平成22年11月14日
5項目の成長戦略で合意、行動計画策定へ−APEC首脳会議始まる
オバマ米大統領(左手前)らが出席して行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)
首脳会議初日の会合=13日午後、横浜市のパシフィコ横浜
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環太平洋の21カ国・地域から成るアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が13日、横浜市のホテルで2日間の日程で開幕した。議長の菅直人首相は参加国の首脳を一人ひとり出迎えたのち、ワーキングランチを挟んで、午後の会合に臨んだ。その中で「APECは成長のエンジンの役割を担っており、共有できる新しい成長戦略が必要」と表明、参加国首脳の支持を得るとともに、「均衡ある成長」など五項目で合意。成長と環境の両立、技術革新などの行動計画をまとめることで一致した。首脳会議は14日、アジア太平洋地域での経済成長と連携の促進をうたう「横浜宣言」を採択して閉幕する。
国際通貨基金(IMF)のストローカン専務理事、ゼーリック世界銀行総裁も参加してのワーキングランチで、菅首相は「APECが創設されて20年以上経過しており、貿易の自由化、円滑化を進めるロードマップを策定し、APECの成長を確固たるものにしたい」と述べた。これに対し、参加首脳が意見を表明。雇用問題は欧州だけでなく日米を含めアジア太平洋地域でも抱えており、内需拡大と経常収支、通貨のバランスを適正なレベルに持っていく必要があるとの意見が多く出された。このため、APEC参加各国・地域の格差の最小化が求められるとともに、中間所得層の各国での発展やインフラの整備、災害での国際協力の必要性と事前の対応などを今後の課題として認識。
午後の議論で菅首相は、日本政府の新経済戦略を示し、少子高齢化に対応した医療、介護、社会保障を重視した雇用・成長の促進の重要性を強調。その上で、安心して経済活動できる環境が必要として、インフラ整備とともに、食糧安全保障、テロ対策、人間の安全保障に取り組む姿勢を明確にした。
成長戦略としては、均衡ある成長、あまねく広がる成長、持続可能・革新的・安全の五つの特質ある成長を求めることで大筋合意。その実現のために成長と環境の両立や技術革新、構造改革、人材・企業家の育成などの行動計画を取りまとめることで一致した。また、化石燃料への補助金の削減、災害・テロ対策など人間の安全保障について話し合われた。
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APECで「中国」の存在感
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に先立って行われた13日の最高経営責任者(CEO)サミットでは、「中国」の存在感が目立った。経団連主催の同セミナーはAPEC首脳会議と日程を合わせ、会場に程近い横浜市内のホテルで内外の財界関係者を集めて行われた。
午前中には菅直人首相、バラク・オバマ米大統領に続いて、胡錦濤中国国家主席が講演したため、取材陣も殺到し、メディアの席が溢(あふ)れて、一般参加者の席を浸食するほどに。
中でも目を引いたのは中国人記者の多さだ。セッションが終わるごとにロビーで財界関係者らを捕まえてインタビューを行っているのは、半数が中国メディアだった。
本紙記者を捕まえて、「胡錦濤主席の講演をどう思ったか」と聞いてきたのは「第一財経新聞」と系列の「第1財経TV」。日本が中国をどう見ているかが気になるらしい。
熱心なのは仕事だけでなく、会場内で正面をバックに記念撮影をするのは大半が中国の関係者たちだ。国際会議で「記念撮影」とはめったに見ない光景で、それだけに目立つ。そんなところでも台頭する“中国パワー”を見せ付けられた。講演した胡錦濤主席がやや精彩を欠いていた分、それを補って余りあるものだった。
(岩崎 哲)