2010.11.13 Saturday
ヨーロッパ各国の失業保険について
近年世界中で猛威を振るっている経済危機の影響などから、各国政府は何とかして現在の状況を打開しようと必死の対応を続けているのですが、昨日はロンドンで英国政府の打ち出した新しい政策に対する大規模なデモが行われていました。

何故にこんな大規模なデモがロンドンで行われたのか?
実はその元凶はキャメロン政権が最近打ち出した新しい政策が原因で、イギリスの大学の授業料を現行の3倍に引き上げるという、ちょっと過激な内容だったんですね。ヨーロッパの公立大学の授業料については、前のエントリで書いたばかりだったのですが、幾らイギリスの授業料が安いとは言っても、いきなり3倍はちょっと辛いかな(地中海ブログ: ヨーロッパの公立大学の授業料について)。その事に激怒したのが、普段は大変おとなしい(おとなしく見える?)イギリスの学生達。

僕はこのデモの事を昨日の夜のニュースで知ったんだけど、その映像を見るや否や、「かなり驚いた」と言うのが率直な意見でした。と言うのも、商店街のガラスをバンバン壊したり、警官と取っ組み合いしたりと、今までのイギリス学生のイメージからは、かなりかけ離れたショッキングな映像が飛び込んで来たからです。学生デモの過激さであれば、フランスやギリシャ、もしくはスペインと言った南欧が先ずは頭に浮かぶと思うのですが、「あー、イギリスもとうとう野蛮組の仲間入りか」と多くの人が感じた事だろうと思います。
そんな中、今日の新聞(El Pais, 12 de Noviembre 2010)には、現在キャメロン政権が着々と準備しつつある「経済危機対策の過激な政策案パート2」とも言うべき、イギリスの失業保険改善計画案の概要と、それに関連するヨーロッパ各国の失業保険情報が載っていました。
「若者よ、新聞は読むな、金持ちと結婚しろ!」
とは、とあるシンポジウムでイタリアのベルルスコーニ首相が言い放った言葉なのですが(苦笑)、「金持ちと結婚しろ」はともかくとして、「欧州の新聞はある程度疑ってかかった方が良いのでは?」と言うのは、毎日スペインの主要2紙(El Pais, La Vanguardia)を読んでいる僕の経験から来る意見でもあり、かなり納得する所でもあります。まあ、新聞を発行していたベルルスコーニ自身が「新聞は信じるな!」って言うんだから、説得力はありますよね(笑)。
と言う前置きをした上で、今日の新聞に載ってたイギリス国内の失業状況を書いていきたいと思うのですが、どうやらイギリスでは、失業者に対する手当が相当厚いらしく、その状況に甘んじて、仕事があっても仕事に就く事をせず、失業保険で暮らしている人がかなりいるらしいんですね。つまり働いて得られる給料よりも、失業中に失業保険から下りる金額の方が大きいが為に、それを受け取って暮らしていると言う人がかなり居ると言う事らしいのです。
この典型的な例が、失業保険が毎月1000ユーロくらい下りている所に、雇用促進事務所みたいな所から毎月800ユーロくらい稼げる仕事のオファーがあった場合、「その仕事を断る」と言う人が多いらしいのです。そして年々そのような人達が増えているが為に、今では失業保険給付額が膨らみすぎて政府の財政を根本から圧迫しているのだとか。そんなこんなで、キャメロン政権は何とか手を打ちたいともがいているみたいなのですが、そんな彼らが最近打ち出した政策がコチラの4点でした:
1.失業中の人に雇用促進事務所が仕事のオファーをし、当事者がそのオファーを断った場合、翌月から3ヶ月の間は失業保険受給停止。
2.更に2回目のオファーも断った場合、以後の6ヶ月間は失業保険受給停止。
3.3回目は3年間の失業保険受給停止。
4.失業保険給付額が1000ユーロ下りている人の所に、800ユーロの仕事のオファーがあり、当事者がその仕事を引き受けた場合、その差額分の200ユーロは政府が支払う事にする。
こんな感じでイギリス政府は何とかして、失業保険受給率を減らそうと必死で戦略を張り巡らしているそうなんだけど、それにしても、イギリス人がこんなに怠慢だとは全く知りませんでした。てっきり、働き屋さんだとばかり思っていたのですが‥‥。更にこの話題の関連情報としてヨーロッパ各国の失業保険システム情報が載っていたのですが、まあ、何時もの事ながら、国によってシステムが全く違うのは、結構興味深い所です。
ドイツの場合
ドイツの失業率は現在6.7%で280万人が失業中だそうです。ドイツのシステムでは、最低でも2年間失業保険を支払っている事が条件で、その場合、失業前の6ヶ月間に毎月受け取っていた給料平均の60%を月々受け取る事が出来るのだとか。もしも子供が居た場合には、この数字が67%まで上がるそうです。期間は失業保険を払っていた期間にもよるのですが、最長で1年だそうです。55歳以上は最長18ヶ月まで延長出来るそうです。
フランスの場合
フランスの現在の失業率は10%で、国内で290万人が失業中だそうです。フランスの場合は、失業前の28ヶ月の内(50歳以上の場合は36ヶ月間)、4ヶ月間以上失業保険を払っている事が受給条件で、受給期間は最長で24ヶ月(50歳以上の場合は36ヶ月間)だと言う事です。受給金額は失業前に受け取っていた給料の57%を受け取る事が出来、最低でも日割りにして一日27ユーロを下回る事は無いそうです。
イタリアの場合
イタリアの現在の失業率は8.3%で、200万人が失業中だと言う事です。受給条件は失業前の2年間で最低でも12ヶ月間失業保険を払い続けている事。その場合に限り、50歳以下の場合は最高で8ヶ月、50歳以上の場合は12ヶ月間受け取る事が出来るそうです。受給額は最初の6ヶ月間は失業前に受け取っていた給料平均の60%で、続く2ヶ月間は50%、その後は40%となるそうです。
スペインの場合
そして我らがスペインなのですが、現在のスペインの失業率は19.8%。この数字は他のヨーロッパ諸国に比べて断トツに高い失業率である事が分かるかと思います(地中海ブログ:スペインのニートはニニ(Ni Ni)と言うらしい:世界のニート事情 )。そしてスペイン国内では460万人が失業中なんだとか。スペインで失業保険を受け取る為には、失業前の6年間に最低でも360日間失業保険を払わなければいけません。受給期間は保険を払っていた期間にもよるのですが、最低でも6ヶ月から、最高で24ヶ月受け取る事が出来るのだとか。受給金額は、最初の6ヶ月間は失業前の180日間に受け取っていた給料平均の70%で、その後7ヶ月目から、この数字は60%になるんだそうです。
失業保険制度と言うのは、教育や医療と並び、その国や地域を特徴づけるシステムに他なりません。逆に言えば、それらのシステムを考察する事によって、それぞれの地域固有の特徴や特色が浮かび上がってくると思うんですね。故に当ブログではスペインの医療制度や教育システムと言った話題を頻繁に取り挙げている訳なのですが、今回取り上げた失業保険制度もこれらと並び、カタルーニャもしくはスペインと言う国を考察するのに大変有益なシステムだと思われます(地中海ブログ:ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて、地中海ブログ:ヨーロッパの医療システム事情:日本の導入している医療システムって実は少数派なのかな?)。今後もこの話題、要注目です!
何故にこんな大規模なデモがロンドンで行われたのか?
実はその元凶はキャメロン政権が最近打ち出した新しい政策が原因で、イギリスの大学の授業料を現行の3倍に引き上げるという、ちょっと過激な内容だったんですね。ヨーロッパの公立大学の授業料については、前のエントリで書いたばかりだったのですが、幾らイギリスの授業料が安いとは言っても、いきなり3倍はちょっと辛いかな(地中海ブログ: ヨーロッパの公立大学の授業料について)。その事に激怒したのが、普段は大変おとなしい(おとなしく見える?)イギリスの学生達。
僕はこのデモの事を昨日の夜のニュースで知ったんだけど、その映像を見るや否や、「かなり驚いた」と言うのが率直な意見でした。と言うのも、商店街のガラスをバンバン壊したり、警官と取っ組み合いしたりと、今までのイギリス学生のイメージからは、かなりかけ離れたショッキングな映像が飛び込んで来たからです。学生デモの過激さであれば、フランスやギリシャ、もしくはスペインと言った南欧が先ずは頭に浮かぶと思うのですが、「あー、イギリスもとうとう野蛮組の仲間入りか」と多くの人が感じた事だろうと思います。
そんな中、今日の新聞(El Pais, 12 de Noviembre 2010)には、現在キャメロン政権が着々と準備しつつある「経済危機対策の過激な政策案パート2」とも言うべき、イギリスの失業保険改善計画案の概要と、それに関連するヨーロッパ各国の失業保険情報が載っていました。
「若者よ、新聞は読むな、金持ちと結婚しろ!」
とは、とあるシンポジウムでイタリアのベルルスコーニ首相が言い放った言葉なのですが(苦笑)、「金持ちと結婚しろ」はともかくとして、「欧州の新聞はある程度疑ってかかった方が良いのでは?」と言うのは、毎日スペインの主要2紙(El Pais, La Vanguardia)を読んでいる僕の経験から来る意見でもあり、かなり納得する所でもあります。まあ、新聞を発行していたベルルスコーニ自身が「新聞は信じるな!」って言うんだから、説得力はありますよね(笑)。
と言う前置きをした上で、今日の新聞に載ってたイギリス国内の失業状況を書いていきたいと思うのですが、どうやらイギリスでは、失業者に対する手当が相当厚いらしく、その状況に甘んじて、仕事があっても仕事に就く事をせず、失業保険で暮らしている人がかなりいるらしいんですね。つまり働いて得られる給料よりも、失業中に失業保険から下りる金額の方が大きいが為に、それを受け取って暮らしていると言う人がかなり居ると言う事らしいのです。
この典型的な例が、失業保険が毎月1000ユーロくらい下りている所に、雇用促進事務所みたいな所から毎月800ユーロくらい稼げる仕事のオファーがあった場合、「その仕事を断る」と言う人が多いらしいのです。そして年々そのような人達が増えているが為に、今では失業保険給付額が膨らみすぎて政府の財政を根本から圧迫しているのだとか。そんなこんなで、キャメロン政権は何とか手を打ちたいともがいているみたいなのですが、そんな彼らが最近打ち出した政策がコチラの4点でした:
1.失業中の人に雇用促進事務所が仕事のオファーをし、当事者がそのオファーを断った場合、翌月から3ヶ月の間は失業保険受給停止。
2.更に2回目のオファーも断った場合、以後の6ヶ月間は失業保険受給停止。
3.3回目は3年間の失業保険受給停止。
4.失業保険給付額が1000ユーロ下りている人の所に、800ユーロの仕事のオファーがあり、当事者がその仕事を引き受けた場合、その差額分の200ユーロは政府が支払う事にする。
こんな感じでイギリス政府は何とかして、失業保険受給率を減らそうと必死で戦略を張り巡らしているそうなんだけど、それにしても、イギリス人がこんなに怠慢だとは全く知りませんでした。てっきり、働き屋さんだとばかり思っていたのですが‥‥。更にこの話題の関連情報としてヨーロッパ各国の失業保険システム情報が載っていたのですが、まあ、何時もの事ながら、国によってシステムが全く違うのは、結構興味深い所です。
ドイツの場合
ドイツの失業率は現在6.7%で280万人が失業中だそうです。ドイツのシステムでは、最低でも2年間失業保険を支払っている事が条件で、その場合、失業前の6ヶ月間に毎月受け取っていた給料平均の60%を月々受け取る事が出来るのだとか。もしも子供が居た場合には、この数字が67%まで上がるそうです。期間は失業保険を払っていた期間にもよるのですが、最長で1年だそうです。55歳以上は最長18ヶ月まで延長出来るそうです。
フランスの場合
フランスの現在の失業率は10%で、国内で290万人が失業中だそうです。フランスの場合は、失業前の28ヶ月の内(50歳以上の場合は36ヶ月間)、4ヶ月間以上失業保険を払っている事が受給条件で、受給期間は最長で24ヶ月(50歳以上の場合は36ヶ月間)だと言う事です。受給金額は失業前に受け取っていた給料の57%を受け取る事が出来、最低でも日割りにして一日27ユーロを下回る事は無いそうです。
イタリアの場合
イタリアの現在の失業率は8.3%で、200万人が失業中だと言う事です。受給条件は失業前の2年間で最低でも12ヶ月間失業保険を払い続けている事。その場合に限り、50歳以下の場合は最高で8ヶ月、50歳以上の場合は12ヶ月間受け取る事が出来るそうです。受給額は最初の6ヶ月間は失業前に受け取っていた給料平均の60%で、続く2ヶ月間は50%、その後は40%となるそうです。
スペインの場合
そして我らがスペインなのですが、現在のスペインの失業率は19.8%。この数字は他のヨーロッパ諸国に比べて断トツに高い失業率である事が分かるかと思います(地中海ブログ:スペインのニートはニニ(Ni Ni)と言うらしい:世界のニート事情 )。そしてスペイン国内では460万人が失業中なんだとか。スペインで失業保険を受け取る為には、失業前の6年間に最低でも360日間失業保険を払わなければいけません。受給期間は保険を払っていた期間にもよるのですが、最低でも6ヶ月から、最高で24ヶ月受け取る事が出来るのだとか。受給金額は、最初の6ヶ月間は失業前の180日間に受け取っていた給料平均の70%で、その後7ヶ月目から、この数字は60%になるんだそうです。
失業保険制度と言うのは、教育や医療と並び、その国や地域を特徴づけるシステムに他なりません。逆に言えば、それらのシステムを考察する事によって、それぞれの地域固有の特徴や特色が浮かび上がってくると思うんですね。故に当ブログではスペインの医療制度や教育システムと言った話題を頻繁に取り挙げている訳なのですが、今回取り上げた失業保険制度もこれらと並び、カタルーニャもしくはスペインと言う国を考察するのに大変有益なシステムだと思われます(地中海ブログ:ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて、地中海ブログ:ヨーロッパの医療システム事情:日本の導入している医療システムって実は少数派なのかな?)。今後もこの話題、要注目です!