の存在、米軍のプレゼンスがより重要になっているという認識をあらためて強くしたと述べた。
しかし、この発言は、9月以降、領土問題の再燃で揺れている中国・ロシアとの関係修復に向けた努力を困難にするリスクもはらんでいる。
菅首相は、自身にとって初となる国際会議のホスト国として注目を浴びているものの、こうした二国間の緊張が背後に影を落としている。
22分の短い日中首脳会談の後、記者団にブリーフィングを行った日本の当局者によると、会談では、菅首相と中国の胡錦濤国家主席が尖閣諸島問題について互いの国の立場をあらためて主張した。同当局者は、敏感な問題だとして、尖閣問題についての詳しいやりとりは明らかにできないとしている。
両首脳による正式な形での会談は、日本の当局者の努力でやっと実現した。
東シナ海の尖閣諸島沖で日本の海上保安庁巡視船に中国漁船が衝突し、日本側が船長を逮捕して以来、ここ数週間の日中関係は近年で最も悪化している。
一方、ロシアのメドベージェフ大統領との日ロ首脳会談は、両国が固有の領土と主張する北方領土への同大統領の訪問に端を発した対立をめぐり、激しい言葉のやりとりで始まった。会談に同席した日本の当局者によると、菅首相は、大統領の国後島訪問を日本国民の感情として「受け入れられない」と述べ、これに対してメドベージェフ大統領はロシアにとってもこの問題は「極めて敏感な」問題だと返したという。
ただ、両首脳は、経済を中心とする様々な分野の協力関係を強めるため、二国間の対話を継続することで合意した。菅首相は、領土問題の解決とともに、第二次世界大戦後の完全な国交正常化の仕上げとしてのロシアとの平和協定の締結にも意欲を示した。
オバマ大統領は、菅首相が日米関係を高く位置づけたことを受けて、両国の同盟は「われわれの安全と繁栄の礎」だと述べた。また、13日に発効した日米航空自由化(オープンスカイ)協定について触れ、両国は「経済関係を深化させ」ているとも述べた。
先にインドの国連安全保障理事会の常任理事国入りを支持したオバマ大統領だが、「日本は、国連安全保障理事会の模範的な常任理事国とわれわれがみなしたい国」と、従来の米政府の方針を繰り返した。
普天間基地の問題解決については、菅首相は、28日の沖縄県知事選の後、基地移設のための最新の日米合意の実行に向けて最大限努力すると伝えた。
また両首脳は、核リスクの低減、エネルギー効率の促進、技術革新と起業家の強化に向けた協力を求める新たな二国間合意について署名した。留学や仕事で米国に渡る日本の若い世代が減少することは将来の両国関係の希薄化につながるとして、両国は、学生・教師の日米交流の促進を目的とするプログラムの設置でも合意した。