【コラム】G20サミット、宣言文より重要なものとは(上)

 金融市場でなじみのない金融商品に、「100年債券」というのがある。100年後に償還するという債券には、売る側も買う側も戸惑いを感じるものだ。「そのころまで生きているのか」という疑問には、債権者も債務者も答えることはできない。

 この秋、さまざまな種類の「100年債券」が発売された。オランダの銀行・ラボバンクや、米国のノーフォーク・サザン鉄道が売り出した債券はすぐに売り切れとなった。また、メキシコ政府が「2110年に償還する」として売り出した100年債券は、予想よりも2倍の売れ行きを記録した。

 地球上では、お金がまるで空気のような存在になっている。孫の代まで存続しているかも分からない会社の債券が、当たり前のように売れる時代になった。為替レートをめぐる争いが、わずか数行の宣言文では決して終わらない理由は、まさにここにある。人類の歴史上、扱われたことのないほどの多額の金が、安値で取り引きされ、世界中を駆け巡っている。

 この世界で、余裕のあるお金がどれほど出回っているのかを推定する方法がある。「ワールド・ドル」という指標だ。米国連邦準備制度(FRB)が、米国国内で供給されているドルや、外国政府が保有している外貨準備高を合算した数値だ。この「ワールド・ドル」の規模は、2008年のリーマン・ショック以降、2倍にまで膨れ上がった。

 今回ソウルで行われた主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、各国の首脳から鋭い発言が相次いだ。「ワールド・ドル」の規模が大きくなるにつれ、さらに破壊力が大きい「大量破壊兵器」になることを知っているためだ。どの国であれ、その爆弾を積んだ車を自国に招き入れたくはないはずだ。

 1973年の第1次石油危機以降、世界の金融市場では、巨額のドルが動くたびに騒ぎが起こった。巨額の資金がまず中東から欧州、日本を経て米国へ、そして先進国から新興国へ流れ、さらに中国から米国へ流れるという循環構造が維持されている。この資金が、あるときは景気を回復させ、好況をもたらしたが、いつの間にかバブルを膨らませ、国家を破産の危機に追いやってきた。これは、どの国も乗ることを余儀なくされる、天国と地獄を往復するバスのようなものだ。

 2008年以降の大きな流れを見ると、爆弾を積んだバスは先進国から新興国へと押し出されている。米国や日本、欧米はゼロ金利政策によって金を増やす一方、ブラジルや中国、オーストラリア、東南アジアなどに爆弾を押し付け、空気圧縮機を使って体内に食べ物を押し込んでいるような状況だ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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