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痴漢“無実”証明できぬまま自殺 息子信じる母、目撃者捜し続く (1/2ページ)
昨年12月、ある青年が痴漢の疑いで警察の事情聴取を受けた。東京・JR新宿駅で「女子大生の腹を触った」という疑いだ。青年は強く否定したが、聴取の翌朝、自殺。その後、痴漢容疑で書類送検され、被疑者死亡で不起訴となった。一人息子を失った母は訴える。「息子は無実なのに、このままでは永遠に『痴漢』のレッテルを張られたままです」−。(千葉倫之、福田涼太郎)
「(痴漢容疑は)私はまったく関係ありません。どれだけ憔悴(しょうすい)しても、状況が変わっても、関係ないものは関係ない」
昨年12月11日未明、警視庁新宿署。私大職員の原田信助さん=当時(25)=は捜査員に必死で訴え続けた。遺品の携帯ボイスレコーダーに聴取での原田さんの肉声が残っていた。
「事件」があったのは前日の10日午後11時過ぎ。同署によると、新宿駅構内の通路をホームへ歩いていた原田さんは、男性2人、女性1人の大学生グループとすれ違った。ともに酒を飲んだ後だった。
しばらくして女性が「おなかを触られた」などと訴えたため、男性2人が引き返し、原田さんを「犯人」とみて、1人がつかみかかった。警察官や駅員も駆けつける騒ぎとなった。
「いきなり殴られ、階段から引き落とされ馬乗りで床に頭を打ち付けられた。私は暴行の被害者です」
新宿署での聴取で、原田さんは一貫して主張。レコーダーには最初は激しい口調だったが、次第に憔悴し、つぶやきや泣き声をあげる原田さんの様子が収められていた。
聴取は未明まで続き、「暴行を受けた件で呼び出しがあれば」再び出頭すると確約書を書いた原田さんは午前6時前に署を出た。そして6時40分、新宿区の地下鉄東西線・早稲田駅のホームから電車へ身を投げ、死亡した。
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「息子は聴取の途中まで、痴漢の疑いをかけられたことにも気付いていないし、目撃者捜しや防犯カメラの調査も頼んでいる。自分で110番もしている。痴漢扱いされて絶望し、命を絶ってしまった」。原田さんの母、尚美さん(53)はこう訴える。