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邪馬台国論争

2010年11月13日0時47分

 いわゆる正統派経済学は、ケインズ以後ほとんど成果を上げていないのではないか。それは、近年のノーベル経済学賞の受賞者の多くが数学や心理学、社会学からの参入者で占められていることでもわかる。

 欧米の経済政策論では、新自由主義あるいは市場原理主義と、社会民主主義が長い間対立を続けてきた。しかし、これは経済に対する仮定の置き方の違いであり、邪馬台国の位置が大和か九州かという「邪馬台国論争」の経済学版に過ぎないといえる。

 わが国でも、ここ数年「上げ潮派」と「財政再建派」の二派が対立してきた。この間の経済政策の失政のために経済論争に白黒をつけないまま、数多くの学者やエコノミストが増殖した。「エコノミストとは経済が悪くなるほどもうかる職業」という法則を期せずして実証している。

 だが、夢とロマンにみちた邪馬台国論争と異なり、経済政策は国家の命運にかかわる。だからこそ、かつての米国のレーガン大統領や英国のサッチャー首相は、政策論の中から新自由主義を選択し、強固な信念とリーダーシップによって、経済改革を実現した。最近では、ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン氏らの緊縮財政批判にもかかわらず、英国政府は11兆円に及ぶ歳出削減策を打ち出した。英国政府の意志と実行力を感じさせる。

 翻ってわが国は、財政危機に加え、急激な円高や尖閣問題で突如浮上したチャイナ・リスク、鎖国派と開国派に分裂した環太平洋パートナーシップ協定などの課題の中をなすすべもなく漂っている。民主党政権は、エコノミストや官僚、業界団体らの「邪馬台国論争」をいつまでも聞いている時ではない。(匡廬)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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