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【主張】日中首脳会談 禍根残した友好第一主義

2010.11.14 03:21
このニュースのトピックス主張

 横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、日中首脳会談が行われたことは前向きに受け止めたい。だが、菅直人首相が尖閣問題で「日本の確固たる立場を伝えた」のに対し、胡錦濤国家主席も「中国の立場」を表明したという。首相は尖閣についての日本の主張を繰り返したにすぎない。

 わずか20分余りの会談で、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の本質が日本の主権の侵害であるという肝心の点が強調できたのか。首脳の顔合わせという友好の演出が優先され、「戦略的互恵関係」の促進というお題目の表明にとどまった印象は否めない。

 北方領土問題で議論が平行線に終わった日露首脳会談と同様、マイナス点をつけざるを得ない。

 9月7日の漁船衝突事件から2カ月余、菅政権は「尖閣諸島は中国領土」と強弁する中国政府に振り回され、悉(ことごと)く対応を誤った。その根幹は中国漁船と乗組員を早々に送り返し、公務執行妨害容疑で逮捕した船長を処分保留で釈放したことだ。その措置を「検察の判断」としたのも問題だ。

 事件の様子を記録した海上保安庁撮影のビデオ映像もごく一部を少数の国会議員に限定公開したにすぎない。中国側への過剰な配慮としかいえない弱腰姿勢が、海上保安官によるビデオ映像の流出を招いたのは言うまでもない。

 この間に中国側が示した威圧的な対抗措置は枚挙にいとまがない。東シナ海ガス田共同開発に関する日中両政府の条約締結交渉会合の延期▽ガス田への掘削用とみられる機材の搬入▽ハイテク製品に不可欠なレアアース(希土類)の事実上の輸出制限−などである。こうした肝心の課題について明確な方向性も出さずに首脳会談が終わったのは残念だ。

 日本側は数日前から「30〜40分程度」の会談実現を要望していた。しかし中国側は回答せず、直前になって応諾したものの実質的な議論ができないような短時間の設定となった。日本側の駆け引きの稚拙さにも苦言を呈したい。

 一方、日露首脳会談では、菅首相はロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問について、「わが国の立場、日本国民の感情から受け入れられない」と抗議したという。尖閣諸島の問題でも、中国に対して、同様の毅然(きぜん)とした姿勢を貫くべきである。

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