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【書評】『小鳥と柴犬と小沢イチローと』上杉隆著
脱力しながら政治を語る
上杉隆氏をご存じの方は『官邸崩壊』『記者クラブ崩壊』といった著作から硬派なジャーナリストを想像されるかもしれない。ところが小泉純一郎氏や鈴木宗男氏などのモノマネが得意なひょうきんな素顔も。
本書は上杉氏のそんな一面を出した「あまり深く考えずに、脱力しながら政治を語る」奇書です。奇書たるゆえんは政治家個人の趣味や素顔から、その政治姿勢を読み解こうとする空前絶後の評論にあります。今まで誰が小鳥と柴犬に対する小沢一郎氏の愛情から「政治家小沢一郎」を読み解こうとしたでしょうか!
週刊誌(週刊プレイボーイ)に連載中、こんなやり取りがあったそうです。
文春の偉い人「上杉君のせっかくつくってきた硬派なイメージが崩れる」
上杉「もともとそれが間違ったイメージですから」
偉い人「あの文体だと他の記事も信頼を失う可能性がある」
上杉「もともと信頼は失っていますから」
偉い人「一緒に仕事ができなくなってもいいのか」
上杉「いいんです。その程度の人間ですから」
この姿勢は決して開き直りではありません。広く政治を伝えるために、文章に苦吟する氏の姿があったのです。「もっとわかりやすく、もっと面白く」。古今東西、こんなに面白さを追求するジャーナリストがいたでしょうか。さすがは「黒い池上彰」です(笑)。
都知事選に立候補が予定されている(たぶん)著者の、日本政治に失望している人へのラブレターであると感じてもらえれば幸いです。(ビジネス社・1260円)
ビジネス社編集部 唐津隆