「季節外れ」が珍しくなくなった。先月末、遅れてやってきた台風14号は日本列島に強風を吹かせながら通過した。北国に初雪が降った直後だった
▼季節外れが続くと、近ごろの地球はやっぱりどこかおかしい、という話になる。おとといからは西日本を中心に黄砂が記録された。偏西風が中国大陸から運ぶ黄砂は、普通は「春の使者」として知られる
▼中国から国家主席も日本にやってきた。ロシアと米国の大統領も来日した。アジア太平洋経済協力会議(APEC)が横浜で開幕した。どうなることかと気をもませた日中首脳会談も行われた
▼日本の国家経営が順調なら春のにぎわい気分となるところだ。政治も経済も寒さが厳しいからそうはいかない。北と南の領土問題などに加え、米国が主導する環太平洋連携協定(TPP)では待ったなしの「開国」を迫られる
▼「円高台風」が収まったと思ったら、難題が次から次に列島をうかがう。国内問題でいえば、世論の風雨が強まる「尖閣ビデオ流出」事件が台風級に発達した。わが国の政界天気図はずいぶん前から内憂外患型が続く
▼かくして永田町は年中、荒天模様だ。なにかと批判される民主党と批判する自民党が、ただ役柄を交換しただけのようにも見えることが、国の姿を一層お寒くしている。長期予想はどうなっているのやら。春よ来いと願うのは、いくら季節感が薄れゆく昨今とはいえ早すぎるだろうか。
=2010/11/14付 西日本新聞朝刊=