2010年10月25日

黒い雲(1)

「伝説の英雄のような人類の指導者となるべき選ばれし者は、より大局的な正義を為すためならば、既存の法や規範をも超越する資格を持つ」(ラスコーリニコフ青年・『罪と罰』)

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「司馬遼太郎記念館をお手本に、必ず尊敬する司馬先生のご遺志にかなう立派な記念館に致します。」

身を乗り出してさわやかに口説く青年市長。
しかし、司馬財団理事長・福田みどりの表情は固い。
遺言で映像化、テレビ化を禁じた国民的人気小説への亡夫司馬の複雑な思い。
しかし、4時間にわたる執拗な説得に気丈な未亡人もついに折れた。

「ご遺族の希望ですから。」

3000万円を超す記念館の基本設計は、
死長の鶴の一声で世界的建築家・安藤忠雄事務所に決まった。
この金額にしては異例の随意契約。
しかし、有無を言わさぬ死長の物言いに口を差し挟む者はいなかった。

東大阪に建つ司馬遼太郎記念館。
設計は安藤忠雄。
そして、施工は竹中工務店。
「お手本に」という何気ない一言に込められた邪心が、
嵐の前の雷雲のように、静かに広く膨らんでいく。

基本設計の3000万などは単なる伏線に過ぎない。
30億を超す巨額の事業費を狙って蠢く多くの関係者。

老女は、知るよしもない。
青年の微笑の裏に隠された恐るべき黒い陰謀を。
posted by darkcloud.1999 at 02:42| Comment(1) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
黒?白?グレー?であろうがなかろうが、政治家に陰謀はつきものでしょね。
驚くに値しない。
しかし、ここまでズバズバとブログに・・・
只者じゃないでしょ、あなた?
面白い!てか、怖いくらい。
Posted by 山椒魚 at 2010年10月28日 15:40
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