広島県内の山中を歩くツキノワグマ=2008年8月撮影、米田一彦さん提供
森林総合研究所(茨城県)の大井徹・鳥獣生態研究室長は「04、06年の大量出没の時に熊が人里近辺に定着し、人との危険な遭遇が増えた可能性がある」と指摘する。
独立行政法人の国立登山研修所(富山県)によると、全国の60歳以上の推計登山人口は06年に約3万4千人で、91年の約1.5倍になった。5、6月に死傷した23人の年齢構成も高齢層に集中しており、70代8人▽60代10人▽50代3人▽30代1人▽年齢非公開1人、だった。
同研修所の専門職、東秀訓さんは「ハイキングや登山、山菜採りなどを楽しむ高齢者は熊の危険性を認識し、恐れを持って入山してほしい」。米田さんは「秋以降にドングリなどの不作が重なれば、さらに被害が増える可能性がある」と警鐘を鳴らしている。(小寺陽一郎)
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■遭遇してしまったら…
◆遠くにクマがいたとき
静かにその場を立ち去る。大声や急な動きをしてはいけない。
◆近くにクマがいたとき
ザックなどの持ち物を置き、気をそらしながら後退し攻撃をかわせることもある。クマは逃げる対象を追う傾向があり、背中を見せて逃げてはいけない。
◆至近距離で突然遭遇したとき
両腕で顔や頭を覆ってダメージを最小限にとどめることが重要。積極的な反撃は推奨できない。
(環境省の「クマ類出没対応マニュアル」から)
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〈ツキノワグマ〉 東北、中部地方を中心に本州と四国の一部に生息し、体長110〜150センチ、体重80〜120キロ。鋭いツメを使って木に登ったり穴を掘ったりし、時速40キロ以上で走る。植物中心の雑食性でドングリや果実、昆虫などを食べる。行動範囲は10〜100平方キロメートルと広い。