2010年9月15日 20時6分 更新:9月15日 23時38分
【北京・米村耕一】9月上旬に開催予定だった北朝鮮の労働党代表者会は15日も開かれていない模様だ。対北朝鮮支援を行っている韓国の人道団体「良い友達」は同日、北朝鮮内部の消息筋からの情報として、代表者会がいったん延期になり、平壌入りしていた代表たちが解散したと伝えた。北朝鮮は代表者会の重要性を繰り返し強調しており、延期が事実でも、労働党創建65周年の記念日である10月10日までには開かれる可能性が高そうだ。
同団体のサイトによると、代表らは「豪雨被害のため多くの代表が出てこれず定足数を満たせなかった」との説明を受けたという。ただ、定足数がきちんと決まっていたかは不明。実際には、食料価格の高騰で国民の不満が高まっていることや金正日(キムジョンイル)総書記の健康不安が理由ではないかという見方が強い。
北朝鮮の国営メディアはこれまで、代表者会と後継者問題の関連を示唆する報道を繰り返してきた。代表者会を契機に金総書記の三男正銀(ジョンウン)氏への権力継承が本格化すると考えられており、代表者会で正銀氏が表舞台に初めて出てくるのではないかと注目されていた。
北朝鮮の国営メディアは6月26日、「9月上旬に党代表者会を招集する」と報道。8月下旬には各地方や機関で代表者会に参加する代表を選挙したという報道が続き、今月6日の労働新聞は「各地方や各機関の代表者たちが平壌入りしている」と伝えていた。労働新聞は15日にも「党代表者会を祖国の歴史に特筆すべき慶事として迎えるため総進撃、前へ!」と題した記事を掲載し、代表者会を重視する姿勢を改めて示している。
一方、朝鮮中央通信は同日、今月初めに北朝鮮を直撃した台風7号で「数十人が死亡し、8300世帯余りの住宅が破壊された」と報じた。被災地では、交通が遮断されて災害支援の医薬品と食料を届けられない地域があるという。北朝鮮では今夏、台風7号以外でも各地で豪雨被害が相次いでいる。
水害と関連して伝えられているのが、急激な食料価格の高騰だ。外交関係者によると、北朝鮮の幅広い地域で5月に比べ8、9月にはコメの価格が2~3倍にも値上がりした。後継者が登場したとしても国民は祝賀ムードに浸れる状況にはないといえる。
ただ、豪雨被害や食料価格の問題は9月初旬までには明らかになっていた。代表が平壌に集まり始めたのはそれ以降と考えられることから、むしろ、金総書記の健康状態が長時間の会議に耐えられないのではないかと見る専門家もいる。