韓国人留学生、千代田線根津駅で転落男性救う

 先月22日午後9時30分ごろ、東京メトロ千代田線根津駅のホームで列車を待っていた留学生イ・ジュンさん(32)=東京大学博士課程1年=は、「ドン」という音と共に、60代の男性が線路に転落するのを目撃した。このとき、ホームにいたのはイ・ジュンさんだけだった。交通工学を専攻するイ・ジュンさんは、落ち着いて地下鉄の非常停止ボタンを押し、ためらうことなく線路に降り、倒れている男性の呼吸を確認した。

 イ・ジュンさんは力を振り絞り、男性を移動させようとしたが、一人の力では無理だった。約2分後、40代の日本人男性が線路上にいるイ・ジュンさんを発見、下に降りた。このとき、列車がホームに進入してきたが、イ・ジュンさんが非常ボタンを押していたため、徐行した後に停止、倒れた男性を救うことができた。駅員はイ・ジュンさんに連絡先を聞いたが、時間がなかったこともあり、返事をせず手についた血をぬぐい、自宅に向かった。

 三日後の25日、再び根津駅に来たイ・ジュンさんは、壁に見慣れぬ張り紙があるのに気付いた。張り紙には、線路に男性が転落した時刻と警察署の連絡先が書かれていた。イ・ジュンさんを探す張り紙だ。だが、3週間前に留学のため日本に来たばかりで、日本語に自信がなかったため、「もしかして、自分が何か間違ったことをしたから警察が探しているのだろうか」と思い、携帯電話のカメラで張り紙を撮影、学校に行った。

 東京大学の友人に張り紙の写真を見せたところ、「線路に落ちた人を救出した男性を捜している」という内容だと教えてくれた。そこでイ・ジュンさんは初めて、25日付の朝日新聞に「線路に落ちた人を救助した男性一人と連絡が取れなくなっている」という記事が掲載され、東京メトロや東京消防庁本郷消防署がその男性を探していることを知った。「この張り紙で探している人物は自分のことだ」と告白すると、学校では大騒ぎになり、同じ学科の人々が「素晴らしいことをした」と東京メトロと警察に連絡した。東京メトロと東京消防庁では、19日に感謝状を贈る予定だ。

 イ・ジュンさんは「わたしに勇気があるからではなく、誰でもその場にいたら、転落した人を助けていただろう」と淡々と語る。研究所の仲間は、「イ・ジュンさんによる今回の救助は、2001年にJR山手線・新大久保駅で転落した人を救おうとして電車にはねられ亡くなった韓国人留学生、李秀賢(イ・スヒョン)さんのことを思い出させる。今回は全員無事でよかった」と話したそうだ。イ・ジュンさんを指導した延世大学都市工学科のチョン・ジンヒョク教授(45)は、「日本政府の招きで国費留学生に選ばれたほど、イ・ジュンさんは学業に熱心で、何よりも他人を思いやることができる素晴らしい教え子」と言って胸を張った。

キム・チュンリョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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