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横浜での一連の首脳会談は、日本外交立て直しの第一歩に過ぎない。菅直人首相は「修復外交」にひとまず区切りをつけたこの機会を逃さず、政権としての包括的な外交戦略づくりと、そ[記事全文]
スーパー無駄遣い。民主党政権の事業仕分けで、こう厳しく退場勧告されたのは、国土交通省のスーパー堤防事業である。首都圏、近畿圏の大河川で、200年に[記事全文]
横浜での一連の首脳会談は、日本外交立て直しの第一歩に過ぎない。
菅直人首相は「修復外交」にひとまず区切りをつけたこの機会を逃さず、政権としての包括的な外交戦略づくりと、それを推進する態勢の練り直しに本腰を入れなければならない。
尖閣諸島をめぐり中国との関係が緊張し、メドベージェフ大統領の国後島訪問でロシアとの関係も冷え込む中、両国首脳も参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれた。後手後手に回った「外交失態」に歯止めをかける好機である。
中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席との会談がごく短時間に終わったのは残念だったが、ともかくもこれを反転の足場とするほかない。
まずは、オバマ大統領との間で日米同盟の深化を確認し、日本外交の基軸を内外に明確に示した。
次いで、中国との「正式な首脳会談」を尖閣事件以降初めて実現させ、両国の戦略的互恵関係の重要性を最高レベルで再確認した。
さらに、メドベージェフ大統領の行動に菅首相が「抗議の意」を表明し、北方領土問題での日本の原則的立場を示すとともに、領土問題を解決して平和条約の締結を目指す考えを伝えた。
胡主席との会談は、開始10分前に発表されるという慌ただしさ。過去2回、温家宝(ウェン・チアパオ)首相が「懇談」形式にとどめたのに対して今回は「会談」とし、一方で時間は約20分間と限られた。
国内の対日世論の厳しさなどを踏まえ、中国側としてもぎりぎりの判断だったのだろう。
首脳会談が行われるかどうかが最大の焦点となる。そのこと自体が現在の日中関係の異常さを象徴している。
全面的な関係改善への道のりは、なお遠い。ここは慌てず、あせらず、両首脳が確認した人的交流の促進から、一歩一歩環境を整えるしかあるまい。
領土をめぐる中国、ロシアの強硬姿勢の背景として、普天間問題による日米関係の揺らぎを指摘する声は多い。
日米両首脳は今回、同盟深化をうたう新しい共同声明のとりまとめで一致した。両国関係の土台を築き直す重要な作業となろう。
ただ、世界の成長を牽引(けんいん)する中国は、今や日米双方にとって経済的にも政治的にも重要なパートナーだ。同盟の深化は中国に対抗するためではない。日米には、中国が国際社会で大国にふさわしい責任を果たすよう促す役割があることを忘れてはいけない。
普天間の県内移設にノーを突きつける沖縄の民意は固く、日米合意の実現は厳しさを増している。一基地の問題が日米関係の大局を見失わせた鳩山政権時代の轍(てつ)を踏んではならない。
この取り扱いは両国政府に、これまで以上の細心の注意を要求している。
スーパー無駄遣い。
民主党政権の事業仕分けで、こう厳しく退場勧告されたのは、国土交通省のスーパー堤防事業である。
首都圏、近畿圏の大河川で、200年に1度といった大洪水にそなえ、堤防の幅を通常の10倍余に広げる。だが1987年から7千億円を投じたのに6%、50キロしか完成していない。
巨額の費用がかかる。用地の確保も難しい。できた堤防は細切れだ。完成まであと400年と12兆円かかる、とあっては見直しは当然だろう。
ただし、街が安全なわけではない。
事業対象の江戸川と荒川に挟まれる東京都江戸川区は、7割が海抜ゼロメートル地帯だ。高潮対策のため、コンクリートの薄い壁を堤防の上に継ぎ足したところまである。破堤すれば区民68万人だけでなく、地下鉄や共同溝を通じ、都心にも影響が広がる。地球温暖化で海面上昇や超大型台風の危険が増す時代に放っておけない。
スーパー堤防は、周辺の区画整理事業を一緒に進めて堤防用地を確保し、広げた堤防の上に街を造り直す。70年代から広がった、都市全体で治水をすすめる思想の流れをくむ。先進的と言えなくもなかった。
国の手厚い補助で再開発をすすめられる自治体は熱心だ。でも安全になるとはいえ、一時立ち退きや土地提供を迫られる住民の思いは複雑だ。
ほかに方法はないのだろうか。
国交省の諮問機関の淀川水系流域委員会は08年の意見書で、今ある堤防の緊急強化を唱えている。
破堤の多くは、土の堤防に水が染みこみ、崩れることから始まる。ポリエステルのシートで堤防を覆って水の浸透を防ぐ、鉄板やセメントのくいを打ち込んで堤防を壊れにくくする、といった方法があるそうだ。
国交省も5年前から、スーパー堤防の重点区間を4分の1に絞った。区画整理の同意集めが難しい地区は、堤防をシートで覆ったり、幅を狭めた仕様も取り入れたりしている。スーパーほどではないにせよ、安全は高まる。
住民の協力が欠かせない。計画の段階から一緒に議論し、放っておいては危ないとの意識を共有する機会にしたい。それが避難の徹底にもつながる。
地下室の危険を知らせる。下水道や浸透性舗装といった内水はんらんの対策、山の保水力を守る。様々な治水の課題に取り組む契機にもなる。
水行政について、松井三郎京大名誉教授らの学者グループや超党派の議員連盟が一元化を提案している。治水だけを見ても、地下水の過剰くみ上げによる地盤沈下、災害の危険の高いウオーターフロントの開発など、縦割り行政の危うさの指摘はうなずける。
今回の仕分けを、危機管理を強める契機にしなければいけない。