尖閣
尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、流出映像は、神戸海上保安部の主任航海士(43)の供述などから、海上保安大学校(広島県)など海保内の複数の施設のパソコンで閲覧できたことが明らかになった。 主任航海士は「巡視艇のパソコンから入手した」と供述しており、当初、映像を作成した石垣海上保安部(沖縄県)で厳重管理していたとした海上保安庁の説明との間には、数々の矛盾が生じている。海保内部からも、映像の「秘密性」を疑う声が出ている。
主任航海士は、警視庁が事情聴取を中断した12日夜まで、映像の入手から流出までの状況をかなり具体的に供述している。
まずは映像の入手ルート。捜査関係者によると、主任航海士の供述は「海上保安大学校のパソコンに接続し、巡視艇内の共用パソコンから公用USBメモリーで映像を持ち出した」というものだった。
問題の映像は「説明用」に石垣海保で編集されたものだったが、警視庁の調べで、研修活動や映像分析などを行う海上保安大学校など複数の施設のパソコンに保存されていたことがわかったという。
石垣海保から大学校への“拡散”ルートは未解明だが、海保内部では、海保内のネットワークにある「ファイル共有」のシステムが使われた可能性を指摘する声もある。
ネットワークに接続されたパソコンは約1万2000台。映像など大容量の電子データを送受信する場合、送り手が〈1〉ネットワークに接続したパソコンの共有ファイルに映像を保存〈2〉閲覧許可を与えるパソコンの管理番号を設定〈3〉ファイルを開くためのパスワードを設定――といった作業が必要だ。この場合、閲覧が許可されたパソコンを使い、ファイルが保存されたパソコンの管理番号とパスワードを入力すればデータの閲覧が可能になる。送り手が受け手に必要な暗号を連絡することで、ネットワークにつながる全国のパソコンで映像を見られるという。
海上保安庁はこれまで、石垣海保だけの内部調査で「映像は石垣海保で厳重管理し、閲覧できたのも捜査にかかわった一部の職員だけだった」と説明してきた。
しかし、10月18日に馬淵国土交通相が情報管理徹底の指示を出すまでは、石垣海保以外でも、記憶媒体やパソコンに映像が保存されていたことが判明。また、流出発覚後、海保はネットワーク上のデータ類について詳細な追跡調査をしていないこともわかった。
海保内部のこうした実態について、映像流出の発覚前に衝突事件の映像を見たという幹部の一人は「大臣の指示があるまで、あの映像に『秘密』という認識は薄かった」と証言している。(2010年11月13日03時02分 読売新聞)
*読売新聞 社会