アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が開幕した13日、各国首脳の夫人らが鎌倉市を訪ね、地元の小学生らと交流し、市民の間には歓迎ムードが広がった。14日には米国のオバマ大統領も訪問を予定する。県や市が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産登録を目指す「武家の古都・鎌倉」。関係者は、APECを機に国際的な知名度アップの弾みにしたい考えだ。【吉野正浩、杉埜水脈、木村健二】
菅直人首相夫人の伸子さんとともに、カナダ、メキシコ、チリ、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド、台湾の首脳夫人の計8人が午前10時半過ぎ、大仏で知られる高徳院に到着した。門前ではカメラを手にした市民ら約200人が待ちかまえる中、佐藤孝雄住職と松尾崇市長が出迎えた。
夫人らは通訳を介して佐藤住職の説明を受けながら、大仏を見学。時計回りに大仏を一周して、記念撮影に納まった。松尾市長は「ニュージーランドのブロナー・キー首相夫人から『横浜から鎌倉に来て空気が違うと感じた』と聞き、印象的だった」と喜んでいた。
一行はこの後、建長寺を訪問し、市立小坂小学校の6年生や教諭ら計約80人の歓迎を受けた。吉野真子さん(11)が「ようこそ鎌倉へ。皆様の来日を楽しみにしておりました」とあいさつ。児童8人がプレゼントの扇子を手渡すと夫人らは「ありがとう」「サンキュー」などとうれしそうに絵柄を眺めていた。
「鎌倉は武士道精神の発祥地」「ユネスコに友達がいたら推薦してもらえるよう話してください」。12日夜の最高経営責任者サミット出席者を前にした交流会や9日夜の各国の閣僚を招いてのレセプションで、松沢成文知事は世界遺産登録への協力を繰り返し求めた。
中世から近世にかけた武家政権の都市の姿を伝える鎌倉は、1992年に世界遺産の暫定リストに掲載。だが、目標としていた今年度内の推薦は見送られたとあって知事のセールスにも熱がこもる。
松尾市長も13日、首脳夫人8人を前に世界遺産登録に向けた取り組みを説明。PRに余念がなかった。
毎日新聞 2010年11月14日 地方版