2010年11月14日8時2分
楽屋でくつろぐ踊り子
30年にわたり、ストリップの舞台裏を撮り続けてきた川上譲治さんと作品展=京都市西京区、西江写す
劇場の相次ぐ閉鎖で、いまや風前のともしびとなったストリップ業界。裏も表も知り尽くした元興行師が、約30年にわたって踊り子たちの姿を撮りためた写真展「裸的群像展」が京都・嵐山のギャラリーで開かれている。被写体に迫るモノクロ写真からは、かつての熱気が伝わってくる。
島根県浜田市の川上譲治さん(60)。1975年に大阪芸術大を中退し、写真家を志して上京。翌年、新宿のストリップ劇場で従業員募集の張り紙を見て、「軽い気持ち」で飛び込んだ。半年後には照明係から支配人になり、その後は興行師として独立した。
風営法改正もあって斜陽化する業界が過激路線に走るなか、川上さんはストリップとジャズバンドの共演や、アングラ演劇、前衛舞踏集団の実験ショーをプロデュース。戦後の焼け跡でたくましく生きる女性たちを描いた田村泰次郎原作の「肉体の門」も、アングラ劇仕立てで上演した。
一方で、「この熱気を記録しなければ」と舞台の合間にシャッターを切った。なまめかしくも哀愁漂うストリッパーたち、アングラ劇団の型破りな舞台、楽屋でたばこをふかしてくつろぐ踊り子……。被写体との信頼関係があってこその一枚を撮りためた。
足かけ30年、川上さんは還暦を前に引退を決意し、06年に島根へ帰郷。大阪芸大大学院で改めて写真を学び、いまは故郷の風景を撮る日々だ。
今回の写真展は「ストリップ屋」の総括として企画し、小説も出版した現役の踊り子、牧瀬茜さん(33)との二人展に仕立てた。舞台の写真や自身の思いをつづった文章を展示する牧瀬さんは「内向的な私にとって、ストリップは自己表現の場。その思いを知ってほしい」と話す。
川上さんは「若者がストリップに新たな地平を求めた時代を知ってもらえれば」と語る。11月24日(木曜休館)まで、京都市西京区嵐山中尾下町32の2の「あーとすぺーす」(075・882・4868)で。入場無料。(西江拓矢)