【コラム】G20サミット、宣言文より重要なものとは(下)

 一方で、国の面子はかなぐり捨てたかのようだ。日本は突然、韓国の為替レート操作を非難し始めた。また先月、慶州で行われたG20財務相・中央銀行総裁会議で、これ以上為替レートに手を付けないという合意文に署名した米国はわずか十日後、ドルを大量に流通させる政策を発表し、ドルの切り下げに乗り出した。その上で財務長官は、「強いドルを維持することが重要だ」と、つじつまの合わない発言を行い、他国の不満を抑えようとした。

 主要7カ国(G7)やG20の首脳会議では、夜通し行われる交渉を通じて、宣言文を作成する瞬間が最も緊迫する。そして結局、どの国も拒否できない文章を作成し、合意するという形で終わる。さらに拘束力のない合意文を守り、これまでの政策を改めようという国はほとんどない。

 1985年のプラザ合意以降も、ドイツは為替レートだけを調整し、財政・金融政策を推し進めていくことにより、実益を得た。一方、日本は米国との交渉を進め、高金利政策と低金利政策を交互に打ち出すことで、不動産や株式のバブルを生み出し、その崩壊によって20年にわたる長期不況を経験した。

 各国の首脳による会合が、宣言文を作成するだけの行事に成り下がり、あるときは合意文通りに政策を実行しているかを監視する機関まで設けたが、無駄な努力に終わった。宣言文での約束を守ろうと主張し、経済が低迷に向かうのを座視する国家の指導者などいるはずがない。

 韓国は今こそ、実利的な選択をしていく義務がある。先進国から押し付けられた、爆弾を積んだバスをただ見ている時代は過ぎ去った。1998年のアジア通貨危機からの10年間、外貨が2200億ドル(約18兆円)も集まったにもかかわらず、政府は傍観しているだけだった。いや、世界が韓国経済を評価した、と浮かれていたのだ。2008年秋、わずか4カ月間で700億ウォン(約5兆7750億円)もの外貨が流出したときには、国家が破産に陥る一歩寸前まで行った。

 ビジョンもないまま、特定の国と行動を共にすることもやめるべきだ。慶州での宣言文作成に向けた交渉の際、韓国は経常収支の赤字と黒字の幅を、国内総生産(GDP)の4%台まで縮めようという主張を、米国と共に最後まで曲げなかった。中国やドイツ、新興国などから睨まれても、米国の側を向き続けた。経常収支の赤字と黒字の幅が5.1%の国が、米国と同じ主張を繰り広げているようでは、一体どこの国が拍手を送るだろうか。

 「ソウル」という地名が付いた宣言文だからといって、これに執着する必要もない。家族に十分な衣食住を保障できない子孫たちほど、族譜(一族の系譜)に名前を残すことばかり考えるものだ。

宋煕永(ソン・ヒヨン)論説室長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る